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異次元緩和の罪と罰 講談社現代新書

山本謙三

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784065372241
ISBN 10 : 4065372240
Format
Books
Publisher
Release Date
September/2024
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

2024年3月、日本銀行はついに「異次元緩和」に終止符を打った。前総裁氏の就任直後に導入して以来、11年近くもの歳月が流れていた。いま振り返って気づくのは、日本経済が世界に例をみない異形の姿となったことだ。日銀が保有する国債残高は約590兆円に上り、普通国債の発行残高の56%に達する(24年3月末時点)。中央銀行が政府の資金繰りの面倒をみることは、財政規律を維持するための人類の知恵として、世界的に禁じられてきた。市場経済を掲げる国の中央銀行として異例の事態である。

財政規律の後退も著しい。IMF(国債通貨基金)の世界経済見通し(2024年4月)によれば、政府の財政状態を示す「一般政府の債務残高対GDP比率(22年見込み)」は257%と、世界約190ヵ国・地域中第2位の高さにある。国と通貨に対する信認は先人たちの努力の積み重ねによって築き上げられてきたものだが、このような財政状態を続けていて、いつまで信認を保ち続けることができるだろうか。

外国為替市場では、2024年4月、円・ドル相場が34年ぶりの1ドル=160円まで下落した。24年春の時点の実行実質為替レートは、1971年8月のニクソンショック時よりもさらに円安の水準、すなわち当時の1ドル=360円をさらに下回るレベルまで下落している。多くの日本人にとって、円相場はいまや未知の世界に突入している。これらすべてが日銀のせいというわけではないが、異次元緩和が果たした役割は大きい。にもかかわらず、日銀や政府からはあまり危機感が聞こえてこない。

異次元緩和の総括なしにこれからの金融政策を進めていけば、将来再び物価上昇率が低下した際に同じ道を辿る危険性がある。あるいは、物価目標2%にこだわるあまり、さらなる円安など、インフレ圧力への対処が遅れるリスクも否定できない。

本書は、異次元緩和の成果を検証するとともに、歴史に残る野心的な経済実験が生み出したものと、それが日本経済と私たち日本人にもたらす痛みと困難、そして、そこからの再生を考えるための試みである。

【著者紹介】
山本謙三 : 1954年、福岡県生まれ。76年、日本銀行入行。98年、企画局企画課長として日銀法改正後初の金融政策決定会合の運営に当たる。金融市場局長、米州統括役、決済機構局長、金融機構局長を経て、2008年、理事。金融機構局、決済機構局の担当理事として、リーマン・ショックや東日本大震災後の金融・決済システムの安定に尽力。12年、NTTデータ経営研究所取締役会長。18年からはオフィス金融経済イニシアティブ代表として、講演や寄稿を中心に活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • KAZOO

    非常にまじめで日本の金融政策において実質的にも内容のある本です。いかに安倍政権と黒田日銀が日本の経済をおかしくしたのかがよくわかります。同じ新書で河村小百合さんの「日本銀行」と並んで今までの10年近くの政策を総括してくれています。審議委員には経済学者といわれる(その実態はわかりまっせんが)人もいたのに、なぜこのようなことになってしまったのかもよく理解できます。植田日銀に期待したいです。

  • kk

    図書館本。異次元緩和11年の歩みを振り返ってその功罪を総括。その上で、この政策が、「資産健全性の確保」「財政ファイナンスの禁止」「市場介入の抑制」といった諸原則の等閑視につながり、その結果としての資産膨張、財政規律弛緩、市場機能低下などの形で、足元での多大なるリスクとなっているとのご論。著者は日銀勤務36年の通貨政策エキスパート。抑えた筆致ながら、この「異形の政策」に対する静かな憤りとやるせなさといった気持ちが滲み出てくるかのようです。ことの当否はわかりませんが、些か暗澹たる読後感。

  • Roko

    非正規で人件費を押さえようという考え方が、平成以降急速に広まりました。非正規労働は、その時に得る賃金が少ないだけでなく、老後の年金にも関わってきます。 円安や非正規労働で、生活が苦しい人が増えているのに、何もできない政府と日銀。日本の舵取りはいったい誰に託せばいいのやら?

  • 嵐 千里

    異次緩和(≒アベノミクス)の冷静な評価がようやく始まった。その好著。最悪の事態を想定して備える。これが要諦。

  • 碧緑(あおみどり)

    黒田前日銀総裁のもとで11年続いてきた異次元緩和を総括し、出口までの長い道のりと、これからの複数のシナリオについて語った良書。ある程度金融知識のある読者は何が問題か、読めばわかるだろうが、森永卓郎による「ザイム真理教」など、素人向けのデマ本に汚染された方々には通じにくいだろう。異次元緩和が当初目標として掲げた持続的な2%の物価目標について、2%にこだわることの危険性。日銀の優先順位は当然、財政ファイナンスではなく通貨の信認確保であること。異次元緩和は日本の市場機能を損なってきた。日本の真の問題は生産性。

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