このCDはテイチクが保有する音源から行進曲を集めた5枚組BOX。
音源は1960〜1970年代に録音された自衛隊音楽隊のものを中心にしたもの。
まず1枚目と2枚目はいわゆる日本の軍歌を集めた内容で、斎藤高順1等空佐指揮、航空自衛隊航空音楽隊の演奏。
1枚目の最後のみユニオン・ポップス・プラスバンドによる演奏だ。
録音当時はまだ先の対戦の記憶が新しかった時代であるためか、全て池多孝春と山岡正による新しい編曲譜だ。
演歌系の編曲家によるものとあってか、どことなく歌謡的な編曲になっており、原曲とかなり違うアレンジから原曲重視のアレンジまで様々だ。
演奏は1970年代自衛隊らしくキレが良く軽快な演奏で、『軍艦行進曲』『君が代行進曲』『抜刀隊』『月月火水木金金』はこれらの特徴が良く出た好演である。
続く3、4枚目はいわゆる一般的な行進曲。
演奏者は斎藤1佐と航空音楽隊に加えて、松本秀喜1等空佐指揮、航空自衛隊航空音楽隊、片山正見1等海佐指揮、海上自衛隊東京音楽隊、斎藤徳三郎1等陸佐指揮、陸上自衛隊中央音楽隊が登場する。
新しく登場する演奏家は1960年代の音源。
3枚目はスタンダードな行進曲を中心にしたもので、斎藤1佐と航空音楽隊のキレの良い演奏が聴きどころ。
途中、片山1佐の忠誠と松本1佐の珍しい作品が入るが、遅めのテンポで威風堂々とした忠誠や豪快な松本隊長&航空音楽隊の演奏もなかなか。
尚、最後のユニオン・ポップス・ブラスバンドのラデッキー行進曲は、陸上自衛隊中央音楽隊の初代隊長にして様々な行進曲を書いた須摩洋朔氏が指揮したもの。
好演とはいかないけど、正確なテンポの演奏は聴いておいて損はない。
4枚目はややマイナーな曲を中心にしたもので、松本隊長の豪快なツェペリン伯爵から始まる。
航空音楽隊の担当曲はこんにちではレパートリーから消えた珍しいアメリカの行進曲が揃っており貴重だ。
片山隊長と東京音楽隊の演奏はスーザの海を超える握手やアルフォードの後甲板にてといった海をテーマにした行進曲のほかに、ドイツの行進曲となんでもあるが、片山隊長の自作自演、世紀の祭典の名演奏が1番の聴きどころ。
斎藤隊長と中央音楽隊は出番は少ないが、得意のフランス行進曲2曲と、国家の象徴(珍しくリピートあり)そしてオリンピック・ファンファーレとオリンピック・マーチを演奏している。
この中でもオリンピック・ファンファーレとマーチは初演団体という事と、オリンピックの雰囲気を色濃く伝えてくれる演奏で、その高いテンションの演奏は当時の時代が伝わってくるような名演だ。
5枚目はスクリーン・マーチ、つまり映画の行進曲。
一曲目、錨を上げては斎藤隊長、航空音楽隊によるスタンダードな演奏だが、他は録音用団体によるもの。
1番多く演奏しているのはユニオン・アカデミック・ブラスバンドという団体。
1960年代頃の戦争映画を中心としたこの音源は恐らくこれが初CD化。
演奏は少人数のブラスバンドで正直イマイチだ。
指揮者の記載はないがオリジナルと思われるLPには編曲者の山内忠自身が振ったとある。
ユニオン・ポップス・オーケストラの演奏は名前通り、ポップス的要素の強いアレンジで、行進曲とは言い難い。
フィルム・スタジオ・オーケストラはビクターから音源提供されたらしく、同社から出ている音源と一緒。
人数はやはり少ないが意外と正統派の演奏で悪くはない。
解説書も付いているが、楽曲解説は主要曲しかなく、この辺りは残念なところ。
録音は新しくリマスターされただけあり、年代の割には良い音質だと思う(一部除く)