苦海・浄土・日本 石牟礼道子 もだえ神の精神 集英社新書

田中優子

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784087211405
ISBN 10 : 4087211401
フォーマット
出版社
発行年月
2020年10月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
266p;18

内容詳細

水俣病から新型コロナウイルス、政治的抑圧まで…。
近代資本主義社会の限界と災禍の時代によみがえる世界的文学者の思想!

◆内容紹介◆
水俣病犠牲者たちの苦悶、心象風景と医療カルテなどの記録を織りなして描いた、石牟礼道子の『苦海浄土 わが水俣病』は類例のない作品として、かつて日本社会に深い衝撃を与えた。
だが、『苦海浄土』をはじめとする石牟礼文学の本質は告発だけではない。
そこには江戸以前に連なる豊饒な世界と近代から現代に至る文明の病をも射程に入れた世界が広がる。
経済原理優先で犠牲を無視し、人間と郷土を踏みにじる公害、災害。
それは国策に伴い繰り返される悲劇である。
新型コロナウイルスの蔓延が状況を悪化させる中、石牟礼本人との対談、考察を通し世界的文学者の思想に迫る、評伝的文明批評にして日本論。
今は亡き文学者に著者は問い、考える。
「石牟礼道子ならどう書いたであろう」と。

◆主な内容◆
◎石牟礼道子の重層する「二つの世界」
◎母系の森の中へーー古代、女性はリーダーであった
◎近代社会と数値
◎江戸時代以前の循環型時間概念
◎道子が夢想した「新しい共同体」
◎島原・天草一揆と水俣闘争はつながっている
◎近代における共同体の喪失
◎「境界」を行き来する魂
◎死者と生物をつなぐ文学の役割
◎生まれ変わる力があれば

◆著者略歴◆
田中 優子(たなか・ゆうこ)
1952年神奈川県生まれ。法政大学社会学部教授(近世文学)等を経て法政大学総長。2005年紫綬褒章受章。
著書に『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫/芸術選奨文部大臣新人賞受賞)、『近世アジア漂流』(朝日文芸文庫)、
『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』(ちくま文庫/芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞)、
『江戸の恋−「粋」と「艶気」に生きる』(集英社新書)、『カムイ伝講義』(ちくま文庫)、『布のちから 江戸から現在へ』(朝日文庫)など多数。

【著者紹介】
田中優子 : 1952年神奈川県生まれ。法政大学社会学部教授(近世文学)等を経て法政大学総長。2005年紫綬褒章受章。著書に『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫/芸術選奨文部大臣新人賞受賞)、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』(ちくま文庫/芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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  • ぐうぐう さん

    「家」というものに疎外され、女性ゆえの矛盾や苦悩を覚えながら、しかし石牟礼道子は女性解放運動に向かわなかったのはなぜか、と田中優子は疑問を抱く。道子は言う。自我を主張することで誰かが傷つくのではないか、そうなら、女性解放運動よりも新しい共同体を作るにはどうすればいいかを考えた、と。その方向性こそが石牟礼文学の本質だと、田中は気付くのだ。そのような近代的自我の形成にはおよそ関心がなく、魂の拠点を古代の母達に置くのが道子である。(つづく)

  • かふ さん

    石牟礼道子の足跡を辿りなが、家という制度から水俣、さらにもだえ神の精神と解説していく。石牟礼道子というと水俣という事件ばかり思い出されるが人と自然の繋がりにおいて人間が生を営んできた思想の中に古代から伝わる自然神がある。それは獣や虫たちも人と変わらない生を営んできたという水俣の海の姿。チッソを懲らしめるというのではなく、チッソと共に悶えていくという、それは日本人の生活が物質主義によって、失われた世界を想起させるものだ。水俣が天草の乱や東日本大震災と繋がりを持ってその中に生きる人々を晒す。

  • ネギっ子gen さん

    「おわりに」で、著者は書く。<50年。私が石牟礼道子の言葉を心に刻んでから、それほど長い月日がたってしまった。もっと早く書けばよかった、という思いとともに、長く心にとどめておく作家がいることは、とても幸せなことだ、という思いもある>と。わたしと同年生まれの著者の、この思いに納得。そして「もっと早く書けばよかった」を、「もっと早く、しっかり読んでおけばよかった」に変換すれば、そのままわたしの存念に。出逢いには、時がある。盲亀の浮木、優曇華の花。今生での出逢いに感謝して、石牟礼文学にじっくり沈潜していたい。⇒

  • kakoboo さん

    石牟礼道子さんを苦海浄土のみならず広く体系的に理解、する必要があるのか。と思いながらもやはり自分が読み進める中ででてきたモヤモヤを解消させてくれます。1人と向き合う際に1冊を読むのみならず歴史的背景や精神的なものまで向き合えることで少しでも理解に近づくと感じました。石牟礼さんとの対談では余すことなく自身の言葉で向き合っている姿も印象的でした。

  • algon さん

    著者は日本近世史を専門とする社会学者。異なるフィールドからの石牟礼道子の分析評論を読みたい思いで借り受けた。著者は1970年から石牟礼に魅せられ、対談を経てついに評論を手掛けるに至った。「苦海浄土」はもちろんだが多くを「春の城」「不知火」などに費やして石牟礼分析に難解な部分、魂やもだえ神の紹介や分析に挑んでいる。その上で自然の中に入り生類たちとの連携を取り戻すことが現代において人間になり直すこと、それらが石牟礼の遺した我々へのメッセージだと説く。難しい部分もあったが著者も熱烈読者の一人。興を持って読めた。

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人物・団体紹介

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田中優子

1952年、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部教授、同大学総長などを経て、同大学名誉教授、同大学江戸東京研究センター特任教授。専門は日本近世文学、江戸文化、アジア比較文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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