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愛と欲望のナチズム 講談社学術文庫

田野大輔

Product Details

ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784065374092
ISBN 10 : 406537409X
Format
Books
Publisher
Release Date
October/2024
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

《すべての性欲を解き放て!》
第三帝国が企てた「快楽」と「生殖」をめぐる大衆動員の実態とは?
ナチズム研究をリードする著者による衝撃的論考の増補文庫化!

産めよ殖やせよ。強きゲルマン人の子らを━ナチスは人間の欲望、とりわけ性欲を解放させることで、人々を生殖に駆り立て、社会を支配せんとした。
「厳格で抑圧的なナチズム」という通説のイメージを、膨大な同時代資料を渉猟することによって覆し、性と権力、快楽と大衆操作が絡み合い展開した「欲望の動員」の実態に光を当てる、決定的研究!

【本書「はじめに」より】
本書はこのような観点から、第三帝国下の「性-政治」の実態を描き出そうとするものである。そこでの性と権力の複雑なからみ合いを、体制側の狙いと個々人の実践との齟齬や矛盾にも留意しつつ、性教育、同性愛、裸体文化、婚外交渉などの争点ごとに検証していきたい。その際とくに、従来の一般的な見方とは異なって、ナチズムが市民道徳への反発から性的欲求の充足を奨励し、ある種の「性の解放」を促進したプロセスに注目する。ダグマー・ヘルツォークの研究が明らかにしているように、彼らにとって性は生殖のためだけのものではなく、快楽や喜びをもたらす一種の刺激剤でもあったのであり、それを徹底的に活用した点にこそ、この運動の動員力を説明する手がかりがあると考えられる。その意味で本書は何よりも、生殖と快楽の問題にとりつかれた体制の「欲望の動員」のメカニズムを解明することをめざしている。

【本書の内容】
はじめに
第一章 市民道徳への反発
第二章 健全な性生活
1 性的啓蒙の展開
2 性生活の効用
第三章 男たちの慎み
1 男性国家の悪疫
2 結婚を超えて
第四章 美しく純粋な裸体
1 裸体への意志 
2 ヌードの氾濫
3 女性の魅力
第五章 欲望の動員
1 新しい社交 
2 悪徳の奨励 
3 道徳の解体 
おわりに 
補章

図版出典 
あとがき
学術文庫版あとがき
索引

*本書の原本は、2012年に講談社選書メチエより刊行されました。

【著者紹介】
田野大輔 : 1970年、東京都に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在、甲南大学文学部教授。博士(文学)。専攻は歴史社会学、ドイツ現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • さとうしん

    旧来の健全な道徳を標榜しつつも、ゲルマン民族の「健康的な肉体」をアピールし、「産めよ殖やせよ」を推進せざるを得ないという都合から、夫婦以外の形も含めた男女の性的関係を肯定せざるを得ないという矛盾を抱えていたナチ政権下の性をめぐるあれこれ。街中にヌード誌が氾濫し、前線の兵士が女性を求めるのと同時に銃後の女性たちも行きずりの相手を求め、少女も含めた青少年の性的非行も横行していた。同じ同盟国側ながら同時代の日本国内の状況と随分違うが、あるいは日本でも知られていないだけでそういう動きが見られたのだろうか?

  • MUNEKAZ

    ナチスの「性」に関する政策を論じた一冊。「人種」を掲げた政権なので、国民の「性生活」にも介入していく姿勢には驚かなったが、その政策のブレも大きいのが意外であった。性産業を抑圧しようと考えたり、「健康なエロス」を追求する連中がいたり、宣伝相はやっぱりセクシーじゃないと客は呼べないとエロスを煽ったり、全然統一されていない。これも最近よく指摘されるナチスに対する整然としたイメージへの反証の一つか。また中産階級の道徳やキリスト教的モラルへの恨み節が炸裂していて、ナチスの根本はやはり「反体制」なんだと再認識した。

  • かんがく

    民族共同体と戦争のために「産めよ増やせよ」の方針に則り、キリスト教的な性道徳を批判して性の解放を進める一方で、人々の性に国家が介入していくという二重性。どこからが不道徳な猥褻で、どこまでが健康的な生の喜びなのか、結局男性が女性を良き母、性のはけ口、男性と同じように働く国民など様々な矛盾する役割を押し付ける視線も、現代に通ずるところがあるなと思った。

  • 無重力蜜柑

    ナチスには一種の道徳的潔癖症のイメージがついている。国民生活の隅々までを支配した全体主義権力は、個人の欲望を抑制し統制したはずだ、と。実際、彼らはワイマール共和国の風紀紊乱と頽廃を盛んに糾弾した。しかし、それは事態の一面に過ぎない。ナチスとは性欲の喚起と歓喜をエンジンとする体制だったのだ。本書はこの基本テーゼを様々な史料で多角的に「実証」していく。大量のドイツ語史料を用いてはいるが、ある意味極めて単純な本だ。そこでは欲望の解放と動員のメカニズムがいくつかの段階に分けて描き出されている。

  • masabi

    ナチスドイツが性の喜びと解放を謳うリベラルな目標を掲げて自由を称揚するようで、その実体制の意図する人種・人口政策へと収斂される。旧体制の保守的な道徳が解体されるが、ナチスドイツの望む道徳が共有されたわけではなく男女ともに性的放縦が広まった。旧来のタブーを破る大衆の性的充足が体制への忠誠を養う一方で、抑圧的な体制下で数少ない自由な領域として性分野に大衆の民心維持が期待された。政策に女性の解放の一面がありつつも、女性には女性らしさを磨き健康的な肉体を養うのが義務付けられた。一番は民族の存続である出産だが。

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