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長距離走者の孤独

アラン・シリトー

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784102068014
ISBN 10 : 4102068015
Format
Books
Publisher
Release Date
June/1992
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

優勝を目前にしながら走ることをやめ、感化院長らの期待にみごとに反抗を示した非行少年の孤独と怒りを描く表題作等8編を収録。

【著者紹介】
アラン・シリトー : 1928‐2010。イギリスの作家。労働者の息子としてノッティンガムに生れる。19歳で空軍の無線技手となるが、肺結核にかかり療養中に創作を開始。1958年、労働者階級の生活を内側から描いた『土曜の夜と日曜の朝』で一躍有名になる

丸谷才一 : 1925(大正14)年、山形県鶴岡市生れ。東京大学英文科卒。’68(昭和43)年『年の残り』で芥川賞を受賞。その後、小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動を展開。2012年没

河野一郎 : 1930(昭和5)年大阪生れ。東京外語大英米語学科卒。東京外語大・フェリス女学院大名誉教授。専門は、現代イギリス小説、児童文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

Customer Reviews

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永遠の名作、パンク精神の金字塔です。 面...

投稿日:2021/03/21 (日)

永遠の名作、パンク精神の金字塔です。 面従腹背ってやつですね。かっこよく、かつ効果的に反抗するためにはこうすればいいんだということを教えてくれる、最高にパンクな小説です。 主人公はイギリスの労働者階級出身の男の子で、感化院にぶち込まれた後、俊足を見込まれてクロスカントリーの選手にさせられます。 院長の顔を立てるために大会に出されるのですが…どうなる?というのが筋書きです。 もちろん筋書きとパンク精神も最高に素晴らしいのですが、私がこの小説を好きなもう一つの大きな理由は、長距離を走るときのあの息遣い、他者ではなく自分ととことん向き合っているあの感じが見事に描写されているからです。 「おれにもクロスカントリー長距離走者の孤独がどんなものかわかってきた。おれに関するかぎり、時にどう感じまた他人が何と言って聞かせようが、この孤独感こそ世の中で唯一の誠実さであり現実であり、けっして変わることがないという時間とともに。」 この一節はいつまでも色あせることのない名文です。 『長距離走者の孤独』以外にも良い作品が収められていますが、表題作だけでも読む価値あります。いつまでも読み継がれてほしい短編集です。

苺 さん | 不明 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • ケイ

    全体に漂うのは圧倒的な孤独。訳者との相性か、丸谷氏訳による二篇が好み。「アーネストおじさん」少女二人を前にして感じた孤独に、警察を向ける意外に誰も手を差し伸べず、やさぐれた生活戻るしかないやるせなさ。「漁船の絵」の郵便夫の、妻を拒絶しない行動に不器用な愛と押し寄せる寂しさ。河野氏訳の「フランキー…」では、作者が貧しい工業地帯の中から文士として身を立てたために感じる孤独が読み取れる。表題の「長距離走者の孤独」、主人公の自分を貫く様と彼が走る時の足の運びと息の切れが心地いい。

  • 紅はこべ

    もう何回読み返したかわからない一冊。「漁船の絵」では本を読む者と読まない者との間の深い断絶を感じた。キャスィーは父親の影響で本嫌いになったらしいが、父親はひょっとして読み書きができない人だったのかも。この時代の労働者階級では、読書好きなハリーの方こそ変人だったらしい。「試合」と『レベッカ』やクリスティの諸作を比べると、英国で好きなスポーツの階級差は歴然とわかる。「アーネストおじさん」の理不尽な結末はやり切れない。

  • ケイ

    走る気持ちを知りたくて、表題作のみ再読。でも、書かれているのはむしろ思索。無心に走っている間の哲学。

  • 藤月はな(灯れ松明の火)

    「アーネストおじさん」のアーネストおじさんに降りかかる無理解の悲惨に絶句。彼はただ、友達が欲しかっただけなのに…。孤独に耐えるには酒に呑まれるしかない哀しみに項垂れる。「レイナー先生」は生徒に辛く、当たる先生も負け犬でしかない事実が苦い。「漁船の絵」は一番、好きで、最後の「愛のために何もしなかった」と言う文章が突き刺さる。「土曜の午後」の本当に自殺してしまう人はサインなんかもう、出せない事や「試合」の忍従の限界を迎えた時、家族は容易く、壊れてしまう事は現実であり、それを描いているからこそ、遣る瀬無いのだ。

  • buchipanda3

    英国ノッティンガム出身作家による短篇集。粗雑ながら滑らかな語り口調が良いなと。その語りに染まった少年や男たちの見栄のない作りものと感じさせない姿が読み手の胸に叙情深く沁み込んでくる。褒められた姿ばかりじゃあない。でも短くも長い人生で社会の良識にさらされてばかりいたら、そんなことも起きるのだ。気構えのない反骨。誠実ってもんを考えたことはあるかい。誠実を見せろって言葉にするともうそこに誠実はないんだ。人生の痛みを知り、自分の心臓を鳴らしながらただ走るだけ。縛られずに。それが自身への誠実。それを抱えてただ走る。

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