WHOをゆく 感染症との闘いを超えて

尾身茂

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784260014274
ISBN 10 : 4260014277
フォーマット
出版社
発行年月
2011年10月
日本
追加情報
:
21cm,162p

内容詳細

WHOで感染症と闘い続けた尾身茂氏が語る奮闘記
著者の尾身茂氏は、WHOアジア西太平洋地域における小児麻痺(ポリオ)根絶の立役者。また21世紀最初の公衆衛生の危機となったSARS対策でも陣頭指揮をとり、日本に戻ってからは新型インフルエンザ対策で活躍した。『公衆衛生』誌の連載をもとにした本書であるが、3.11後の医療・社会について加筆されている。本書は、まさに感染症と闘い続けた尾身氏の奮闘記。志とは? 覚悟とは? 己との格闘とは? 自ら道を拓こうと欲する、若者に贈る――。


[序文]


 2009年1月30日,約20年間の世界保健機関(WHO)での仕事を終え,帰国.引越しの荷物に手を着けるまもなく,2月2日より母校・自治医科大学での仕事が始まった.亜熱帯・マニラにおける長い生活で汗腺の緩んだ身には,母国の厳寒は堪えた.
 4月に入り,久しく味わう機会のなかった「日本の桜」に接すると,多くの出来事が凝縮していたWHOでの20年間も,遠い昔のことのように思えた.徐々に日本での生活,仕事に慣れてきた.
 そうした中,医学書院の担当編集者から,「WHOにおける感染症対策などの仕事を,単行本としてまとめてはどうですか」との提案があった.私は,気が進まなかった.
 同じ医学書院からの勧めで,私はWHO西太平洋地域事務局長としての仕事や考えを,2004年から2009年までの5年間,毎月,雑誌『公衆衛生』に連載していた.WHOでの仕事の主要な部分は,すでにこの連載に記録として残した,という気持ちだった.
 それにも増して,私の中には,「自分の過去」を一冊の本にまとめるという仕事は,“大家の仕事”という固定観念があった.
 そのうち,日本でも新型インフルエンザの流行が始まり,同年4月29日には,政府の新型インフルエンザ対策専門家諮問委員会委員長に任命され,その仕事と,大学での業務等で手一杯になり,いつしか編集者からの連絡も途絶え,「本」のことは全く頭から離れていった.
 しかし,“敵”もさる者,編集者は本気であった.インフルエンザの流行が下火になった頃を見計らって,再び連絡してきた.今回は,私の気持ちを先取りしてか,「国内外で様々なご経験をされてきたことを若者に伝えることは,先輩としての大事な仕事,義務ではないでしょうか?」と言ってきた.私にもご多聞にもれず“彷徨の青春時代”があった.「若者へのメッセージ」と言われれば,返す言葉がなかった.これで勝負はあった.私の完敗である.
 確かに,若い頃から還暦を迎えた現在まで,多くの方々のお世話になり,様々な経験をさせていただいた.本書が若い読者のこれからの人生に少しでもお役に立てれば,望外の喜びである.
 なお,本書は雑誌『公衆衛生』に連載した原稿を中心にまとめたが,本書執筆作業の途中2011年3月11日に東日本大震災が起こったため,震災対応については加筆した.またWHOからの帰国直後に起きた新型インフルエンザ対策の部分も同様である.
 最後に,5年間にわたる雑誌『公衆衛生』への毎月の執筆は,WHO西太平洋地域事務局に勤務していた3人の日本人医師の協力なしでは不可能であった.この場を借りて,井上 肇さん,佐藤陽次郎さん,杉江拓也さんに心より御礼を申し上げる.

 2011年8月11日
 尾身 茂


[目次]



第1章 WHOに至るまで:第1の青春物語
第2章 ポリオ根絶:第2の青春物語
  ポリオとの格闘の日々のはじまり
  専門家会議にて
  試練克服への道
  さらに乗り越えなければならない課題
  ポリオの根絶−“ゼロ”の証明
第3章 WHO西太平洋地域事務局長選挙:リーダー(RD)となる
第4章 結核対策:RDとしての最優先課題
  日本への期待
第5章 SARS制圧:リーダーとしての仕事
  SARS発生
  緊急対策本部発動
  SARS制圧対策の作成と「渡航延期勧告」
  中国とのやりとり
第6章 [インタビュー]リーダーシップ論:SARS対策を中心に
  効果的なリーダーシップを発揮する秘訣
  SARSとリーダーシップ
  SARSをめぐる日本の感染症危機管理
  日本の公衆衛生リーダーたちへ贈るメッセージ
第7章 WHOにおける鳥インフルエンザ対策
  「縦割り」の壁の融合
  カンボジアでの鶏をめぐる冒険
  2005年末,中国へ飛ぶ
  日本への働きかけ:国際会議の開催
  日本におけるパンデミックインフルエンザ対策
  日本の首長への働きかけ
第8章 日本におけるパンデミックインフルエンザ対策
  総括
  水際作戦の背景
  水際作戦に対する専門家委員会の提言
  なぜ水際作戦は5月22日まで引っ張られたのか
  学校閉鎖
  医療体制
  日本はワクチン後進国
  ワクチン接種回数の混乱
  リスクコミュニケーション
  提言
  まとめ
第9章 日本の医療と社会を考える
 I 深刻な健康問題−自殺
 II 公衆衛生と地域の活性化−日本再生を目指して
 III 「医療の質・安全」を考える
 IV “人”中心の保健医療
 V 21世紀の医学・医療とは
 VI 「家庭医」を考える
  新たな“家庭医”像の提案
 VII 医師の地域および診療科ごとの配分
 VIII 3.11以前と,これから
  今までの日本の医療
  3.11東日本大震災
  これからの社会のあり方
  どう外国と付き合うか
第10章 健康と文明
第11章 若者へのメッセージ
付録 WHOって何?
  WHOとは
  WHOで働きたいと思う人へ

ユーザーレビュー

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読書メーターレビュー

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  • おおカワ さん

    海外で活躍したなってきた。公衆衛生の専門と問題を解決する頭脳と技術あれば最強やな。

  • しそゆかりうめこ さん

    いつも総理と一緒に出てくる尾身さん、確かなものが何もないどんな時でも尾身さんだけはまとも、尾身先生の言うことはちゃんと聞こ、尾身先生!、あ!尾身先生!、てゆうか尾身先生って?と借りてきた。 ぼんやり生きていて時間がかかったけれど今日やっとどれほど立派な方なのかを知り得た。先生の笑顔が見れますように。生きる姿勢を見直します。

  • 木の命木の心 さん

    コロナが流行る前から世界の感染症対策をしているWHOで尾身先生は活躍されてたんですね。雑誌の連載記事のまとめを中心にまとめたものですが、いまさらながら読んでみました。アジアのポリオ根絶に関わられたすごい先生なんですね。 公衆衛生人の大切さを繰り返しおっしゃっているところが印象的です。感染症科は大分日本でも増えている気がしますが、まだまだ足りなそう。

  • ちちもん さん

    尾身茂先生の存在はコロナ禍の日本においてこれ以上ない幸運だったのだなと感じた。

  • 影浪 さん

    コロナの事を知らずに読むと、よくわからないこともありますが、コロナのことを経験してからだと、実感して読めました。特におみさんがあの役職についた理由、どのようにマスコミに対応していたのか、あのときの対応の裏に何があったのか、垣間見えました。

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