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ISBN 10 : 4560082766
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タイ・バーツの暴落から始まったアジア通貨危機(1997-98)や過剰な資金が米住宅市場になだれ込んだリーマン・ショック(2008)、そしてギリシャの債務不履行問題に端を発した欧州財政危機に象徴的に現れているように、世界経済はここ20年、危機が常態化している。
一方、この「危機の二十年」は金融グローバリゼーションが喧伝された時代でもある。
1980年代以降、米国主導で進んだ国際的な金融市場の自由化と規制緩和による国際資本取引の活発化は、東アジアの新興国に急激な経済成長をもたらすとともに、輸出産業を中心に日本にも未曾有の好景気をもたらした。
ただ、慢性化する危機は、グローバリゼーションをめぐる議論を一変させている。NBC/WSJの合同世論調査によると、米国でグローバリズムを支持する人はリーマン・ショック前の2008年3月時点ですら25%にとどまり、経済論壇でも自由貿易の強力な擁護者だった論客の歯切れは悪い。
本書は、ノーベル賞受賞者を多数輩出してきた世界的研究機関、プリンストン高等研究所の教授による異色のグローバリズム論で、ブレトンウッズ体制に始まる戦後経済史を下敷きに、現代の危機とその処方箋を極めて穏当な形で提示したものだ。とりわけ、近年、日本の経済論壇でも広く受け入れられた「政治的トリレンマ(fundamental political trilemma)」を用いた分析はユニークである。
ロドリック教授によると、現今の世界情勢は、グローバリゼーション(economic globalization)と国家主権(national determination)、そして民主主義(democracy)を同時に追求することを許さず、どれか一つを犠牲にするトリレンマを強いているという。教授はこうした基本認識に立ちながら、国家主権と民主主義を擁護するとともに、無規制な金融グローバリズムに網を掛けることを提言する。
こうした処方箋は、バブルとクラッシュを繰り返す現状の資本主義メカニズムを的確にあぶり出すだけでなく、グローバリゼーションと民主主義が両立できると素朴に考える日本の世論に冷水を浴びせかけるのは間違いない。また、国論を二分する事態になったTPP問題や不透明な欧州情勢など、世界経済をめぐる問題は日本人にとってこれまで以上に切実な問題になっている。
目次
序章 グローバリゼーションの物語を練り直す
第一章 市場と国家について
第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と衰退
第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか?
第四章 ブレトンウッズ体制、GATT、そしてWTO
第五章 金融のグローバリゼーションという愚行
第六章 金融の森のハリネズミと狐
第七章 豊かな世界の貧しい国々
第八章 熱帯地域の貿易原理主義
第九章 世界経済の政治的トリレンマ
第十章 グローバル・ガバナンスは実現できるのか? 望ましいのか?
第十一章 資本主義3.0をデザインする
第十二章 健全なグローバリゼーション
終章 大人たちへのお休み前のおとぎ話
著者
ダニ・ロドリック (Dani Rodrik)
1957年、トルコ・イスタンブールに生まれる。米ハーバード大学を卒業後、プリンストン大学でMPA、Ph.D.をそれぞれ取得。ハーバード大学行政大学院教授などを経て、現在、プリンストン高等研究所(IAS School of Social Science)教授。専門は国際経済学、経済成長論、政治経済学。本書は12カ国語に翻訳され、世界中で話題に。本書のほか、1997年に刊行されたHas Globalization Gone Too Far? (IIE) は、米ビジネス・ウィーク誌で「1990年代における最も重要な経済書」と称賛される。One Economics, Many Recipes: Globalization, Institutions, and Economic Growth (Princeton 2007), The New Global Economy and Developing Countries: Making Openness Work (Overseas Development Council, Washington DC, 1999) など。レオンチョフ記念賞やハーシュマン賞を受賞。
訳者
柴山桂太 (しばやま・けいた)
1974年生まれ。京都大学経済学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程退学。現在、滋賀大学経済学部准教授。専門は政治経済思想。著書に『静かなる大恐慌』(集英社新書)、『グローバル恐慌の真相』(集英社新書、中野剛志と共著)ほか。訳書にシェーン『〈起業〉という幻想』(白水社、谷口功一・中野剛志と共訳)がある。
大川良文 (おおかわ・よしふみ)
1971年生まれ。神戸大学経済学部卒業。神戸大学大学院経済学研究科国際経済博士課程修了。現在、滋賀大学経済学部准教授。専門は国際経済学。論文に“Innovation, Imitation, and Intellectual Property Rights with International Capital Movement" Review of International Economics などがある。
【著者紹介】
ダニ・ロドリック : 1957年、トルコ・イスタンブールに生まれる。米ハーバード大学を卒業後、プリンストン大学でMPA、Ph.D.をそれぞれ取得。ハーバード大学ケネディ行政大学院教授などを経て、現在、プリンストン高等研究所(IAS School of Social Science)教授。専門は国際経済学、経済成長論、政治経済学
柴山桂太 : 1974年生まれ。京都大学経済学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程退学。現在、滋賀大学経済学部准教授。専門は政治経済思想
大川良文 : 1971年生まれ。神戸大学経済学部卒業。神戸大学大学院経済学研究科国際経済博士課程修了。現在、滋賀大学経済学部准教授。専門は国際経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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