Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

powered by

• ヴェネツィア

  読了日：2019/02/26

  難解な書物である。おそらくは訳者もそう考えているらしく、本文を遥かに凌駕する分量の注釈がついている。遠近法は数学的な問題かと思えば、さにあらず。「それが技術的ー数学的問題であることをやめたまさしくその時に、いっそう高い度合いで一つの芸術的問題となりはじめねばならなかった」との由である。近代の遠近法の祖をジョットとマザッチオに置くというのはわかるし、ファン・エイクの駆使するそれ（表紙の絵がそうだ）が圧倒的なまでの力を持って迫ることも。所詮は素人の私にはそこまでか。美学は実に奥が深いことを思い知った。

• 彩菜

  読了日：2022/06/27

  天使が跪くその絵の床のタイル模様…奥行き方向の線が悉くある一点へと消えている。線遠近法。「決して動かない」「ただ一つの眼」で見る事を前提に、幅・奥行・高さの値を一定の割合で変え、無限で連続した等質的空間を作り出す。ルネサンスに生じたこの図法が「二つの」「球体の」眼を持つ私達の視覚的現実に決して即してはいないと知っていただろうか。むしろ古典古代の視角遠近法の方が視覚の自然に忠実だった。けれどルネサンスは古代の権威を否定し、逆に古典古代は作図には大変便利なこの透視図法への小さな一歩を踏み出す事はなかった。→

• しゅん

  読了日：2018/03/10

  人間の視覚能力からみれば決して自然ではない遠近法が我々の世界の見方を規定している”象徴（シンボル）”となること。古代〜中世〜近代と絵画における遠近法の現われ方の変化に着目しながら、著者はその在り方を精緻に文に表す。私の美術知識の不足や専門用語への不理解のためにまだまだ全然読み込めてないが、「美意識」の根源を探るのに重要な書であることはぼんやり理解できた。本文より文量の長い詳細な原註が圧巻。

• koke

  読了日：2024/12/08

  読みづらいが面白い。古代の曲面遠近法は未熟な遠近法というより、近代と異なる空間の感じ方を示している。古代人にとっての世界は、個物が組み合わさったところに非物体（空虚）が付け加えられたようなもの。ルネサンス以降の平面遠近法が、等質的で単一のものとして空間をあらわすのとはまったく違う。さまざまな遠近法が存在し、それぞれに長所と短所を挙げられる、というか何を長所とし短所とするかのスタンス自体が問題化する。色々ヒントをもらった（近代日本の画家が軒並みセザンヌに影響を受けていることとか関係ありそう）。

• ∃.狂茶党

  読了日：2022/06/19

  少し読みづらい。 それというのも縦横に捜査した、膨大な参考文献が、何気ない一文に詰め込まれ、異様に情報量が多いからだ。 意図的に平板なものから、厳密さが、違和感に繋がりかねないもので、奥行きや距離をいかに描くか、高さをいかに伝えるか、そういったことが形式化される経緯と振り幅。

レビューをもっと見る

(外部サイト)に移動します