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三島由紀夫 悲劇への欲動 岩波新書

佐藤秀明

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784004318521
ISBN 10 : 4004318521
Format
Books
Publisher
Release Date
October/2020
Japan

Content Description

「悲劇的なもの」への憧憬と渇仰。それは三島由紀夫にとって存在の深部から湧出する抑えがたい欲動であった。自己を衝き動かす「前意味論的欲動」は、彼の文学を研ぎ澄ませ昇華させると同時に、彼自身を血と死へ接近させてゆく。衝撃的な自決から半世紀。身を挺して生涯を完結させた作家の精神と作品の深奥に分け入る評伝。


[目次]
はじめに


序 章 前意味論的欲動
 一 悲劇的なものへの憧憬
 二 本心のない作家
 三 ジャック・ラカンの「享楽」
 四 生涯の輪郭

第一章 禁欲の楽園――幼少年期
 一 生まれた家
 二 学習院の教育
 三 ことばの城

第二章 乱世に貫く美意識――二十歳前後
 一 戦争の仕度
 二 初恋の女性
 三 韜晦する文学

第三章 死の領域に残す遺書――二十代、三十一歳まで
 一 『仮面の告白』の決意
 二 生き辛さの嘆き
 三 世界旅行での濫費
 四 『金閣寺』の達成と誤解

第四章 特殊性を超えて――三十代の活動
 一 『鏡子の家』の失敗
 二 理念を生きる人たち
 三 泥臭い生き方
 四 シアトリカルな演劇

第五章 文武両道の切っ先――四十代の始末
 一 聖なる人間
 二 「英霊の声」の天皇
 三 「文化防衛論」の意図
 四 「ゾルレンとしての天皇」

終 章 欲動の完結
 一 『豊饒の海』の底
 二 一九七〇年十一月二十五日の最期
 三 終わらない三島由紀夫


文献解題
略年譜
おわりに

【著者紹介】
佐藤秀明 : 1955年神奈川県小田原市生まれ。1987年立教大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。神奈川文学振興会職員、椙山女学園大学教授を経て、近畿大学文芸学部教授。三島由紀夫文学館館長。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • 佐島楓

    三島の評伝。実は特定されていない生家の場所など、記述が詳細にわたっており、興味深く読んだ。三島は、人生をあまりにもまっすぐ生きすぎた、しかも死のために生きすぎたひとなのではないだろうか。かれの思想はおそらく常人には理解できなかったろう。ひとに理解されたいという欲求より、自分で自分を理解したいと希求するほうが強いタイプの人間じゃなかったかと少し思った。もう誰にもわからないことだけれど。

  • とくけんちょ

    今までに数多くの評価や研究がされてきた三島由紀夫。新しい切り口はということで、悲劇的、身を挺すると2つのキーワードから着想を得て、オリジナリティを出そうとしている。三島文学は多種多様であり、その生涯もある意味、蠱惑的。作品は商売で、思想は死をもって貫いた、これには他人がどうこう評価できるもんじゃないような気もする。

  • パトラッシュ

    三島由紀夫の生涯をたどりつつ、置かれていた状況や心境を探り作品成立のプロセスを明らかにしていく。評価されぬことへの不満が『仮面の告白』を生み、『金閣寺』の結末はボディビル効果が関係し、『鏡子の家』の不評から社会性の強い諸作を書くに至るなど。外部要因で文学的方向性は変遷したが、根本にあった「悲劇的なもの」「身を挺している」感覚が研ぎ澄まされてクーデター計画や自決に至る精神の昂揚が起こったとみる。こんな考えに囚われていたのなら、さぞ生きにくかったに違いない。あるいは三島の死は、生きにくさからの脱出だったのか。

  • ぐうぐう

    「前意味論的欲動」を通して三島由紀夫の作品と生涯を解読する試みの『三島由紀夫 悲劇への欲動』。佐藤秀明は「前意味論的欲動」を「言語化し意味として決定される以前に遡ることになる体験や実感に表れた、何ものかに執着する深い欲動」と説く。キーワードは、「悲劇的なもの」と「身を挺する」。この二つの言葉を晩年の評論『太陽と鉄』に見つけた佐藤は、その二十年前の『仮面の告白』にも出てくることから、論を始める。三島の生涯を追いながら作品を時系列に分析する手法は、新書という媒体も手伝って、とてもわかりやすく、(つづく)

  • Mark

    著者は現三島由紀夫文学館館長。遺された作品群を繙きながら、生い立ちから壮絶な最期まで、彼の短かった一生を辿ります。特に、遺作となった『豊饒の海』については、比較的紙幅を割いており、この作品の重要性が読み取れます。近いうちに、山中湖の文学館を訪れて、自筆原稿などを見て、昭和という激動期とほぼ重なる彼の足跡に触れたいと思いました。

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