源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍 講談社選書メチエ

坂井孝一

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784062585811
ISBN 10 : 4062585812
フォーマット
出版社
発行年月
2014年07月
日本
追加情報
:
286p;19

内容詳細

建保七年(一二一九)一月二十七日、鎌倉鶴岡八幡宮社頭。大雪のなか右大臣実朝は甥・公暁の凶刃に斃れる。以来八百年、その人物像は誤解されつづけてきた。「文弱の貴公子」「憂愁と孤独の人」「北条氏の傀儡」…。しかし、歴史学の眼で和歌に向きあうとき、別の声が聞こえてくる。政治状況の精緻な分析と、歌句への犀利な読みこみが、青年将軍の真の姿と夢を明らかにする!

目次 : プロローグ 出でていなば主なき宿となりぬとも/ 第1章 擁立の舞台裏/ 第2章 成長する将軍/ 第3章 歴史家の視線で読む和歌/ 第4章 建暦三年の激動/ 第5章 未完の東国王権/ エピローグ 新たな実朝像の創出

【著者紹介】
坂井孝一 : 1958年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。現在、創価大学教授。専攻は日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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『豊臣秀頼 (歴史文化ライブラリー)』と同...

投稿日:2014/10/20 (月)

『豊臣秀頼 (歴史文化ライブラリー)』と同様のコンセプトの本である。誤解され、軽視されてきた人物の復権の書。本書の主人公は鎌倉幕府3代将軍源実朝である。実朝は古くから無力で文弱、幸薄い悲劇の将軍という見方が有力だった。生母北条政子と執権北条義時に実権を奪われ、和歌・蹴鞠に耽り官位の向上のみを楽しみとした貴族趣味の持ち主で、最期は甥で猶子(養子)の公暁に暗殺され26年の短い生涯を終えた。彼の死によって源氏将軍は断絶し、幕府は北条氏専制の時代へと移っていく。実朝には非力で無能な歌人将軍というイ メージが定着していった。本書はこれまでの負のイメージを取り去り、政治家としての実朝の再評価を試みた一冊である。 実兄の2代将軍頼家の非業の最期を受けて将軍職を継いだ実朝、12歳の少年であったため生母政子や外祖父で執権の北条時政・義時らが政務を担ったが、成長するにつれ実朝も親裁を行うようになっていき、時政が失脚し義時が執権となってからは徐々に増えていく。実権が北条氏側にあったのは変わらないが、実朝も政務に意欲を示していたことを著者坂井氏は資料を紐解きながら説き起こしていく。当初は実朝のことを青二才と軽視していたらしい義時も一目置くようになったという。生母である「尼御台所」政子にはさすがに頭が上がらなかったようだが、それでも実朝は少しづつ独自色を打ち出していった。 実朝は歌人として優れた才能を発揮し、当代一の歌人藤原定家からも高く評価され『小倉百人一首』の一人に選ばれたほどであった。それゆえに「文弱」のイメージも付きまとったのだが、坂井氏はそれを否定する。歌集『金槐和歌集』をはじめ実朝の残した和歌を丹念に調査し「文弱」に見えて実はしたたかな政治家実朝の実像を炙り出していく。実朝が和歌に打ち込んだ真意、それは当時朝廷の「治天の君」であった後鳥羽上皇に範を求め、その上で幕府の長として朝廷の長である上皇と渡り合うためのツールとするためであった。当代随一の総合文化人であった上皇から伝統文化を吸収し、もって御家人たちの上に君臨し、さらに朝廷とも向き合う。官位を追い求めたのも幕府統治に必要だと考えたからであり、決して貴族趣味などという軟弱な理由によるものでなかった。 しかし、実朝の前途は多難であった。緊密な関係にあった幕府の重臣和田義盛が執権義時の度重なる挑発を受けて挙兵、いわゆる「和田 合戦」によって一族全滅となる。これにより義時は幕府に揺るぎない権勢を確立するが、その義時に担がれて幕府軍の象徴となった実朝 の権威も向上していく。実朝の官位は右大臣にまで上昇、将軍親裁の強化が図られていく。この頃実朝は唐突に渡宋計画をぶち上げ幕府 重臣で義時派の大江広元を慌てさせる、という行動をとる。従来この渡宋計画は実権を失い厭世的になった実朝の気まぐれ、現実逃避で はないか、と考えられてきた。しかし坂井氏は「将軍を支持するか否かをみきわめる試金石」であり「将軍親裁に抵抗する勢力への強力な 示威」ではないか、と指摘する。また実朝は「必ずしも自分の子孫が将軍職を継がなくてもよい」と発言するなど、なかなかしたたかな一面 を見せている。 歴史では実朝の死後、京都から摂関家の子弟や皇族を将軍に迎えるようになっていくが、元々の発案者は実朝その人であった。坂井氏は公暁の受けた衝撃は大きかったはずだ、と見る。自分が実朝の養子として次の将軍になれると思い込んでいたはずの公暁にしてみれば、ハシゴを外されたようなものだ。そして1219年、ついに公暁は鶴岡八幡宮において実朝を襲撃し殺害、自身もその日の内に討ち取られ、かくて源氏の嫡流は断絶することとなった。この暗殺事件については北条義時黒幕説、三浦義村黒幕説などがあったが、坂井氏は両説とも 否定、追い詰められてヤケを起こした公暁の単独犯行と結論づける。いずれにせよ、実朝は志半ばで無念の横死を遂げたのである。 「文弱の人」と見られてきた実朝のイメージに一石を投じた最初の人は正岡子規であった。子規は実朝の残した和歌に「文弱」では説明できない剛毅な精神性を感じとり「古来凡庸の人と評し来りしは必ず誤なるべく、北条氏を憚りて韜晦せし人か、さらずば大器晩成の人なりしかと覚え候」と書いている。実際は子規の見立て以上にしたたかで積極的な君主であったわけだが。 きわめて真面目な学術書であり、和歌の解釈に多くのページを割いているのでスラスラと読み通せる本ではないが読み応えは十分な一冊である。

金山寺味噌 さん | 愛知県 | 不明

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 鯖 さん

    実朝暗殺の黒幕については北条氏も三浦義村の説も否定。筆者は実朝の後継問題について追い詰められた公暁が乱心して起こした単独犯とする。東国に独自の王権を作ろうと模索し、朝廷と関わり積極的に動いた実朝の姿が描かれていたのが新鮮だった。それは金槐和歌集を編纂し、百人一首にも選ばれた歌人としての実朝と相反するものでもないよなあと。あの頼朝と政子の子なのだから、ひたすら激しく、ひたすら強く弱く、ものすごく色々な面があって、才能があったのだと思う。それが一つ一つ潰されて絶望していった暗殺までの数年だったんだろうなあ…。

  • はるわか さん

    長男頼家の後見人比企一族、平賀義信。次男実朝の周囲を固める北条氏(時政、政子、阿波局)。頼朝のクーデター封じ:範頼誅殺、甲斐源氏安田義定・義資誅殺、一条忠頼誅殺。頼朝の急死、頼家と有力御家人の対立:宿老十三人の合議制、梶原景時滅亡、阿野全成粛清。比企の乱(圧倒的な比企一族への北条氏の捨て身の反撃)、頼家暗殺。畠山重忠の滅亡。牧氏事件(北条時政失脚、平賀朝雅誅殺)。金槐和歌集。和田合戦(北条義時の挑発、三浦義村の裏切り、和田義盛一族の滅亡)。実朝暗殺は公暁の単独犯行(説)。源氏の血を引く将軍候補の誅殺。

  • umeko さん

    和歌は苦手なのだが、それでも和歌から実朝の実像に迫ったところが読み応えがあり興味深かった。実朝の従来のイメージが変わり、その最後がこれまで以上に劇的なものとなった。

  • MUNEKAZ さん

    源実朝の評伝。読みどころは「金槐和歌集」をもとに和歌から実朝の内面に迫った部分。賛否もあると思うが、文弱で薄幸の人というイメージを覆し、父・頼朝を超えようと苦闘した将軍・実朝の像が導き出されている。また著者は「柳営亜槐本」の筆者を足利義政に比定しているが、そうだとすれば幼少で将軍になり、御家人の統制と自身の権威確立に努めた実朝の生涯を義政はどう眺めたのだろう。自らに重なる部分も多かったのではないだろうか。

  • 遊未 さん

    頼家の時代の梶原氏、比企氏。実朝になって畠山氏、牧氏、和田氏。その事件を紹介しつつ、名付け親の後鳥羽院、藤原定家等京都との関係についても記されています。しかし、何より実朝の和歌から実朝像に迫っているので、読者にそちらの興味がないと読みにくいかもしれません。公暁単独説が取られているが、単純すぎるような…。坂東武者と京都の関係がよく紹介されています。

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坂井孝一

1958年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。博士(文学)。現在、創価大学文学部教授。専門は日本中世史。平安末期・鎌倉初期の政治史・文化史、室町期の芸能史を主な研究テーマとする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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