全12曲の内の10曲は2分17秒から3分27秒の曲で、残りの2曲が4分半ほど、
という感じなので、全体的には、
激しいビートが効いて、勢いとスピード感がある、
全12曲38分のパンクロックアルバム。
基本情報とキーワードを手短に書くと、
先ず、テキサス州サンアントニオに女性3人組のインディーロックや
パンクロック系バンド
「Girl in a Coma」(ガール・インナ・コウマ)
があって、2007年頃からそこそこ注目を集め始める中、2014年に、
その3人組のヴォーカルとギター(と作曲も)担当の
Nina Diaz(ニーナ・ディアス)のソロプロジェクトが立ち上がり、
ニーナ・ディアスが暫くソロでの楽曲アルバム制作に専念する、
ってことで、その間、
バンドの残りの二人、ドラムス担当のPhanie Diaz(ファニー・ディアス)
とベイス担当のJenn Alva(ジェン・アルバ)が、
ニーナ・ディアスの代わりに、自分達よりもキャリア的に若い、
女性ヴォーカリスト(LETTY)と男性ギタリスト(AARON)とを迎え入れて、
女性3人男性1人で結成した
(男性は1人いるけど)チカーナ・パンク系バンド、
それが、この「Fea」(フェア)。
因みに、バンド名は、スペイン語の単語で
「feo」(フェオ/男)
「fea」(フェア/女)
→「ugly , bad , nasty」
<醜い、不快な、汚い、悪い、悪意ある、意地悪な>系の意味だけど、
見た目とか性別とか関係なく、
自分自身であること、自分らしく生きること、
性差別なく公平な扱いを受けること…みたいな、そういう観点での主張
を表現する楽曲を追及していたりするようなので、
「Fea」(フェア/不細工女、醜女)というバンド名は、
一見マイナスイメージな単語に、
ポジティブな意味合いを込めて、敢えてそういうバンド名にした、
ってことらしい。
で、そのバンド名がそのままアルバムタイトルとなったこの「Fea」
のプロデューサには、
米国の女性パンクバンドBabes in Toyland(ベイブズ・イン・トイランド)
のドラマーLori Barbero(ローリー・バルベロ)や、
女性パンクロックのレジェンド歌手Alice Bag(アリス・バッグ)等が
名を連ねていて、知ってる人には、
その辺からも、このアルバムに興味をそそられるって要因も大きいのかも。
因みに残り二人のプロデューサは、
アリス・バッグやローリー・バルベロよりも若い世代のミュージシャン…
パンクバンドAgainst Me!のリードヴォーカルでギタリストの
Laura Jane Grace(ローラ・ジェイン・グレイス)と、
アルゼンチン系スウェーデン人のインディー・フォークミュージシャン、
Jose Gabriel Gonzalez(ホセ・ガブリエル・ゴンサレス)
…その4人で計12曲をプロデュースしている、といういことらしい…。
自分が、このパンクバンドFeaの存在を知ったのは、
2015年の1月末から2月にかけての頃だったんだけど、その頃は、
漠然と、そんなバンドがあるんだな、と思った程度だったんだけど、
そこから1年半ほど経って、
このFeaも遂にアルバムが発売になったってことで、先月8月Alt.Latinoの
「’There Are No Rules’: Fea Talks Latina Punk」
という放送回に、ファニーとジェンがゲスト出演して、色々と、
このアルバムのことだけでなく、パンク音楽に関すること、または、
依然として女性に対してステレオタイプや差別または公平でない待遇、
というモノが存在する社会で、それに屈せず自分らしく生きること…
その生き様を貫くこと自体がパンクだ…
という話とか、どんな音楽を聴いて育ったか、とか影響を受けたか、
って部分の話とか…そういうのを聴いて、
色々と興味が湧いて、で、少し確認したら日本でも入手出来そう、
ってことで、これも何かの縁だな、
と注文して、届いて…ともかく、実際に、全12曲を聴いてみて、
個人的な第一印象としては、
やっぱり、Girl in a Comaの時よりも、
よりパンクロックに特化した楽曲アルバムなんだな、ってことと…
1曲目「Mujer Moderna」(ムヘル・モデルナ)は、
歌詞が1番2番とも英語の歌詞で始まるけど、
後半からサビの部分はスペイン語の歌詞、の曲。
2曲目「Feminazi」(フェミナツィ)は、
歌詞が基本的に英語、サビの部分に少しスペイン語が混ざる程度、の曲
…スペイン語っていうか、
「I am」をスペイン語とかドイツ語とかで言ってるだけかな…
4曲目「Tragedias」(トラヘディアス)は、
歌詞がスペイン語の曲。
6曲目「No Hablo Espanol」(ノ・アブロ・エスパニョール)は、
歌詞が基本的には英語、
曲タイトルにもなってるサビのフレーズだけがスペイン語、
みたいな感じかな…まぁでも、考えたら、
「ノ・アブロ・エスパニョール」=「私はスペイン語を話さない」
って歌なんだから、基本的にスペイン語で歌うわけないよね…
10曲目「Poor Little Rich Girl」は、
歌詞は基本的にスペイン語だけど、
そこに英語の歌詞も所々混ざってる、系の曲…
っていうか歌詞のパターンが少ないんで、
スペイン語歌詞と英語歌詞とが交互に半々、みたいな印象かも。
で、それ以外の曲は、歌詞が全部英語で…
スペイン語の歌詞がメインの楽曲は、実質2曲くらいで、
少しスペイン語の歌詞が混ざってるって曲を含めても5曲しかないんで、
聴く前に想像していたよりも、
スペイン語で歌っている曲はずっと少なかったな、というか、
よくよく聴くと、半分以上が英語の曲だったな、
と…その辺が、多少、意外だった気も最初はしたけれど、でも、
Girl in a Comaとしての楽曲や、
ニーナ・ディアスのソロ楽曲も英語歌詞の楽曲がほとんど、
って印象なので、そう考えれば、
この人達のバンドの楽曲としては、こんなものなのかな…
とも思ったり。
ある意味、テキサスとかその地域で、長年、
移民差別的な色んなアレがあったりで、
メキシコ系移民が米国社会で成功するには、
英語だけ喋ってスペイン語は喋らないほうがいい、ってことで、
子供にスペイン語を喋らせないようにしたり、
その結果、移民3世とかの世代は、あまりスペイン語を喋れなかったり…
みたいな、そういう社会的側面が、
このアルバムの収録曲中の、英語歌詞の楽曲と、
スペイン語歌詞の楽曲の配分比率にも、反映されてる、とも言えるのかも…。
ただ、最近は、
米国内でのラティーノ系住民の比率が増えてきたのを受けて、
スペイン語に対するネガティブなアレが薄まってきて、
スパングリッシュみたいな両言語が混ざったモノが普通に使われて、
許容されていたり…みたいな状況なんで、
今の10代とか20代とかの移民系の人達であれば、
もっと、英語とスペイン語とが半々とか…
でも、このバンドの、ファニーとかジェンは多分今30代後半とか、
それくらいの年齢で、
テキサスのサンアントニオ辺りで生まれ育った移民系の人達は、
まだ今みたいなそんな時代じゃなかったから、
みたいな…そんなことなのかな、とも思ったり…。
歌詞の言語とは別の観点で、
8曲目「Sister K」は、
中学時代通っていたカトリックスクールの
校長だった修道女、シスター・キャスリーンが嫌なヤツだった、
「地獄に落ちろ」と彼女のことを友達に愚痴る2分26秒のパンク曲、
早口で彼女への恨み辛みをぶちまけて、2分半弱で、
嵐のように駆け抜けて行く感があって、ソレが何かコミカルでもあり、
面白い曲だな、という印象。
11曲目「Veins」は、
曲冒頭や途中で3拍子のメロディを組み込んでる部分が、
いいインパクトになってて面白いな、と個人的には印象に残ったり。
曲の内容的には、自由で色々と進んだ国な米国と言えども、
女はこうでなきゃ、とか色んなステレオタイプとか偏見とか抑圧、
がある社会で、そんなものは糞食らえで自分自身であること、
を目指す女性の主張とか本音、
みたいな歌や、北米や南米に広く伝わるLa Llorona(ラ・ヨロナ)
の伝説を題材にした歌を、
パンクかつ娯楽性を追及した楽曲に仕上げた…みたいな12曲で、
夫々の曲に勢いと、自由なフリーダム感があって、
一気に駆け抜けるように全12曲38分が、
気付いたら、あぁもう、最後の曲か…みたいな……
そんな感じで、
個人的には、好印象でそこそこの満足感を味わえた楽曲群で、
価格的にもお買い得感のある価格で買えたんで、
買って聴いた甲斐はあったと思うんで、
今後も、折に触れて繰り返し繰り返し、楽しみながら聴き続けよう…
という、そんな感じです。