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『こころ』で読みなおす漱石文学 大人になれなかった先生 朝日文庫

石原千秋

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784022647047
ISBN 10 : 4022647043
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2013
Japan

Content Description

なぜ『こころ』のKと先生は自殺しなくてはならなかったのか?意外なキーパーソンとして浮かび上がる静と青年―漱石は「女の謎」に悩み続けた時代の教科書だった。高校生から大人まで、国民的作家がぐっと身近に感じられる一冊。新たに2章を特別書き下ろし!

目次 : 第1章 なぜ見られることが怖いのか(長すぎた遺書/ 眼差しへのこだわり ほか)/ 第2章 いま青年はどこにいるのか(語る人間の物語/ 冒頭と末尾の矛盾 ほか)/ 第3章 静は何を知っていたのか(「先生」と呼ぶ理由/ エリートのための純粋培養システム ほか)/ 第4章 「真実」の相続人(三つの遺産相続/ 家族小説家・夏目漱石 ほか)/ 第5章 時代の中の『こころ』(新しい時代の作家・夏目漱石/ 漱石文学は同時代では異質だった ほか)

【著者紹介】
石原千秋 : 1955年東京都生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は日本近代文学。夏目漱石を中心に、現代思想とテクスト分析による斬新な読みを提示すると同時に、国語教育への問題提起も注目されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • べる

    辻褄の合わない、ほころびに思われそうなところに深い意味がある、と新たな読みの視点を得られた。両親から人生の指針を受け取れなかった先生。内側の自分が出来上がっていないと判断基準を他人に置いてしまう。先生は他人の眼差しを内側の自分としてしまった。先生と性格が対照的なKもお嬢さんに恋をして他人の眼差しを感じる人となった。三度の「襖」のシーンが示す、伝えたいことがあるのに伝えられない、そういう孤独を初めて自覚した結果の自殺であったのか。先生は必ず勝つとわかっている恋にKを誘い込んだことも罪の意識を強くさせたのか。

  • maimai

    以前みすず書房から出ていた「『こころ』大人になれなかった先生」を大幅加筆修正したもの。みずず書房版も読んでいるが、事情あってこちらも急きょ入手して読了。やはり素晴らしい。著者の小説観というか、小説を読む姿勢に対しては、全面的な支持を表明したい。『こころ』を読んだときに感じた、腑に落ちない感じというか違和感を、すっきりと説明してもらったように思う。もちろん著者の示した解釈が唯一だとは思わないが、こういう姿勢で読むことが、小説を読むという行為には(常にではないにしても、ときには)必要だと思う。

  • ニクロム

    著者も述べているように、テストパイロットとして小説の可能性を広げる読解をしているから、強引な感じがするところもあった。しかし、独り善がりではなく、これまでの漱石論やその他背景を踏まえて書かれていることは端々からうかがえる。もっとも面白く読んだのは、先生のKに対する複雑な感情と「親殺し」の側面で、先生の過剰なまでの罪の意識がすっきり説明されている。また、遺産相続の文脈から漱石を読むと、漱石文学を貫徹する物語や登場人物の構造が見えてくる。構造を明らかにする読みは価値がある。

  • ただの晴れ女

    夏目漱石「こころ」をベースにして、当時の教育制度や法制度「近代」がどんなものか、漱石の小説にどう表れているか…と。読みやすいので、ぜひ高校生に読んでほしい感じ。個人的には、法体系の知識が、小説の理解にリンクするのが心地いいのと、最後のくだりで、秀逸なタイトルだなぁということと、改めて私も大人になりきれていませんね!と痛感した笑「こころ」の他の解釈本も読んでみたいなぁ。

  • to boy

    小説を読み解くというのはこういう事かと驚きです。たった一行がどれほど重い意味を持っているのかを思い知らされました。漱石が意図した意味をしっかりと受け止め、推測していく著者に感服しました。文学を研究するって、こういうことなんだなあと思いました。「文学研究者は小説のテストパイロット」という表現が気に入りました。

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