目の間に大きな空間が現れ、生々しく清楚な人の声が響き渡り、天国に行った気分を味わえる。ＴＡＣＥＴ録音の優秀さには感心。

録音が古くて、音の広がりが乏しいものもあるし、特にチェンバロの音などは、雅さがかなり失われた音色になっているが、ルネサンスバロック期の古楽演奏の歴史がつまったセットということで感慨深い。２枚目にはロスアンヘレスが独唱を務めており、驚きである。

今でこそピリオド演奏などと当たり前のように語られるけれど、所謂古楽器演奏を、特にバロック以前の古楽演奏を推し進めてきた、いわば黎明期の推進役の一人がデヴィッド・マンロウでした。若くして亡くなってしまったけれど、ドグマティックなものに堕さずに、音楽としての楽しさをきちんと追求した演奏は、今以て他の追随を許さないものだと思います。実際、このへんの音楽をきちんと演奏している録音というのも、それほど多くないですし。