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全国森林鉄道 未知なる 森 の軌道をもとめて

西裕之

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784533039799
ISBN 10 : 4533039790
Format
Books
Release Date
October/2001
Japan

Content Description

森林鉄道とは、山で切り出された材木を麓の町や港の貯木場まで運ぶために敷設された専用鉄道。本書は、写真も豊富にお届けする国内森林鉄道のビジュアル版百科事典的な1冊。「森林鉄道一覧」付き。

【著者紹介】
西裕之 : 昭和30年(1955)東京生まれ。本業は歯科医(目黒区・こまばデンタルクリニック)。幼少を茨城県日立市で日本鉱業専用鉄道と日立セメント専用鉄道が交差するあたりで過ごすという恵まれた環境が、のちに線路の幅が狭い鉄道に興味を持つきっかけになったのかもしれない。小型の蒸気機関車、内燃機関車史の研究の一環として軽便鉄道のみならず、森林鉄道や鉱山、建設土木、河川改修工事、砂利採取等の特殊な軌道に広く興味を持っている。現在では、昭和20年代から30年代にかけての黎明期の16番(HO)ゲージ鉄道模型の蒐集と製品史の解明にも力を入れている。鉄道史研究会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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1984年のある日、私は夕張にいた。鉄道少年...

投稿日:2021/04/14 (水)

1984年のある日、私は夕張にいた。鉄道少年だった私は、母にゴールデンウィークにどこに行きたいかと尋ねられて、当時、北海道で唯一旅客営業を行っていた私鉄、三菱石炭鉱業大夕張鉄道線(清水沢-南大夕張)に乗りたいと答え、妹と一緒に連れてきてもらったのだ。念願の大夕張鉄道に乗車し、新夕張に役目を譲った紅葉山駅の廃墟や、夕張鉄道が使用していた若菜駅の駅舎を発見し、私は大喜び。だが、シューパロ湖に来たとき、その不思議な光景を目にして、はたと立ち尽くした。湖岸の反対側で、ダム湖特有の大きな入り江にかかる美しい立派な橋梁が見えたからだ。道路地図をみても、そんな橋梁は描かれていない。しかし、それはどうみても鉄道のためのトラス橋に見えた。美しい橋だっただけに、その幻想性は無二のものだった。それにしても不思議だ。かつてあった大夕張鉄道の廃線区間は、自分がいるこちら側の岸を通っていた。だから、対岸側に並行するような鉄道をもう一本敷くことは考えにくい。しかし、その鉄橋は、見れば見るほど、鉄道橋だった。当時はインターネットも何もなかったし、周囲の大人たちも答を知らなかったから、私のこの謎が解けるまで、しばらく時間を要した。答えは「森林鉄道の廃線」だった。当時、私は森林鉄道がどれほどの規模のものか、まるで想像していなかったのだ。(ちなみに、シューパロ湖にかかる鉄橋は、「三弦橋」と呼ばれる有名な橋梁で、建築工学的にも貴重なものだった。その後も私はこの美しい橋を何度か見に行ったのだけれど、2014年にダムの巨大化により湖底に沈んでしまった)。実は、北海道の森林鉄道がどれほどの規模のものだったかについて、現在も学術的に正確な結論というのは、(私の知る限り)出ていない。ただ、私がいくつかの資料をまとめた結果、総延長は少なくとも1,500kmを越えている。これは、現在のJR北海道の営業キロが2,500km弱であることを考えると驚異的な数字である。とはいっても、これらは同じ時期に存在していたわけではない。森林鉄道はその性格上、幹線以外の線路は、資源をもとめて付け替えが行われる。線区によっては、その運用期間は数年程度というものもある。森林鉄道特有の性格がその全貌をつかみにくくしている。加えて、特に北海道の場合、開拓、殖民の時期と重なっていたこともあって、その記録がきちんと残されていないものも多い。中には、上ノ国、本別、常呂、上川町中越など、「森林鉄道があったと推測されている」というレベルのものまで存在する。なにぶん廃止から年月が経ちすぎているし、しっかりした現地調査を行う労力も費用も限られているのだ。そのような状況の中で、比較的まとまった情報書として、本書は一定の価値がある。本書で取り上げる森林鉄道を列記しよう。 【北海道】羽幌森林鉄道、温根湯森林鉄道、置戸森林鉄道、丸瀬布森林鉄道、定山渓森林鉄道、芦別森林鉄道、陸別・トマム森林鉄道、 【東北】津軽森林鉄道、河内森林手と同、大畑森林鉄道、宮田又・船岡森林鉄道、長木沢森林鉄道、早口・岩瀬森林鉄道、鷹巣森林鉄道、仁鮒森林鉄道、二ツ井営林署森林鉄道、杉沢森林鉄道、仁別森林鉄道、浪江森林鉄道、直根森林鉄道、有林森林鉄道  【関東・東海】 武州中津川森林鉄道、世附森林鉄道、千頭森林鉄道、水窪森林鉄道、気田森林鉄道、下仁田森林鉄道、湯ノ小屋森林鉄道  【中部】 浦森林鉄道、遠山森林鉄道、小坂森林鉄道、王滝・小川森林鉄道、付知森林鉄道、双六・金木戸森林鉄道  【近畿・中国】 高野山森林鉄道、音水(上野)森林鉄道、大杉谷森林鉄道  【四国】 魚梁瀬森林鉄道  【九州】 内大臣森林鉄道、綾森林鉄道、鹿川森林鉄道  【民有林森林鉄道】 三塩森林軌道、稲又森林軌道、東京大学演習林軌道、王子製紙専用鉄道、殿川うち森林鉄道  【現役森林鉄道】 安房森林鉄道、京都大学演習林軌道  【保存森林鉄道】 丸瀬布いこいの森   貴重な写真などを通じて、いくつかピックアップされた森林鉄道について、その歴史背景などまとめてくれている。ただ、前述の理由もあって、資料としての価値は半端な面を指摘せざるをえない。とくに巻末の資料篇の「全国森林鉄道」はあまりにも「抜け」が多すぎる。私が見ただけでも、恵庭、幾寅、音更、達布、美深などの森林鉄道がまるごと抜けているほか、まとめられている森林鉄道も路線の抜けが多い。ただ、このあたり、正確な線名がなかったり、基礎資料に矛盾する記述があったりすることは私も知っているし、網羅というのは、特に北海道の場合、きわめて困難なのだろう。それにしても、基礎資料のあるものまで抜け落ちている気がするのだけれど。各森林軌道をピックアップした紹介でも、せめて路線表記した地形図くらいは記載してほしかった。しばしば簡単な地図が掲載されているだけで、遺構の現地探索などにもほとんど供しないレベルにとどまっている。以上のように「まだまだ」という感がぬぐえない反面、これまで資料整理がおざなりだった森林鉄道というジャンルに「手を付けて」くれたことには、心底感謝したい。貴重な写真や車両の紹介などとても楽しかった。私は、今年丸瀬布いこいの森を訪問した。そこで動態保存・運転されている雨宮製作所製の小さな森林鉄道用蒸気機関車に乗ったのはちょっとした感激だった。ぜひとも、森林鉄道という文化を記録する作業を、様々な形で継続してほしい。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • えすてい

    軽便鉄道・北海道簡易軌道・鉱山鉄道には空気制動がなくハンドブレーキのみのところも少なくなかったが、森林鉄道はその大半が非電化(内燃機関車)762mmで木材を運ぶ車両も全国的にほぼ統一され、戦後は空気制動を搭載し勾配区間もクリアできたところは「先進的」だ。空気制動を最後まで用いなかった森林鉄道もあったようだが。あの小さなモノコックトロッコにどうやって空気制動のシリンダーとブレーキシューを搭載できたのだろう?戦後は線路の維持費や林道整備でトラック輸送に切り替わり森林鉄道は廃止されていった。

  • えすてい

    軽便鉄道の本に森林鉄道も加えられることは少なくないが、この本では軽便鉄道と森林鉄道はイコールでないことを前提としている。まず所轄官庁が運輸省ではなく、林野庁の営林局であったこと(※北海道を除く)がその理由だろう。しかし、軽便鉄道と同じ762mmゲージを採用し、低規格だからこそ狭い山林にも網目や毛細血管のように入っていき、材木を運んでいき日本の林業を支えた森林鉄道。戦後の富士重工製のモノコックトロッコが森林鉄道には革命的な車両だという。観光保存鉄道や保存車両は少なくない。それほど日本の林業を支えた意義は大。

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