多声音楽の発展を促したスザートの業績、欧州最前線の古楽プレイヤーたちと
ラ・カピーリャ・フラメンカやウエルガス・アンサンブルといったベルギー随一の古楽アンサンブルで活躍してきた実力派古楽歌手たちが結集、それぞれの曲は決して長くないものの、どれも精巧な多声の歌の魅力が凝縮されたポリフォニー傑作集を録音しました。
テーマはティールマン・スザート、16世紀屈指の印刷業界人です。15世紀にヨーロッパで発展した活版印刷術が16世紀初頭に楽譜印刷に応用されるや、音楽は手書きで楽譜を書き写すしかなかった時代には考えられなかったほどの勢いで広範囲に届くようになりました。その大きな恩恵を受けたのが15世紀末〜16世紀に活躍したフランス=フランドル楽派のポリフォニー作曲家たち。そして彼らの名声拡大に大きく寄与したのが、ヴェネツィアやアントウェルペン、パリなど多くの人々が行き交う大都市で活動していた出版業界人たち。おそらく自身も音楽家だったスザートはフランドル地方随一の国際的な港湾都市アントウェルペンに拠点を構え、クレキヨンやクレメンス・ノン・パパ、ゴンベールといった同時代のフランドル人作曲家たち、あるいはジョスカン・デプレのような往年の大御所たちの傑作を数々の曲集に編んで印刷、その普及に大きく貢献します。
スザートによって選ばれた作品の確かさをじっくり、リュート独奏を交えながら堪能できるプログラムには「千々の悲しみ」や「森のニンフたちよ」など往年の名曲から、宗教曲・世俗曲を問わず仏・蘭・伊・ラテン語などさまざまな言語の佳品が並び、細部までよく整えられた演奏の確かさとあいまって、5世紀前の世界に軽々と私たちを誘ってくれる仕上がりになっています。(輸入元情報)
【収録情報】
1. スザート[c.1510/15-after 1570]:千々の悲しみが、わたしの哀れな心を
2. クレキヨン[c.1505-c.1557]:わたしは美ゆえに愛されて
3. クレキヨン:死がわたしを、残虐な妬みから
4. ゴンベール[c.1495-c.1560]:悲痛な別れがわたしを苦悩に追いやり
5. スザート:わが友
6. ジョスカン・デプレ[c.1450/55-1521]:森のニンフたちよ(オケゲム追悼歌)
7. ジョスカン・デプレ:千々の悲しみ
8. スザート: わたしの方でも
9. スザート:もし今、私が辛い苦痛を耐え忍んでいるならば
10. スザート:永遠なる父であらせられる方よ
11. スザート:サンクトゥス(『ミサ・イン・イッロ・テンポレ』より)
12. スザート:アニュス・デイ(『ミサ・イン・イッロ・テンポレ』より)
13. スザート:ホーブーケン(ホーボーケン)の踊り
14. ルコック(生歿年不詳、1514年頃活躍):羊飼いの男女が
15. クレメンス・ノン・パパ[c.1510/15-c.1555/56]:飲みすぎたせいなら
16. スザート:ロンド
17. クレメンス・ノン・パパ:美しき女神が一柱
18. ピエール・ド・マンシクール[c.1510-1564]:めでたし、明けの明星
19. スザート:おお、残酷なる運命よ
20. オルランドゥス・ラッスス[1532-1594]:それを見たわたしは悲しくて
21. スザート:あなたはどこにいるのか
22. スザート:人間には、何ひとつ確かなものなどなく
23. ラッスス:愛しき婦人よ、お願いです
24. スザート:ごきげんよう、薔薇の冠を戴いた方よ
器楽による演奏(5,9,13,16,21)
ユートピア・アンサンブル
ミヒャエラ・リーナー(メゾ・ソプラノ)
バルト・ユーフェイン(カウンターテナー)
アドリアーン・デ・コステル(テノール)
リーフェン・テルモント(バリトン)
ギヨーム・オルリ(バス)
ヤン・ファン・アウトレイフェ(リュート)
録音時期:2022年7月6-8日
録音場所:ベルギー、アントウェルペン、聖パオロ教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)