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名前で呼ばれたこともなかったから -奈良少年刑務所詩集-新潮文庫

寮美千子

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784101352428
ISBN 10 : 4101352429
Format
Books
Publisher
Release Date
January/2024
Japan

Content Description

彼らはみな、加害者である前に被害者であった――。貧困、育児放棄、虐待、発達障害によるいじめ、厳しすぎるしつけ。過酷な環境で過ごし、犯罪に走った少年たち。そんな彼らの固く閉ざされた心の扉が「物語の教室」を通して少しずつ開かれ、心の内に秘めた思いが詩となって溢れ出す。受刑者に寄り添い向き合ってきた作家が編んだ奇跡の詩集、待望の第二弾。

【著者紹介】
寮美千子 : 1955(昭和30)年、東京生れ。千葉に育つ。’86年、毎日童話新人賞を受賞し、作家活動に入る。2005(平成17)年、小説『楽園の鳥』で泉鏡花文学賞受賞。’06年、奈良市に移住し、’07年より’16年まで、奈良少年刑務所「社会性涵養プログラム」講師。児童文学からノンフィクションまで幅広い著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • やすらぎ

    反省と後悔。時を戻すことができたとして、どう踏み出せばいいのだろう。遥か昔は何処も更地。人間が築き上げてきた街の中で、ひとり生きているから。風が吹いていても止んでいても、何も変わらない。そう思っていたのに、朝の心地よさを今は感じる。詩で何が変わるというのか。わからないままに想像を膨らませれば、心のつかえはとけていく。ここに花は咲いていたのだろうか。願いはある日、風に乗って運ばれてくる。思いがけない色に巡り会えるかもしれない。自然と笑顔がこぼれる日まで、逃げるのではなく、追いかけるのでもなく、歩いていこう。

  • Shoji

    前作の『空が青いから白をえらんだのです』に感動したので、続編の本書を手に取った。前作で学習済のため、感動も控え気味ではありましたが、それでも心に染み入りました。受刑者への「社会性涵養プログラム」として詩を教える作者が、受刑者が書いた詩を掲載しています。受刑者たちは、出自や家庭環境の問題、個性が他者と少し異なるだけで理不尽な扱いを受けたものが多く、一般教養も低い目です。ゆえ、書いた詩は生々しく、心の叫びそのものだと感じました。「受刑者の多くは、加害者になるまでは被害者だった」の一文がズシンときました。

  • シンプルねこ(うみねこ)

    過酷な生い立ちの少年たち。彼らの紡ぎ出す言葉に胸が痛かった。施設より刑務所の方がましとか刑務所はいいところだとかそういう詩を書いている。私は本当に胸が痛かった。何も言えなくなった。

  • 波多野七月

    「わたしは 毎日 階下を通るとき マンホールを踏もうか かわいそうか 迷います 今日もまた 迷います 明日もまた 迷うと思います」少年刑務所と聞いて、どんなイメージを浮かべるだろうか。極悪非道な、怪物のような存在だと恐怖に怯えるだろうか。だが彼らもまた虐待や貧困や育児放棄や発達障害などに苛まれ、ときに被害者であったのだと胸を突かれた。そんな少年の一人である、吃音のある少年が紡いだ詩の前に、ただ静かにうなだれた。

  • みかん

    今出会えて本当によかったと思った1冊。ひとつひとつの詩にこもった想いはもちろん、それに対する教官の言葉、他の子どもたちの受け止めがあたたかくて優しくて。かつて被虐待児であった彼らが、家庭で、学校で、こんなふうに温かい関わりを得られていたらと思うと胸が苦しくなりました。 「刑務所の高い塀は、彼らを懲らしめ閉じ込めるためのものではなく、世間の荒波から彼らを守るための防波堤。」この言葉に込められた真意を胸に刻み、再出発を誓った彼らを差別や偏見で社会から締め出すことがない世の中でありたい。

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