かつてはジェフ・ベック、ジミー・ペイジらとともに英国ロック3大ギタリストと呼ばれたり、また「ロック・ギターの神様」とさえ呼ばれ、現在ではロック界最高峰のスーパースターのひとりとなっているエリック・クラプトン。もはや説明不要なほどに優れたギタリストとして認知される彼だが、そのギター・プレイの特徴を一言で言い表すとなると、やはり「ブルース・コンプレックス」という言葉を使わなくてはならないだろう。ヤードバーズ、ジョン・メイオールのブルース・ブレイカーズ時代は言うまでもなく、60年代後半のロックを牽引する存在のひとつだったクリームでのプレイ、ブラインド・フェイスの全米ツアーで知り合ったデラニー&ボニーの南部ロックへの憧れに始まる後のソロ作から現在まで、直接的であれ、間接的であれクラプトンは一貫して大枠でブルースというスタイルを離れたことはない。1992年のアンプラグド(Unplugged) 大成功後に、全曲ブルースのカヴァー集 フロム・ザ・クレイドル(From The Cradle)を発表したことなどを象徴的な出来事として思い出してもらえば、近年の彼しか知らないという音楽ファンにも、このことはすんなりと想像してもらえるだろう。クラプトンにとってブルースとは、いわば「絶対的なもの」としてあり、「永遠の憧れ」であり、「信仰」であり、常に戻っていける柔らかな「安息の地」なのだ。このことは勿論、良い、悪いの問題ではないのは明白で、個人の信仰といった種類のものに音楽ファンがケチをつける筋合いはないのだが、いずれにしても幼少期のトラウマやドラッグに悩まされた時期もあったクラプトンにとってのブルースとは心の拠りどころとして常に心の中に存在する特殊なものであることは間違いない。そしてまたクラプトン独特のエモーショナルなギター・サウンド自体の良さもさることながら、こうした当たり前の人間臭さや弱さにも通じる部分が、彼の音楽のそこここに見え隠れするところがファンに支持されているということも多分にあるのではないかと思う。