The Film Scores: Salonen / Lapo

バーナード・ハーマン映画音楽作品集
サロネン＆ロサンジェルス・フィル
ホルン１２本が咆哮するド迫力サウンド！

２０世紀の映画界で最も重要な映画音楽作曲家の一人であったバーナード・ハーマンの傑作群を、エサ=ペッカ・サロネン＆ロサンジェルス・フィルが演奏したディスクがお得なGREAT PERFORMANCESシリーズから登場。

【バーナード・ハーマン】
1911年ニューヨーク生まれ。ジュリアード音楽院に学び、コープランドらのグループに参加し、また、指揮者として現代音楽を盛んに紹介するなど精力的な活動を展開、一方で、ＣＢＳラジオではオーソン・ウェルズがプロデュースする『マーキュリー劇場』の音楽を数多く作曲して話題になります。中でも、1938年ハロウィン前夜に放送された『火星人襲来！』の回は、全米をパニックに陥れたことでも知られています。オーソン・ウェルズとの関係はその後も良好で、やがて1941年には、名作『市民ケーン』により映画音楽作曲家としてのデビューを果たすこととなります。
　その後、ヒッチコックと出会い、1955年の『ハリーの災難』から1964年の『マーニー』までのヒッチコック全作品を担当しましたが、1966年の『引き裂かれたカーテン』の制作中に監督と激しく対立し、惜しくもコンビ解消となってしまいます。対立の原因は、ユニヴァーサル社の圧力に屈したヒッチコックが、この作品に“売れるポップス”を求めてきたことと、殺人シーンの音楽の有無というもので、厳しく頑固なハーマンが妥協するはずもなく、ヒッチコックはついに彼を解雇、長年の名コンビはあえなく破局を迎えることとなってしまいます。
　その後、ハーマンはハリウッドを離れ、拠点をロンドンに移しますが、皮肉にもトリュフォー、デ・パルマ、スコセッシといったヒッチコックを敬愛する監督たちから作曲依頼が殺到。数々の名作を書き上げ、1975年の『タクシードライバー』を最後にこの世を去りました。

【代表作をサロネンが熱演】
このアルバムでは、ヒッチコック監督作品から『知りすぎていた男』『サイコ』『マーニー』『北北西に進路を取れ』『めまい』という代表的な５作品のほか、トリュフォー監督作品の『華氏451』（トリュフォーが嫌うハープをあえて多用している作品。トリュフォーはハープをめぐって盟友ドルリューと対立したこともあったとか）、スコセッシ監督作品でハーマンの遺作となった『タクシードライバー』を収録しています。
　注目は、降板のため未使用となった『引き裂かれたカーテン』でしょう。なんと12本（１６本説もあり）のホルンを使用するという野心作で、その豪放な音楽は映画音楽の枠を超えており、ハーマンの作品の中でも屈指の傑作といえるのではないでしょうか。
　もしかしたらあまりの強烈さにヒッチコックも却下してしまったのでは…などと邪推さえしてしまいます。サロネン指揮するロサンジェルス・フィルの演奏も素晴らしく、ゴージャスなサウンドは極めて痛快。これは他の曲にも言えることで、特に『北北西に進路を取れ』『マーニー』の疾走感、『めまい』の幻惑的な色彩感など、いずれも見事です。（ＨＭＶ）

【収録情報】
バーナード・ハーマン：
・ヒッチコック監督作 『知りすぎていた男』：プレリュード
・ヒッチコック監督作 『サイコ』：弦楽のための組曲（全11曲）
・ヒッチコック監督作 『マーニー』：組曲（全3曲）
・ヒッチコック監督作 『北北西に進路を取れ』：組曲（全3曲）
・ヒッチコック監督作 『めまい』：組曲（全3曲）
・ヒッチコック監督作 『引き裂かれたカーテン』（全3曲）
・トリュフォー監督作 『華氏451』：弦楽、ハープ、パーカッションのための組曲（全11曲）
・スコセッシ監督作 『タクシー・ドライバー』：オーケストラのためのナイト・ピース（全5曲）

　ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
　エサ＝ペッカ・サロネン（指揮）