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九月と七月の姉妹

デイジー・ジョンソン

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784488011260
ISBN 10 : 4488011268
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2023
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:
市田泉 ,  

Content Description

わたしは姉のセプテンバーの誕生から十か月後に生まれた。でも、互いの誕生日を混ぜ合わせて同じ日にしている。セプテンバーがそう決めたから。セプテンバーはゲームをする。セプテンバーが指示する側、わたしが操り人形。彼女の言うことをなんでも聞かなくてはいけない。指示通りにできなかった場合、わたしは命を一つなくしてしまう。そうやって遊ぶときはたいてい、わたしには命が五つあって、全部なくしたら何かが起こることになっていた。内気で意志の弱いジュライは、姉のセプテンバーの支配下にあるが、二人の絆は揺るぎないものだった。春先に学校で起きたある事件をきっかけに、母とともに町を出て亡父の生家へと引っ越したが、それを機にジュライの中には奇妙な不安と違和感が芽生え…

【著者紹介】
デイジー・ジョンソン : 1990年イギリス・デヴォン州生まれ。2016年、短編集Fenでデビュー。長編第1作のEverything Underで史上最年少のマン・ブッカー賞最終候補となる。現在はオックスフォード在住

市田泉 : 1966年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • buchipanda3

    著者の短篇を前に読んだことがあるが、その穏やかな不穏さを醸し出す語りが好み。リズムがあり、余計なものを削ぎ落した文章はさらりと読ませながら何かが纏わり付くような奇妙な味わいがある。本作でもそんな語りに絡めとられていた。物語には九月と七月生まれの姉妹が登場する。内気な妹のジュライにとって十か月だけお姉さんのセプテンバーは掛け替えのない存在。でもその関係は良くも悪くも自己の揺らぎをもたらす。その意味が語りによって緊張と憂いを高め詰め寄ってくる。冒頭の詩文は素の叫び。ただ彼女は姉に特別な祈りを込めていたと思う。

  • 藤月はな(灯れ松明の火)

    危険な小説だ。支配してくる家族を恨み、呪い、その血の繋がりを疎むも肉体・心・記憶に残る痕跡を見出し、切り離せない絶望と諦観を厭と言う程、思い知らされた人を炙り出す劇薬みたいな小説だからだ。ジュライとセプテンバーはいつも一緒。セプテンバーはジュライを支配しているようにも見える。だが、無垢な彼女を守っているようにも見える。ごく普通で新たな道を歩もうとする現代から突如として母も亡く、白髪交じりとなったジュライの姿が語られるラストに身震い。セプテンバーはジュライが離れぬように選び、永遠にに分かちがたい存在になった

  • NAO

    10ヶ月違いの姉妹は、まるで双子のようにピタリと寄り添い合っている。それは運命共同体のようだが、二人の関係は対等ではなく、姉が妹を完全なる支配下にある。家族の中のあまりにも強すぎる者とその支配下に置かれてしまった者の歪な関係。支配下に置かれた者は、自我すら捨てなくてはならないのか。その強すぎる者がいなくなったあとでさえ、その支配を解かれることはないのか。最初から最後までゾワゾワする話だったが、一家がオックスフォードから移り住んだ〈セトルハウス〉がなんともいえない不気味さで、ゾワゾワ感を増幅させる。

  • ヘラジカ

    全貌が明らかになる前から漂う不穏な空気。明確に”ジャンルもの”へと振り切っていないのに、この緊迫感はただ事ではない。霧が晴れてみると小説の構造自体は特別珍しいものではないことが分かるのだが、あの幕引きとそれに至る心理描写は正に圧倒的である。どこかで見たことのあるゴシック・サスペンス。それでも未だかつて出会ったことがない種類の小説だとも感じる。驚くべき作品だ。愛情という呪い、肉親という軛を、研ぎ澄まされた表現によって、息をのむほどに禍々しくも美しい物語に仕立て上げている。

  • 愛玉子

    九月と七月、十か月違いで産まれた姉妹。それだけで不穏なものを感じる。身体が回復する前の妊娠は、多分に暴力の気配がするから。自己主張が強く残酷な姉に支配される妹から見た二人の関係は暴力的なのにどこか甘美で、嫌悪感を覚えつつも目が離せない。あまりに濃密な二人の世界を外から見つめるしかない母親の語りが時折差し挟まれ、余計に姉妹の関係の異様さが際立つ。それでも二人でいたかった、誰にどう思われようとも。「彼女がいなくなったら、わたしは一人の人間ではない」歪な呪縛に呑み込まれていく様は酷く美しく、絶望的に哀しかった。

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