赤い人 講談社文庫

吉村昭

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784062772594
ISBN 10 : 4062772590
フォーマット
出版社
発行年月
2012年04月
日本
追加情報
:
320p;15

内容詳細

明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。

【著者紹介】
吉村昭 : 1927年東京生まれ。学習院大学国文科中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞する。徹底した史実調査には定評があり『戦艦武蔵』で作家としての地位を確立。その後、菊池寛賞、吉川英治文学賞、毎日芸術賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、大佛次郎賞などを受賞する。日本芸術院会員。2006年79歳で他界(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

ユーザーレビュー

総合評価

★
★
★
★
★

5.0

★
★
★
★
★
 
1
★
★
★
★
☆
 
0
★
★
★
☆
☆
 
0
★
★
☆
☆
☆
 
0
★
☆
☆
☆
☆
 
0
★
★
★
★
★
吉村文学の最高傑作の一つ。北海道在住の方...

投稿日:2021/04/18 (日)

吉村文学の最高傑作の一つ。北海道在住の方、北海道旅行をする方には是非読んでいただきたい一冊。 「赤い人」とはわかりやすく云うと囚人のことである。明治時代の囚人が 着用していたオレンジに近い赤色に染められた囚人服を「赤」としている。 現在だと想像もつかないと思うが、明治時代には札幌−網走間には幹線道路がなく、旭川などの内陸部の都市は広大な原野に阻まれた実質的に陸の孤島であった。 「赤い人」は過酷な労働条件と自然環境のもと札幌−網走間、距離にして約335kmの幹線道路を開拓・開通した「赤い人」たちの物語を吉村流の写実的なタッチで描いた傑作である。 ご参考までにこの335kmという距離は横浜−名古屋間(約340km)、東京−仙台(約350km)に置き換えるとわかりやすいと思う。 詳細についてはネタバレになるので割愛させていただきますが、この作品を読むと北海道は屯田兵が開拓したという歴史教科書による真実の歪曲が理解できると思います。 こちらの作品を読まれた後に、札幌−網走間を車で走破し、「月形樺戸博物館」「博物館 網走監獄」に実際に足を運んでいただくと教科書には書かれていない北海道の歴史の真実や裏舞台を体感していただくことができると思います。 そんな楽しみ方もできる素晴らしい一冊です。

I.O.U さん | 北海道 | 不明

0

読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

powered by

  • おしゃべりメガネ さん

    『羆嵐』の吉村先生がえがく、囚人による北海道開拓の裏歴史をえがいた大作です。会話はほとんどなく、ひたすら状況および情景描写がつづられていきますが、不思議とほとんどストレスなく、ひきこまれてハイペースで読了でした。40人の囚人による開拓の歴史が幕をあけ、過酷で地獄な労働環境のもと、開拓事業は進み、時を経て今の我々が住む「北海道」に至ります。ある意味、囚人による'労働'がなければ、北海道の姿はここにはなく、北海道民としてはぜひ機会をみつけて手にとっていただきたい素晴らしいドキュメントであり、ドラマがあります。

  • yoshida さん

    北海道開拓の裏面史。明治14年、日本政府は凶悪犯や政治犯による北海道開拓を国策として開始。道路の敷設、農地の開墾、硫黄鉱山の増産、炭鉱での増産等、安価な労働力で北海道開拓を強力に推進する。牢獄には暖房はないため、厳寒の北海道で多くの囚人が凍傷や寒さで死亡する。看守も厳格に囚人を管理する。当時、北海道に送られた囚人は苦役の末の死が待っていた。唯一の希望は皇族の崩御による恩赦のみ。あまりに非人道的な事であるが、約100前の日本で行われていた事実である。衝撃的な内容。歴史の裏面史として記録される力作と言える。

  • kinkin さん

    吉村昭といえば歴史文学として有名だがこの本も緻密な取材と文献で語られていた。北海道の開拓は本土からの移住者が全て行ってきたと思っていたが囚人を北海道の未開拓地、糠蚊や虻、うるしの木のある未開の大地に送り込み道路を作ったり囚人の集治監を作らせたということは知らなかった。またその背景には国の政治的な背景もあったということ。後に良質な石炭が見つかったことから炭鉱の労働者として使ったりもしたこと。北海道で粗末な赤い着衣と足袋も着けさずに厳しい労働を強いたことや囚人の逃走劇も描かれ読み応えのある本だった。オススメ

  • モルク さん

    明治時代の石狩川上流にある樺戸集治監を舞台に、そこに送られた囚人たちと看守たちの記録。国策により囚人たちは原野を開拓し道路を作るなど、酷寒の地で鉄丸、鎖に繋がれての重労働を強いられる。当然のように脱獄が起こり、それを執拗に追いかけ惨殺し監獄に残っている者たちへの見せしめとする。小説というよりは、淡々と史実が語られる記録である。そこに囚人たち、看守の感情は表だって記されてはいない。開拓というきれいな言葉を使った北海道の黒歴史の一ページを垣間見た思いがする。いかにも吉村作品である。

  • ペグ さん

    読後、暗然とする。たかだか100年足らずで、同じ日本で、ましてや北海道在住者として、この様な出来事が起こっていたという事〜。罪を犯した人間に、もう人格は無く、人間の形をし、呼吸をしている生き物で、労働力としてしか扱われない。特に思想犯にたいしての扱いは過激である。極寒の北海道で単衣、足袋もなく草鞋で重労働を強いられ死者多数。彼等に愛する人はいなかったのだろうか?吉村昭さんの表現はあくまでも客観的で記録として描かれ、その分、心に刺さった。

レビューをもっと見る

(外部サイト)に移動します

人物・団体紹介

人物・団体ページへ

吉村昭

1927(昭和2)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。58年、短篇集『青い骨』を自費出版。66年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。73年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、79年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、84年『破獄』で読売文学賞を受賞。2006(平成1

プロフィール詳細へ

文芸 に関連する商品情報

おすすめの商品