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ISBN 10 : 4772421297
Content Description
個人の抱える困難や苦悩は「こころ」の内部だけに収まるものではなく、社会問題が深く関わっている。女性や性的マイノリティの貧困、社会資源へのアクセスの非対称、同性愛者やトランスジェンダーの当事者への社会的スティグマ、社会的排除、性暴力、男性の感情表現の失語‥‥これらあらゆる事象にジェンダーの問題は埋め込まれている。そしてジェンダーの問題はクライエントだけが抱えるものではなく、臨床家の臨床観・理論・生活にも影響を与えている。
一方で、アカデミズムの文脈とは別に、フェミニストカウンセリング、男性相談、性的マイノリティへの心理支援など、ジェンダー視点を踏まえた草の根の運動史があるにもかかわらず、日本の心理臨床界ではジェンダー視点は未だ十分に論議されていない現状がある。
臨床心理士・公認心理師をはじめとする対人援助専門職家に向けて、ジェンダーにセンシティブな臨床とはいかなるものかを考えようと試みた本書は、このような社会構造と歴史的経緯から生まれた。女性支援および性的マイノリティ支援を牽引してきた村本邦子氏と葛西真紀子氏へのインタビューを皮切りに、編集委員内の対話から浮かび上がった現代的課題を検証する論考から構成されている。日本の心理臨床界・心理学におけるジェンダー秩序の史的考察から、臨床現場におけるジェンダーバイアスやマイクロアグレッションがもたらす負の側面の批判的検証、性暴力、DV、性別違和など具体的な臨床実践においてジェンダー視点を活かす可能性を考察する。
その場限りの技法論ではない、臨床の質的変化をもたらすための、ジェンダーセンシティブな心理臨床論。
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