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ほんとうのカフカ 講談社選書メチエ

明星聖子

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784065377956
ISBN 10 : 4065377951
Format
Books
Publisher
Release Date
December/2024
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

ザムザが「変身」したのは「虫」なのか? 『城』の冒頭でKが到着したのは「村」なのか? 『審判』という表題は『訴訟』とすべきか?
カフカの作品にはいくつもの日本語訳が存在し、多くの人に親しまれてきた。だが、「虫」と訳されてきた『変身』を見ても、「虫けら」と訳したもの、原語のまま「ウンゲツィーファー」と表記しているものが登場するなど、一筋縄ではいかない。しかも、1915年に発表された『変身』は作家が生前に公表した数少ない作品の一つで、むしろ例外に該当する。代表作とされる『城』や『審判』は死後出版されたものだが、作家は確定稿を残さなかったため、ほんとうの構成も、ほんとうの順序も、ほんとうの結末も推測するしかないのが実態である。
没後200年を迎えた作家をめぐるドイツ語原文の編集事情を紹介しつつ、カフカのテクストに含まれる錯綜した問題を分かりやすく伝え、日本語訳の問題を検証する。あなたは、まだ「ほんとうのカフカ」を知らない!

[本書の内容]
序 章 ほんとうの変身
「虫」ではなく「ウンゲツィーファー」?/「ウンゲツィーファー」ではなく「虫けら」?/『田舎の婚礼準備』と『変身』/“insect” ではなく “vermin”?/『メタモルフォーシス』ではなく『トランスフォーメーション』?
第一章 ほんとうの到着
「K」は村に着いたのか/書いたままのテクスト?/等価ではない翻訳/誤訳だけではない問題/手稿をめぐる誤情報/「私」の到着/うさんくさい男たち/「私」は測量技師なのか/不審な「私」/もうひとつの到着/少年か、青年か/悪魔のような息子/愛のしるし/仕掛けられた罠/ほんとうの到着
第二章 ほんとうの編集
「私」はいつ「K」になったか/電話はどこにかけたのか/出まかせの肩書き/アイデンティティの正体/「章」とは何か/矛盾する編集方針/定められた〈冒頭〉/新しい「始まり」と「終わり」/〈本〉ではなく〈函〉/批判版vs.写真版/完結した章と未完結の章/ひとつの〈いま〉と複数の〈いま〉/〈正しさ〉をめぐるジレンマ/「夢」は含まれるか
第三章 ほんとうの夢
「史的批判版」という名の写真版/編集の問題と翻訳の問題/ほんとうの「史的批判版」/編集文献学の必要性/ほんとうの底本/「オリジナル」概念の難しさ/もっとも新しい復刻本?/アカデミーへ「提出する」?/ほんとうの外見/書いたものを観察する/『審判』か『訴訟』か/ヴァリアントの提示/「幹」はあるのか?/「私」が現れて消えるとき/ほんとうの結末/白水社版の意義/丘の上の小さな家/ほんとうの夢
第四章 ほんとうの手紙
タイプライターで書かれた手紙/批判版での手紙の並び/ブロート版では読めない手紙/妹の結婚/ほんとうの手紙/フェリスか、フェリーツェか

【著者紹介】
明星聖子 : 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。埼玉大学教授を経て、成城大学文芸学部教授。オックスフォード大学ジーザスカレッジ客員シニアリサーチフェロー(2024‐25年)。専門は、近現代ドイツ文学。主な著書に、『新しいカフカ』(慶應義塾大学出版会、2002年。日本独文学会賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • パトラッシュ

    中学の時『変身』の冒頭を夏休みの課題の絵に描いた。カブトムシとゴキブリの混ざったような虫にして先生に呆れられたが、カフカの原文では虫を指すか自明ではない表現だったとは。『審判』や『城』も本当の順番や結末も不明確で最終原稿がなく、走り書きの断片を友人が編集して一編の小説に仕立てたという。おそらくカフカ本人も出版できるとは思わず、ひたすら妄想を書き殴っていたのではないか。でなければ、この原稿の混乱は説明できない。もしカフカが今の日本にいたなら、ネット小説サイトに奇妙な物語を投稿する変人として知られていたかも。

  • パット長月

    カフカの研究家による「ほんとうのカフカ」探究の旅の現況報告といったところか。カフカの著作・遺稿を巡る編集と翻訳の問題、カフカの創作活動の実際など、実に学術的、マニアックな内容で、一般人がカフカを読む際にはほぼ関係ないが、逆にカフカを少しかじったぐらいの私でも、何やら知的好奇心のようなものが満たされた…気がする本。結局のところ、我々一般読者はカフカのほとんど妄想のような創作物にもとづく編集者や訳者による二次創作物を通じて、それぞれ勝手に勘違いだろうが、何だろうが、正解のない想像(空想?)の世界を楽しむだけ。

  • masabi

    カフカのテクストが孕む問題によってほんとうのカフカとは一体何なのかと謎に包まれる。カフカの手稿がノートや紙束で残されたために、いま読まれる作品が本当に意図に添ったものなのかと疑念が呈される。編集の問題があり写真で手稿が出版されたが、それでも問題が解消されたわけでもない。ヴァリアントや削除・追記などを忠実に作品に取り込むとしたらハイパーリンクで都度結びつけるのだろうか。年をまたいでもまだカフカの手紙を読まないとな思っているとは思わなかった。

  • O. M.

    私も今までよく知らなかったのですが、カフカは小説を行き当たりばったりに書いており、彼のテキストには首尾一貫していない点が散見されるということ。さらに『城』のような生前未完の作品については、彼のメモから後の編集者や出版社が取捨選択・編集しているが、これもカフカの意図を読みづらくしているとのこと。過去の編集者の大変な苦労は理解しました。とりあえず、研究者としての著者の、カフカに対する熱量は伝わってきました。

  • Go Extreme

    カフカ作品・到着のテーマ: 到着の複雑性ー『失踪者』と『城』ー到着が完了していない状況 自由の女神の象徴 作品の執筆過程: カフカの執筆スタイルー自己反省的なスタイルで作品を執筆・過程での失敗や心の声→複雑なメッセージ 手紙と小説ー手紙を書く≒小説執筆の重要な契機 批判版とプロート版: 章の分け方の違い 未完結の章ー完結した章と未完結の章に分けて提示 言語と翻訳の課題 翻訳のニュアンス: 「変身」の訳語問題 カフカの伝記と研究: 私生活や人間関係を通じ深く探求 フェリーツェ・バウアーとの関係ー彼の内面反映

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