18世紀ドイツの建造理念を忠実に辿った再現楽器が響かせる、
バッハとその周辺のオルガン芸術の真髄
中世から近世までを通じてドイツ語による礼拝や商業交流がさかんだったバルト海沿岸で活躍、ラトヴィアやエストニアにドイツ式の銘器を残したオルガン建造家ハインリヒ・アンドレアス・コンティウス[1708-1795]は、若い頃にはハレを活躍拠点とし、大バッハ長男のヴィルヘルム・フリーデマン・バッハとも親しい間柄でした。後年ライプツィヒに向かい、長男以上にオルガンの構造に詳しい大バッハからも絶賛されます。ラトヴィアの古都リエパヤの聖三位一体教会にも1779年、コンティウスの新造楽器が設置されましたが、これは後の時代の理念に基づき改装が繰り返された末、21世紀に入ってオランダとベルギーの工房によりオリジナルに忠実な復元を達成。そのモデルを克明に再現した楽器がベルギーのルーフェン(ルーヴァン)聖ミヒール平和教会にあり、今回の録音はこの楽器を使い、バッハとコンティウスに縁があった作曲家たちの音世界を辿るプログラムとなっています。
バッハと同世代のヴァルターやテレマンによる作品から、バッハ作品と誤認されてきた秘曲群、大バッハの息子たちや最晩期の弟子ミューテルによる古典派前夜の音楽に至るまでを収録。世界的に高い評価を得てきたオランダの名手バルト・ヤーコプスが、豊かな演奏経験を活かした編曲も織り交ぜながら綴る世界が、コンティウス・モデルの楽器から繰り出される明瞭かつ古雅な響きで瑞々しく響きわたります。無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌやトリオ・ソナタの編曲もさることながら、ヴァルターによるオルガン独奏のための協奏曲のような充実作に出会える愉しみもまた格別の選曲。各曲紹介やオルガンの来歴についての解説(英・独・仏語)も充実しています。(輸入元情報)
【収録情報】
1. ゴットフリート・キルヒホフ[1685-1746]:ファンタジアとフゲッタ 変ロ長調(BWV.907)
2. J.S.バッハ:シャコンヌ〜無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ ニ短調 BWV.1004より(ト短調に移調)
3. 作曲者不詳(18世紀):コラールによる3つのトリオ(BWV.Anh.i.V.)〜テオドール・ハーン[1809-1864]所有の手稿譜より
コラール『おお神よ、信じる神よ』 BWV.94-8
『おお神よ、信じる神よ』によるトリオ
コラール『救世主に連なる私たちは今こそ歓喜する』 BWV.40-3
『救世主に連なる私たちは今こそ歓喜する』によるトリオ
コラール『神の成すことは全て善きこと』 BWV.99-6
『神の成すことは全て善きこと』によるトリオ
4. ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ[1710-1784]&J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ヘ短調(BWV.534)/ラルゴ〜チェンバロ協奏曲 BWV.1056より
前奏曲(BWV.534)
ラルゴ(BWV.1056より)
フーガ(BWV.534)
5. テレマン:アンダンテ〜フルート協奏曲ト長調 TWV.51:G2より
6. ヨハン・ゴットフリート・ヴァルター[1684-1748]:テレマン氏の教会向け協奏曲
7. J.S.バッハ:コラール『ただ愛する神の摂理に任せる者は』によるパルティータ BWV.690/691/691a/692
8. カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ[1714-1788]:ヴァイオリンまたはフルートとオブリガート鍵盤のためのトリオ・ソナタ ニ短調 H.542-5(BWV.1020)
9. ヨハン・ゴットフリート・ミューテル[1728-1788]:ファンタジア ヘ長調
バルト・ヤーコプス補筆によるオルガン版(1)
グスタフ・レオンハルトによるチェンバロ用編曲に基づくバルト・ヤーコプスによるオルガン用編曲(2)
バルト・ヤーコプスによるオルガン用編曲(4,5,8)
バルト・ヤーコプス(オルガン)
使用楽器:ハインリヒ・アンドレアス・コンティウス 1779年建造モデルによる再現楽器
録音時期:2022年6月23,24日
録音場所:ベルギー、ルーフェン、聖ミヒール平和教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)