1973年NYのクイーンズブリッジ生まれ。本名、Nasir Ben Olu Dara Jones。名前からもわかる通り、NasはミュージシャンのOlu Daraの息子である。Nasのラッパーとしてのキャリアは、Nasty Nasの名で参加したMain Sourceのポッセ・カット“Live At The BBQ”(91年)の激しいラップ合戦から始まり、以降MCサーチ“Back To The Grill”(92年)、ソロ・デビュー・シングル“HalfeTime”(93年、OST「Zebrahead」収録)を経て、94年のモンスター・アルバム「Illmatic」で本格的なキャリアが始まる。
その後、Lauryn Hillとの共演となる“If I Ruled The World”をフィーチャーした「It Was Written」(96年)、AZやFoxy Brownらで構成されたプロジェクト=The Firmの「The Firm」(97年)、“Nas Is Like”“Hate Me Now”のスマッシュ・ヒットを生んだ「I Am...」(99年)、表題曲や“You Owe Me”がクラブで支持された「Nastradums」(99年)をリリース。同じ年に2枚も発表したのは、本来2枚組でリリースする予定であったが、レーベル側の意向でシングル・アルバムとなったといういきさつがある。前者はストリート向け、後者はポップ・マーケット向けというように。その後もミリオン・セールスを記録した“Oochie Wally”の衝撃も記憶に新しいクイーンズブリッジのコンピレーション「QB Finest」(00年)への参加など精力的な活動を展開している。
2001年12月に発表された5thアルバム「Stillmatic」では、米ソース・マガジンで久々のマイク5本を獲得し、再びNas旋風が全米中で起きた。そのタイトルが示す通り自らの原点を確認するような内容であり、7年降りにLarge Professorと顔合わせとなった。Swizz Beatz制作でMary J. Bligeが参加した"Braveheart Party" やTears For Fears使いの"Rule"などヒップホップという括りにおさまりきらない作品となった。彼はラッパーというよりリリシストとして、そのスキルの高さをさらにネクストレベルなものにしてしまったようだ。