『ラインの黄金』全曲　シュレーマー演出、ツァグロゼク＆シュトゥットガルト

新世紀の『リング』プロジェクトDVD化
ワーグナー：楽劇『ニーベルングの指環』4部作〜序夜　楽劇『ラインの黄金』（152分）

シュトゥットガルト州立劇場2002/2003
指揮：ローター・ツァグロゼク

ワーグナーの大作、「ニーベルングの指環」４部作を、１作ずつ異なる演出家で上演するという斬新な試みが、意欲的なプロダクションの数々で高い評価を得ているシュトゥットガルト州立歌劇場で行なわれ、ワグネリアン＆オペラ愛好家の間で大きな話題となっていました。２００２／２００３年シーズンのオープニングとして劇場が総力を挙げたこの「リング・プロジェクト」が遂にＤＶＤ化、序夜「ラインの黄金」でいよいよスタートします。

　ヨアヒム・シュレーマーの演出は、登場人物すべてを舞台に配した上でラインの乙女たちの歌が始まる幕開けからして、「指環」の神話的世界を視覚的に根底からくつがえすもの。しかし、舞台上で示されるメタファー（隠喩）の数々は、「指環」の世界に触れたことのある聴き手であれば、さまざまな思いを巡らさずにはおかないインパクトを持っています。舞台に内蔵された現代を照射する真摯なメッセージは、第一夜以降への期待を見事にかきたててくれるものといえるでしょう。
　音楽的充実も特筆されるところで、歌劇場専属の歌手を中心とする各配役の水準の高さはもちろんのこと、指揮のローター・ツァグロゼクがワーグナーに欠かせない豊麗な響きを湛えつつ、明快なサウンドで一貫させているのも聴き逃せません。大河のような音楽に身を任せ、演出効果の妙、メッセージにイマジネーションをふくらませるというのは、オペラ・ファンに許される大きな醍醐味のひとつです。
ヴォータン:ウォルフガング・プロープスト
ドンナー:モッティ・カストン
フロー:ベルンハルト・シュナイダー
ローゲ:ローベルト・キュンツリ
アルベリヒ:エサ・ルートゥネン
ミーメ：エバーハルト・フランチェスコ・ローレンツ
ファゾルト:ローラント・ブラハト
ファフナー:フィリップ・エンス
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
フライア:へルガ・ロース・インドゥリダドティア
エルダ:メッテ・アイシング
ヴォークリンデ:キャトリオーナ・スミス
ヴェルグンデ:マリア・テレーザ・ウルリヒ
フロスヒルデ:マルガレーテ・ヨスヴィヒ
シュトゥットガルト州立管弦楽団
指揮：ローター・ツァグロゼク

演出:ヨアヒム・シュレーマー
装置＆衣装：イェンス・キリアン
照明：ダーフィト・フィン

全タイトル、原語（ドイツ語）字幕とともに、最新のワーグナー研究にもとづく新訳日本語字幕つき。