『レゲエ』という音楽。1950年代後半頃、アメリカから流れてきたリズム＆ブルース が、ジャマイカのカリプソ音楽と融合して産まれた『スカ』を基盤に、より洗練させ て進化したのが『レゲエ』である。そののち、1960年代中盤以降から、レゲエにお喋 り（MC）を挟んだスタイルや、レゲエをよりシンコペートし、スローテンポでアプロ ーチした『ロックステディ』、音響効果を加えた『ダブ』、美しいメロディでポリテ ィカルな表現を含ませた『ダンスホール』など、レゲエという音楽は進化を続けてい る。『レゲエ』というジャンルには上記で挙げたスタイルを含むため、根源にあるレ ゲエという音楽を括るため『ルーツ・レゲエ』という表現が現在は広く使われている 。この『ルーツ・レゲエ』というジャンルにおいて誰よりも崇拝されているアーティ ストがこのBob Marleyボブ・マーリィーである。

Bob Marleyボブ・ マーリィーは、1945年2月6日、ジャマイカのセント・アンズ教区ナイン・マ イル生まれ、幼少の頃をキングストンの貧民地区にて過ごす、1962年にレスリー・コ ングが所有するヴェヴァリー・レーベルからデビュー・シングル”ジャッジ・ノット ”を、後にもシングルをリリースするがいずれもヒットする事は無かった。その後友 人であるBunny Wailer(バニー・ウェイラー)、Peter Tosh(ピ ーター・トッシュ)、ジュニア・ブレスウェイトという若者も参加し、グル ープ名をWailers(ウェイラーズ)とした。

当時ウェイラーズはスリムなパンツ・スーツといった当時の流行りであるアメリ カン・ヴォーカル・グループの様なコスチュームにて活躍していたのである。

1964年には"Simmer Down（シマー ・ダウン）、”Mr.Talkative（ミ スター・トーカティヴ）"、等がヒットする。1965年、ウェイラーズはジャマイ カのスタジオ・ワンより”The Wailling Wailers（ザ･ウェイリング・ウェイラーズ）"にてデビューする。この 作品ではやはり当時の流行りでもあったドゥーワップ・スタイルやポップス、スカ等 を披露していたが勿論メッセージは忘れてはいない...。そして、この作品に収録さ れている楽曲の中に収録されているスカ・ナンバーの”Lonesome Feeling"ではJackie Mittoo（ジャッキー・ミトゥー）のオルガンがフューチャーされている他、 Tom Jones(トム・ジョーンズ)のカヴァー”What's New Pussycat（何かいいことないか子猫ちゃん？）”も収録されていた。そして後々あら ゆるアーティスト達にカヴァーされ続ける名曲の”One Love（ワン・ラヴ）”のオリジナル・ヴァージョンが収録され ているのはこのアルバムである。

1973年にはウェイラーズの重要メンバーであるピーター・トッシュ、バニー・ウ ェイラーがバンドのツアーに不満を擁いて脱退してしまう。そんな災難？に見舞われ たボブであったがその後の1973年10月アイランドよりリリースされたアルバム”Burnin(バーニン）"に収録された”I Shot The Sheriff（アイ・ショット・ザ ・シェリフ）”はEric Clapton(エリック・クラプトン)によりカヴァーされ全米 No.1となるが、今もなおこの曲も含めて改めて彼の才能と偉大さに感銘を受けるので ある。

1974年にアルバム”Natty Dread（ ナッティー・ドレッド）”をリリース、この頃ボブの妻であるRita Marley(リタ・マーリィ)はMarcia Griffiths(マーシャ・グリフィス)、Judy Mowatt(ジュディー・モワット)と共にThe I-Threes（アイ・スリーズ） を結成し、ウェイラーズのバック・アップなども努めるようになる。1975年 には”Live！（ライヴ！）”がリリ ース、同時で”No Woman,No Cry（ノー ・ウーマン・ノー・クライ）がシングル・リリースされこちらも大ヒットしたの は御存知のとうり。

1979年に発表されたSurvivalを最後にボブ所有のスタジオタフ・ゴングに戻ることは なかった...。既に癌に侵されていた体ながらUprising（アップライジング）、Confrontation（コンフロンテーション）との3部作を形成するも1981 年5月11日、惜しくもこの世を去った。

Bob Marleyボブ ・マーリィーはこう言った。
『音楽の良いところは銃とは違って、心をヒットしても痛みを感じることだ』

500年前からスペイン人に統治され様々な殺戮が繰り返され、のちにイギリスに支配 されるも奴隷制度は消えることなく永遠と続いていた...。それは原住民にだけでな く、アフリカからも数多くの奴隷達が放り出され残虐され続けていた、ジャマイカと いう国。この地で育ち、この地で生まれた音楽を世界に浸透させ、この地で終わる。Bob Marleyボブ ・マーリィーという偉大な男は、何千年と時が過ぎようとも人間が存在する限り決して消えることはない。