リムスキー=コルサコフとその門下生(又はその弟子)の作曲家が書いた吹奏楽曲を集めたCDである。
演奏はオランダ王立海軍軍楽隊、指揮は2017年より隊長のアルヤン・ティエン少佐。
収録曲は既に録音がありますがいずれも片手で数えられるぐらいの物で新録音は歓迎できるでしょう。
内容は英シャンドスから出た「ロシア吹奏楽傑作集」と「ロシア吹奏楽名曲集」を足して割ったような物で、また軍楽隊とオーケストラからソリストを招いてリムスキーの協奏曲を録音した音源と言えば未CD化だが露メロディアが制作して日本でもビクターから発売されたソヴィエト国防省軍楽隊の華麗なロシアン・ブラスという名アルバムが挙げられる(これも収録曲はこのCDと良く似ている)
さて、このオランダ王立海軍軍楽隊の演奏はどうかというと、流石オランダの至宝と言われただけあり、演奏は終始安定していて良い。
メインのリムスキーの協奏曲が3つ揃ったアルバムは思いのほか少なく、ソリストの技巧はもちろん、音楽の表現が素晴らしい。
作品の魅力を全て引き出したとは言えないが、なかなか高い水準の演奏だろう。
ストラヴィンスキーは門下生の中でも刺激的な作品が多く、同じ刺激的、モダン的な作品を書いたプロコフィエフに比べてアルバムではかなり浮いた存在になっている。
一方、プロコフィエフ、グリエール、ハチャトリアン、ショスタコーヴィッチらソヴィエトの作曲家は時勢もあって基本的に分かりやすい作風である。
今でもモダンなプロコフィエフの『体育祭行進曲』『行進曲作品99』や、曲名通り荘厳で民族風メロディも聴ける隠れた傑作、グリエールの『10月革命20周年記念の荘厳序曲』軽快なマーチと力強いトリオが印象的な、ハチャトリアンの行進曲『大祖国戦争の英雄に』ショスタコーヴィッチらしい、捻くれた『ソヴィエト民警の行進曲』と、演奏も実はこれらの曲の方が奏者も楽しんでいるのではないかというぐらい楽しい。
ボルトニャンスキーのコラールは行進曲ファンにはおなじみの曲で、これは純粋に技術力の高さと歌心が味わえるだろう。
録音はスタジオで録られているが、音質は綺麗です。
とここまでは不満はないのですが、せっかくメーカーもこだわりの選曲と銘打ちながら録音に使われた楽譜はほぼ全てがアメリカ式編成に直された物なのです。
オランダ王立海軍軍楽隊は第二次世界対戦後の再結成時にアメリカの軍楽隊が残していった楽器からスタートしたため当初からヨーロッパでは珍しいアメリカ式編成の軍楽隊となっていますが、こだわるのなら録音の時だけでもロシア式編成にして雰囲気は出して欲しかったなと思います。
とはいえ、それ以外は充分満足できる内容のCDだと言えるでしょう。