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沈むフランシス 新潮文庫

松家仁之

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784101055725
ISBN 10 : 4101055726
Format
Books
Publisher
Release Date
February/2025
Japan

Content Description

都会での仕事を三十五歳で辞め、北海道の小さな村で郵便配達をする女。川のほとりの木造家屋で世界中の「音」を集めながら暮らす男。偶然出会った両者は、急速に惹かれあっていく。からだでふれあうことでしか感じない安息と畏れ、そして不意に湧きあがる不穏な気配。その関係が危機を迎えた嵐の夜、決して若くはないふたりが選択した未来とは。深まりゆく愛と鮮やかな希望の光を描く傑作。

【著者紹介】
松家仁之 : 1958(昭和33)年、東京生れ。編集者を経て、2012(平成24)年、長篇小説『火山のふもとで』を発表。同作で読売文学賞小説賞受賞。’17年『光の犬』(河合隼雄物語賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞)を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • エドワード

    舞台は北海道。東京で働いていた撫養(むよう)桂子は、過疎の安地内村の郵便局に転職する。夏も冬も、赤い車で配達をする仕事。時に話を聞き、手紙を読んで聴かせる。35歳で独り暮らしの桂子が、私には極めて誠実な女性に映る。それに対し、水力発電機(その名がフランシス)で作った電気を売って暮らす寺富野和彦は、隣村の女性と浮気したり、ベッドに録音器を仕掛けたり、胡散臭い。しかし桂子と和彦は自然と恋に落ちるのだ。帯に「曖昧で苦しくて説明のつかない大人の恋」と書かれているとおりだ。恋とはそうおいもの。二人の幸福を願う。

  • 踊る猫

    なぜこの2人が惹かれ合うのか、ぼくにはついにわからない。そして、わからせない路線においてそのわからせなさをなんらかのパッションでごまかすようなだらしなさもない(言葉にしようのない情念・官能で惹かれ合う関係がありうることくらいならぼくにだって想像はつくのだが、そうした下品さ・下世話さから著者はきちんと一線を引いている)。映画的とも言えるきっちりした構成やシチュエーションの設定、そして凝った細部や洒脱な文体に唸る。ゆえに、小粒・小ぶりに終わった感はあれど一個の作品としての完成度はあなどりがたく「強度」を感じる

  • 汲平

    丁寧な情景・心理描写の「火山のふもとで」に感動して本作を手にしました。田舎町の情景、降り積もる雪の結晶など相変わらず丁寧な描写が美しい。ですが、その丁寧な描写が男女間の関係・情交に発揮されるととたんに辟易してしまう。

  • GO-FEET

    《低収入で非正規の独身女性と、外国各地に旅行できるほど自分の時間がたっぷり持てる仕事をし、富裕層とでも形容しうる生活を送る男。一見共通点などない二人が共有するのは趣味のよさ、自らの人生にスタイルを与えようとする意志と、様式化された生に対するささやかな満足感だ。(中略)だが、それ自体スタイリッシュな音楽のような美しい文体の狭間からは、プア層である桂子が有閑富裕層である寺富野に都合よく利用されているだけではないかという、我々の時代の底にくぐもる不穏な雑音が確実に届いてくる。》(小野正嗣)

  • 最後の羅針盤

    何もかもを一つにしようとしないのが大人の恋ならば、それは引き剥がされる時の痛みや傷口を小さくしたいがための智恵なのか。どうせ、うまくは止められないだろうに。

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