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大衆宣伝の神話 マルクスからヒトラーへのメディア史 ちくま学芸文庫

佐藤卓己

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784480096098
ISBN 10 : 4480096094
Format
Books
Publisher
Release Date
May/2014
Japan

Content Description

大衆が政治の舞台に躍り出た20世紀初頭、政党は権力維持に不可欠な民意を調達するため、より強力で説得力あるメディアを求めて熾烈な宣伝戦を繰り広げた。当時、世界最強の組織力を誇ったドイツ社会民主党は、その勝利のイメージをデモ、祝祭、シンボル、漫画、新聞などでいかに表現したのか。また、新たに登場したラジオ放送にどう向き合ったのか。レーニンも称賛したこの社会主義宣伝の「神話」を最も深く学んだ人物こそ、国民社会主義者アドルフ・ヒトラーだった。多くのイラスト資料とともに、市民的公共性からファシスト的公共性への構造転換を鮮やかに解き明かしたメディア史の雄編。

目次 : 第1章 預言のメディアから予言のメディアへ/ 第2章 市民的啓蒙新聞から社会主義大衆機関紙へ/ 第3章 「読書する市民」から「感受する大衆」へ/ 第4章 社会主義マリアンヌから国民国家ゲルマーニアへ/ 第5章 新聞政党のラジオ観と労働者的公共圏の崩壊/ 第6章 「鉤十字」を貫く「三本矢」/ 終章 シンボルの黄昏―大衆政治におけるシンボルの可能性/ 補論(風俗史家フックスにおける政治/ 「ナチ宣伝」という神話)

【著者紹介】
佐藤卓己 : 1960年生れ。1989年、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、国際日本文化研究センター助教授を経て、京都大学教育学研究科准教授。著書として『「キング」の時代』(岩波書店、サントリー学芸賞)、『言論統制』(中公新書、吉田茂賞)のほか、多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • きつね

    おすすめ。中心的な人物にスポットをあてていく論述のため、門外漢にも大変読みやすかった。帯には「ヒトラーが学んだプロパガンダ!?」とあるが、表紙に使われた漫画は皮肉なことに、シンボリックな対立と呉越同舟という二重拘束を物語る。本書を通読するとこのセンセーショナルな帯文に感じた「期待」が面白いように裏切られていく。一口にいえばドイツで社会主義が弾圧を耐えて第一党にまで上り詰めながら、ナチズムにとってかわられるまでの複雑な動きを、メディアの技術革新-メディア観の新陳代謝(の速さと遅さ)-メディア戦略の近代化とい

  • またの名

    戦争だけでなくSPD(ドイツ社会民主党)をも知らなかった古市氏でも読めて収穫があったそうなので、大衆読者が読んでもきっと発見があるはず。机上の革命理論や「ナチス宣伝工作は魔術的に最凶」神話によって実像よりも誇張されたドイツ史のイメージを、社会主義政党なのに宗教的主題を用いたり市民的公共性と労働者的公共性の間で揺れたりするSPDのメディア戦略を主役に語ることで脱神話化。ヒトラーにお株を奪われたSPDが鉤十字にしょうもない落書きを施して応戦する様子は、古市氏とともに「今と同じじゃん」と言いたくなるアホらしさ。

  • 馬咲

    弾圧に耐えワイマール体制にて第一党に至ったが、最後はナチスに取って代わられたSPD(ドイツ社会民主党)の展開した大衆宣伝の分析を通して、宣伝の効力の現実的可能性を探る。同時にナチスの宣伝もSPD由来であることを示し、ナチスに纏わる「宣伝=魔術」という神話を解体している。SPDの独自性にはマルクス主義的合理主義に収まらない思想を展開した創設者ラサールの存在が大きく、彼の発案した宗教的シンボルの如き党代表者像、娯楽と労働者運動の接合、祝祭による一体感の創出等のアジテーションの影響を後のナチスに見るのは容易い。

  • 編集兼発行人

    十九世紀後半から二十世紀前半までの独国における社会主義政党が展開した宣伝を巡る考察。文化的な階層内で高位に在る少数の市民が形成する輿論に対抗すべく低位な階層に在る多数の労働者を射程に入れて世論を形成する過程で選択された様々な媒体や表現手法と其の中心人物達とが論述され巧みな煽動で伸し上がりながら組織の理性的な成熟に伴う硬直化により新参の全体主義政党に株を奪われる模様が学術的な筆致で克明に浮上。神話の構成に加担する「極めて第三者的である積りの受信者」を炙り出す補論に不意を突かれ襟を正す。読み応え十二分の労作。

  • 毒モナカジャンボ

    戦前のSPD(ドイツ社会民主党)の歴史を広報・宣伝活動から振り返るものであると同時に、ナチスがSPDに代表される左派団体の宣伝技術をいかに模倣していたかを振り返る、ナチスの脱神話化を目指した論文。「普通選挙」を目指し労働者的公共圏を樹立しようとした煽動家ラサール。市民的公共圏と労働者的公共圏の接続を目指しつつ、党内の政治構造の整理に寄与した機関紙『真相』。党内に保身主義が蔓延し思想的硬直が起こる中、ナチスとのシンボル闘争に敗北し崩れ去る栄光。記号に飲み込まれないための武器になる本だろう。

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