マリー・ホール録音集〜エルガー:ヴァイオリン協奏曲、小品集
20世紀の最初の四半期に華々しく活躍し、ヴォーン・ウィリアムズの名曲『揚げひばり』誕生に貢献したマリー・ホール[1884-1956]を聴く1枚。9歳の時に、優れた演奏家で作曲家でもあったエミール・ソーレを感嘆させたというホールですが、家庭に経済的余裕が無く進学を断念。個人教授のレッスン料を稼ぐため路上などありとあらゆる場所で演奏したと後に述懐しています。エルガーや、『G線上のアリア』で知られるウィルヘルミらの指導を受けた彼女は、17歳でヤン・クーベリックを感心させて推薦を得、プラハ音楽院で名教師として知られたオタカール・シェフチークに師事、翌年のデビュー・リサイタルではカーテンコールが25回にも及んだと伝えられます。その翌年にはロンドンでヘンリー・ウッド指揮クイーンズ・ホール管弦楽団とパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ヴィエニャフスキのファウスト幻想曲を披露してセンセーショナルな成功を収めました。
1908年6月に演奏会で居合わせたヴォーン・ウィリアムズの目に留まり、後に彼は『揚げひばり』を作曲して彼女に献呈。ピアノ伴奏版もオーケストラ版もホールのソロで初演されました。1912年12月にはエルガーのヴァイオリン協奏曲を作曲者の指揮で演奏して大きな評判となり、ここに収められた録音に結実します。ただしSPレコードの収録時間の制約から「短縮版」による演奏で、第1楽章と第2楽章が各4分、第3楽章が7分半に切り詰められています。
ここに復刻されたのは1904年から24年にかけての演奏。さすがに音質面での制約はありますが、リースやパガニーニの無窮動や常動曲に聴く軽快に弾むような弓捌きは聴いていて楽しく、サン=サーンスの『白鳥』冒頭のポルタメント、ラフの『カヴァティーナ』におけるヴィブラートの使い方などに当時のスタイルを聴くことが出来ます。ドヴォルザークの『ユモレスク』はゆるやかなテンポでメランコリックに奏でられて印象的。バッハ、ヘンデル、ルクレールの作品はバロック音楽の演奏史における貴重なドキュメントでもあります。(輸入元情報)
【収録情報】
01. エルガー:ヴァイオリン協奏曲ロ短調 Op.61(短縮版)
録音:1916年12月13日 原盤:2-07942/45 (HO 2408/10 & 2412)
02. サン=サーンス:白鳥
録音:1904年3月7日 原盤:7962 (5135b)
03. ダンブロージオ:カンツォネッタ Op.6
録音:1904年3月7日 原盤:7996 (5134b)
04. リース:組曲 第3番ト長調 Op.34〜第5曲『無窮動』
録音:1904年12月21日 原盤:7989 (6407b)
05. モーツァルト/ブルメスター編:ディヴェルティメント ニ長調 K.334〜メヌエット
録音:1904年12月21日 原盤:7991 (6405b)
06. メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64〜フィナーレ
録音:1904年12月21日 原盤:7990 (6408b)
07. フィオッコ/オニール編:組曲 第1番ト長調〜アレグロ
録音:1912年5月1日 原盤:3-7947 (Ae 15190)
08. クライスラー:ポルポラの様式によるメヌエット
録音:1912年8月24日 原盤:3-7950 (y 15585 e)
09. ラフ:カヴァティーナ ニ長調 Op.85-3
録音:1912年8月24日 原盤:07972 (z 6489 f)
10. シューベルト/アウアー編:楽興の時 Op.94-3
11. デ・アンジェリス:ジーグ Op.2
録音:1912年8月24日 原盤:07973 (z 6492 f)
12. ヘンデル:ソナタ ヘ長調 HWV.363a〜ブーレ
13. F.シューベルト:蜜蜂 Op.13-9
録音:1912年8月24日 原盤:07974 (z 6490 f)
14. J.S.バッハ/クライスラー編:パルティータ第3番ホ長調〜ガヴォット
録音:1914年4月4日 原盤:3-7971 (Ak 17707 e)
15. パガニーニ:常動曲 Op.11
録音:1914年5月18日 原盤:2-07916 (Al 7960 f)
16. アウリン:4つの水彩画〜第2番『フモレスケ』
録音:1916年7月18日 原盤:4-7924 (hO 2961 ae)
17. ルクレール/サラサーテ編:サラバンドとタンブーラン
録音:1916年7月19日 原盤:2-07953 (hO 2016 af)
18. ラロ:スペイン交響曲 Op.21〜フィナーレ
録音:1916年7月19日 原盤:2-07934 (hO 2017 af)
19. ダンブロージオ:ロマンス Op.9
録音:1916年7月19日 原盤:2-07938 (hO 2015 af)
20. サラサーテ:ホタ・アラゴネーサ Op.27
録音:1918年10月3日 原盤:2-07956 (hO 3476 af)
21. ドヴォルザーク:ユーモレスク Op.101-7
録音:1924年2月21日 原盤:4-7931 (Bb 4240-2)
22. クライスラー:ルイ・クープランの様式による才たけた貴婦人
録音:1924年2月21日 原盤:3-7973 (Bb 4239-1)
23. ベートーヴェン/ブルメスター編:メヌエット ト長調 WoO.10-2
録音:1924年2月21日 原盤:3-7945 (Bb 4241-1)
24. グーセンス:古い中国民謡
録音:1924年2月20日 原盤:6-7937 (Bb 4236-3)
25. ホルスト:ワルツ=エチュード
録音:1924年2月21日 原盤:6-7938 (Bb 4237-1)
マリー・ホール(ヴァイオリン)
サー・エドワード・エルガー指揮、オーケストラ(01)
氏名不詳(ピアノ:02-19)
ハロルド・クラクストン(ピアノ:20)
チャールトン・キース(ピアノ:21-23)
マルグリット・ティヤール(ピアノ:24,25)
復刻プロデューサー:Eric Wen
復刻エンジニア:Raymond Glaspole
マスタリング:Rick Torres
収録時間:約83分