クラシック・ファンの中で、三善晃の音楽を聴いた事のある人はどれだけいるだろうか?
日本人作曲家の中では有名な方なので、音源はある方だが、意外と何から聞けば良いか分からないという人もいるかもしれない。
そんな方にお勧めなのが、純音楽での代表的作品を集めたこのCDである。
この2枚組CDはビクターが1970年代頃に日本人作曲家の作品を録音していた時代の音源が原盤で、この時代に脂ののっていた邦人演奏家による名演奏が聴ける。
CD1はオーケストラと独奏楽器のための作品を中心に選曲された物で、この中ではピアノ協奏曲が一番良い演奏だ。
CD2はオーケストラのみの作品を中心に室内楽曲を入れた選曲。
この中では圧倒的に素晴らしいのは『祝典序曲』である。
最近では天野正道による吹奏楽編曲版のほうで知られているが、このCDは勿論原曲通り管弦楽、それも知る得る限り2つあるうちの1つだが、最初から最後まで圧倒的なパワーと熱気、決して祝典的な作品ではない本作を分かり易く伝えてくれる決定的名演。
何より日本のオケからこのような骨のある音が聴けたのがびっくりだ。
初期作品のヴァイオリン・ソナタも決定的名演で、黒沼ユリ子のヴァイオリン、三善晃のピアノ、つまり自作自演なのだが、黒沼の情熱的なヴァイオリンが良いし、三善のピアノも上手い。
解説書はオリジナルLPを復刻しており、またいくつかの音源は初CD化である。
録音は基本的に年代を考えれば悪くない。