戸惑う窓 中公文庫

堀江敏幸

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784122067929
ISBN 10 : 4122067928
フォーマット
出版社
発行年月
2019年10月
日本
追加情報
:
224p;16

内容詳細

窓とは、いったいなんだろう。眺めずにはいられない大聖堂の薔薇窓、木造家の古窓、いつも持ち歩く心の窓枠…マチスは闇を、プルーストは不思議な絵画を見つめていた。覗きこむほどに、見知らぬ自分が見えてくる。世界を一変させた「窓」を訪ねる二十五篇。

目次 : 嵐の夜に君を思うこと/ 対象のつかの間の、不安定な印象/ 光はノックもせずに入ってくる/ 風になった光/ 窓と扉のあいだで/ あの家の山の櫟林をミイ、キレイダナア―/ エスカルゴの匂う部屋/ 青い闇のある風景/ 世界の生成に立ち会う窓/ 闇だけが広がっていた/ あれの意味を知ってますか/ その金色の衣のなかで/ 虚妄の窓の向こうへ/ 胸をかきむしるほど透明な窓/ 誰が箱男ではなかったのか/ 球状の窓/ 韻を踏んだ四行詩/ 世界の初期設定/ 輸入された鼠/ 語りの高い窓から/ 配水管と避難梯子の先にある空の下で/ 薬包紙の啓示/ 私は窓を愛しつづけた、窓に凭れて。/ 肩にとまった時間/ そのうちに逢ふのです

【著者紹介】
堀江敏幸 : 1964年、岐阜県生まれ。「熊の敷石」で芥川龍之介賞、『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、『正弦曲線』で読売文学賞、『その姿の消し方』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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『 戸惑う窓 』 美しい文章で自在に開いて...

投稿日:2021/07/12 (月)

『 戸惑う窓 』 美しい文章で自在に開いてゆく視野、いくつもの窓。この本自体が豊かな世界を見せてくれる窓のようだ。独自の視点で選び集め、磨いては、示してゆく窓枠。まるで装置のように良い感覚、心地良い気を巡らしては流しつづけている。「 採光、もしくは換気という機能を与えられた窓は、なぜかその機能以外の力で私に働きかける。」本人の文章も他の人の文章も構成の中で、見事な織り成しで複合的な意味を帯びては魅了してゆく。「 さまざまな条件にこちらの精神状態がうまく合致したとき、窓は窓という規矩を押しつけることをやめ、真の意味で開かれた窓になるのではないか?」その時々に問いや考えを抱いては、いろんな場面にふれて、役割をひとつひとつ見つめてゆく的確な視点。「 命の兆す瞬間を見定めるための、いわば本能的な枠組み。」ページをめくるたびに、良く配置された全体の仕組みに感動してしまう驚きと戸惑い。「 語る行為は語られることに変転し、見る行為は見られる行為にすりかわる。」人の言葉も活き活きと伝えながら、本自体の魅力も次々と増してゆく。「 窓の夢想は、鏡以上の力をもって、自分に自分を返してくる。窓から外を覗くことは、内側を覗くことに等しいのだ。」行き来しては、感覚を呼び覚まし、美しい光景へと通じてゆく。何度も読み返したくなる遥かに視野の広がりゆく本。

seigo-hk さん | 長崎県 | 不明

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • KAZOO さん

    堀江さんの久しぶりの文庫です。今回の本には「窓」がキーワードとなっていてそれにまつわるさまざまなエッセイが25も収められています。日本のむかしの和歌から、内外の作家あるいは評論家の文章などの窓にかかわる箇所絵劣りだしてご自分の感じたことや思い出などを語っておられます。相変わらず文章が素晴らしく私にしてはじっくりと読みました。

  • 佐島楓 さん

    エッセイなのではあるが世俗的な内容を、意識的にかどうかわからないが、排除しているため、文学的なうつくしい文章を楽しめる。理解するのにこちらにもある程度以上の教養を要求してくるため、読者が振るい分けられる傾向がある。そこをクリアできるかどうか。題材としては印象的な文章がいくつかあった。

  • aika さん

    すべての切り口は、小さい頃に遊び回った故郷の景色から、万葉集やプルーストなど古今東西の文学やノートルダム大聖堂といった歴史的建造物まで、様々なシーンにさりげなく登場する「窓」。言葉をあらゆる方向からくぐらせて新しい世界を見せてくれる堀江さんの文章に、たゆたっているような不思議な気持ちになります。気になったのは、安部公房の『箱男』。まだ未読の作品なので、堀江さんの短い紹介だけで、どんどん想像が妖しく広がっていきます。チェーホフやジッドの翻訳で有名になる前の神西清先生が残した小説も読んでみたくなりました。

  • TSUBASA さん

    ただ四角に区切られた採光や換気の意味合いだけでなく、真に開かれた窓とは何か。作品に現れる窓を通じて数々の絵画、小説、映画、詩などを論じていくエッセイ。あまりなじみのない作品が多かったり、分析が詩的で哲学的で文学的なもんだから実体が掴みにくいことが多かった。文体が好きという人も多いみたいだが、固すぎて私には合わなかった。とはいえ『箱男』の箱の窓についてや、チャンドラーの訳文に関する話は面白かったし、病床からの窓が出てくる作品がタイトルを伏せて説明されるも、それが神西清『恢復期』だと気づけたのが嬉しかった。

  • プル さん

    窓にまつわる散文集。著者の0.1秒で捕らえた景色も目線も文章で読ませるため、説明されている光景を、読み手である私にも見えるような錯覚に陥る。同じ目を持っているわけではないのに。研ぎ澄まされた感性は、フランス文学教授としてのフランスが舞台だけかと思いきや、和にまで及ぶ。研究者として、よくこれだけの種類の本を読むものだと、関連する本の引き出しにも驚かされる。窓から光や風を感じながら、吐息の中で生まれるような柔らかい文体で堅かったり懐かしかったりする内容を綴っています。下側に余白がある真四角なレイアウトにも注目

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人物・団体紹介

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堀江敏幸

1964.1.3〜。作家。岐阜県生まれ。1999年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川龍之介賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2

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