日本語を作った男 上田万年とその時代

山口謠司

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784797672619
ISBN 10 : 4797672617
フォーマット
発行年月
2016年02月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
549p;20

内容詳細

夏目漱石、森?外、斎藤緑雨、坪内逍遥…そして上田万年。言葉で国を作ろうと明治を駆けた男たちがいた。



明治維新を迎え「江戸」が「東京」となった後も、それを「とうきやう」とか「とうけい」と様々に呼ぶ人がいた。明治にはまだ「日本語」はなかったのである。「日本語(標準語)」を作ることこそが国(国家という意識)を作ることであるーー近代言語学を初めて日本に導入すると同時に、標準語の制定や仮名遣いの統一などを通じて「近代日本語」の成立にきわめて大きな役割を果たした国語学者・上田万年とその時代を描く。



上田万年の一生は明治とともに始まった。同年生まれに夏目漱石・正岡子規・幸田露伴・尾崎紅葉らがいる。弟子には 「広辞苑」の新村出、橋本進吉。皆、言葉で国を作ろうとした男たちだ。

いまからわずか100年前の明治には「日本語」はまだなく、全国で共通に通じる言葉がないならいっそ公用語を英語にしてしまえという議論さえ真面目になされていた。

そんな中、「言文一致」という新しい試みが始まった。落語の速記を参考にして二葉亭四迷が「浮雲」を書き、漱石が「吾輩は猫である」というまったく新しい日本語の小説を書いた……そして、その背後には上田万年という一人の男がいたのである。

表記や発音の統一、そして出版、流通、教育、娯楽、軍事まで、現在私たちが話している日本語はいかにして「作られた」のかを俯瞰したノンフィクション。



嵐山光三郎さん推薦!

「もうひとつの明治維新史」



大岡玲さん推薦!

「漱石の『日本語』は上田万年の『日本語』だった! 近代日本語の『故郷』を縦横無尽に描ききった著者に、心からの敬意を表したい 」



(「もくじ」より)

第1章 明治初期の日本語事情

第2章 万年の同世代人と教育制度

第3章 日本語をどう書くか

第4章 万年、学びのとき

第5章 本を、あまねく全国へ

第6章 言語が国を作る

第7章 落語と言文一致

第8章 日本語改良への第一歩

第9章 国語会議

第10章 文人たちの大論争

第11章 言文一致への道

第12章 教科書国定の困難

第13章 徴兵と日本語

第14章 緑雨の死と漱石の新しい文学

第15章 万年万歳 万年消沈

第16章 唱歌の誕生

第17章 万年のその後



著者略歴

山口謠司(やまぐち ようじ)

大東文化大学准教授。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。専門は中国および日本の文献学。『ん 日本語最後の謎に挑む』(新潮新書)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川選書)、『となりの漱石』(ディスカヴァー携書)など著書多数。


【著者紹介】
山口謠司 : 大東文化大学准教授、博士(中国学)。1963年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。専門は中国および日本の文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • みつ さん

    日本語の仮名遣いを巡る論争場面から始まり、これは面白そうと読み進める。文語文と口語文、歴史的仮名遣いと現代仮名遣い(さらには上田の提唱した長音を多用したより発音に近い表記)は、全く違った事柄(ほぼ戦後に長く活躍した小説家石川淳は、口語文ながら歴史的仮名遣いを使用)なので、まずその整理から必要。日本を統一国家として成立させるため、話し言葉で全国の誰でもコミュニケーションがとれるようにすることが必須になる。ラジオもない時代だから文字情報がそれを先導するしかない。とすれば文語文は話し言葉と乖離しすぎ➡️

  • tamami さん

    ご維新を経たものの、世間で書かれる文章は漢文調文語体、一方の話し言葉は庶民の方言そのままのべらんめえ調の口語体。混迷する明治期の「言葉」に対して、「日本語」を作ることこそが国を作ることである、という思いで言文一致を中心とした「日本語」を目指して奮闘した人々の事績を、明治という時代相の下に鮮やかに浮かび上がらせる。物語の主人公とされる国語学者の上田万年は、夏目漱石や斎藤緑雨らと同年の生まれであり、万年の個人的知己につながる人々、その他学窓の先輩後輩が織りなす学究的日本語創造の物語は、抜群に面白い。ことに、→

  • HMax さん

    日本語を作った男に感謝。「英語公用語」「漢字廃止」のような極端な政策が採用されていたら、「英語で思考できるもの」「英語が話せるもの」「日本語を話せるもの」と階層社会となってること間違いなし。明治初期の大学では、英語で授業がなされ、海外留学しなければ博士になれなかったようで、自国語で技術的な思考が出来、進んだ技術を翻訳出来るようになった功績は大きいです。日本語が不自由な新島襄や内村鑑三の「江戸以前の文化を存在しないものとしたい」という努力のおかげで、古典を読むのが難しくなったのは残念ですが。森鴎外可哀想。

  • チェアー さん

    怪書。だって肝心の上田万年の影が薄いんだもん。周囲の森鴎外とか夏目漱石のほうが出番が多い。しかも、関係する人が出てきたら、すぐに寄り道、寄り道の繰り返し。それでも飽きずに500ページ以上を読み通せるのは、歴史の裏舞台(本人たちはそんなことは思っていなかった)で人々が生き生きと「新しい時代」を築くために奔走する姿を見られたためだろうか。上田万年は、嫌がらせ的なことをされた官僚とも、私的には良好な関係を保ったという。大きな視点では同じものを目指す「同志」と認識していたからに違いない。そんな熱い時代だったのだ。

  • Lila Eule さん

    現代の日本語が明治に生まれ損なって終戦後に開花したとは。それまで、言文乖離の不便に国民は晒され続けていたとは。民意の言文一致の仮名遣いを10年教育続けたにも拘わらず、国語国字の制定に向かおうとした時、森鴎外が陸軍軍服姿で三時間の反対演説をして旧仮名の時代に反転していたとは。文部省教育が留まるなかで、漱石作品や唱歌で言文一致が広まっていたとは。その前線の上田万年なる言語学者の愛国心は威圧人格の鴎外とは異次元だ。実に面白い。

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