Dusty In Menphis

９９年３月、５９歳でこの世を去ったダスティ・スプリングフィールド。ちょっと硬質ながら（そこがキュートなんだけど）ホワイト・ソウル風味の艶やかなヴォーカルを聴かせてくれた。彼女の代表作として知られる作品がこの『ダスティ・イン・メンフィス』です。タイトルにあるようにレコーディングはメンフィスのアメリカン・スタジオ（但しダスティの最終ヴォーカルはＮＹで、とクレジットにある）。当時アレサ・フランクリンなどを手掛けていた３人の名プロデューサー、ジェリー・ウェクスラー、トム・ダウド、アリフ・マーディンが制作。Ｒ＆Ｂ感覚とソフト・ロック・テイストが絶妙にマッチングしたサウンドがとても、イイのです。

１．ＪＵＳＴ　ＡＬＩＴＴＬＥ　ＬＯＶＩＮ’
バリー・マン＆シンシア・ウェイル作。ウイスキーのＣＭサントリー・リザーヴ系（？）のストリングスのイントロから、ダスティが情感たっぷりに歌い出すマイナー系メロへ。そしてサビで解放されるメロディ展開。とてもドラマティックな曲調です。ワルツのリズムが印象的。

２．ＳＯ　ＭＵＣＨ　ＬＯＶＥ
ジェリー・ゴフィン＆キャロル・キング作。キャロル・キング独特の愛らしい（ときにＲ＆Ｂ的）メロディがとても良い。途中メロディ展開が変わったりといった工夫もさすが。最後はコーラス隊が盛り上がりゴスペルっぽいフィーリングに。

３．ＳＯＮ　ＯＦ　ＰＲＥＡＣＨＥＲ　ＭＡＮ
ベース・ラインやホーンがかっこいいＲ＆Ｂソング。エレキ・ギターの歌の邪魔をしないツボを得たプレイもイイ。コーラス隊とホーンが徐々にヒート・アップしていき一気にエンディングへ雪崩れ込む。

４．Ｉ　ＤＯＮ’Ｔ　ＷＡＮＴ　ＴＯ　ＨＥＡＲ　ＩＴ　ＡＮＹＭＯＲＥ
ランディ・ニューマン作。ピアノ（とストリングス？）のピチカート（って言うんでしょうか？）風フレーズが印象的。全体にソフト・ロックっぽい質感がある曲。大人しい曲だが、モダンなコード感がある。

５．Ｉ　ＤＯＮ’Ｔ　ＦＯＲＧＥＴ　ＡＢＯＵＴ　ＭＥ
ゴフィン＝キング作品。サイケを通過したファズ・ギターがメチャかっこいい。Ｒ＆Ｂ的な６０’ｓ後期のロックという感じ。

６．
ＥＡＫＦＡＳＴ　ＩＮ　ＢＥＤ
エディ・ヒントン／ドニー・フリッツ作。バッファロー・スプリングフィールドの『フォー・ホワット』をちょっと思わせるギターのイントロに続いて、いかにもイナたい南部フィーリングをたたえた曲が始まる。そのゆったりとした湿気の中を泳いでるかのような気だるさと定番的なホーンの掛け合い。ストリングスやホーンの入り方にもセンスを感じる。

７．ＪＵＳＴ　ＯＮＥ　ＳＭＩＬＥ
ランディ・ニューマン作。この曲にもモダンなコード感を感じる。目立たないが後ろで鳴るアコースティック・ギターが洗練度を高める。サビうしろでキラメくストリングスとカナモノ系がソフト・ロック的センスを演出。

８．ＴＨＥ　ＷＩＮＤＭＩＬＬＳ　ＯＦ　ＹＯＵＲ　ＭＩＮＤ
ミッシェル・ルグラン作。映画「華麗なる賭け」で使われたヴァージョンが有名。映画音楽的ストリングスとボサノヴァ・タッチのリズム。甘く響くアコギ。後半、カスタネット、フルートが出て来てドラマチックに盛り上げる。

９．ＩＮ　ＴＨＥ　ＬＡＮＤ　ＯＦ　ＭＡＫＥ　ＢＥＬＩＥＶＥ
バート・バカラック＆ハル・デヴィッド作。シタール風のイントロとバカラック一流のセンスを感じさせる洗練されたコード感。その都会的なメロディや全体のムードは、のちのニック・デカロなどＡＯＲサウンドに直結するような曲調といえるでしょうか。

１０．ＮＯ　ＥＡＳＹ　ＷＡＹ　ＤＯＷＮ
ゴフィン＝キング作。キャロル・キング自身も録音しているナンバー。比較的キャロル・キング・ヴァージョンとも近いアレンジ。ときおりチョロっと顔をだすギターのフレーズが気になる（イイ感じ）。スローなＲ＆Ｂ感覚はキャロル版以上か？そちらの方がキメのところで派手にテンポ・チェンジするけど。

１１．Ｉ　ＣＡＮ’Ｔ　ＭＡＫＥ　ＩＴ　ＡＬＯＮＥ
これもゴフィン＝キング作品。ピアノ、ギター、ストリングスあたりを中心に比較的にシンプルに仕上げている。アウトロのところでダスティのリード・ヴォーカルと掛け合うコーラスがいい雰囲気。

＊米ライノからのこの新装版には、最初にＣＤ化された時に追加されたＭ１２のほか、合計で全２５曲ものヴォリュームになるほど、ボーナス・トラックがたくさん追加収録されています。トニー・ジョー・ホワイト作のＭ１３、シティもやってたゴフィン＝キングのＭ１４、ギャンブル＆ハフのＭ１５、デヴィッド・ゲイツのＭ１７、キャロル・キングの「君の友達」など見逃せない内容です。