ノルウェー音楽史上に名を残す一族、リンデマン家
リンデマン家は代々に渡りノルウェーの音楽に大きな貢献をしてきました。一家の最初の音楽家はアマチュア音楽家としてフルートとヴァイオリンを演奏したヤコブ・マドセン・リンデマン。彼の長男、オーレ・アンレアス・リンデマンは、プロの音楽家として活躍。トロンハイムの教会オルガニストを務め、ノルウェーの音楽教育の基礎作りに指導的役割を果たしました。作曲家としては、3つの歌曲と約30曲の鍵盤盤楽のための作品を残し、このアルバムでは6曲をアイナル・ステーン=ノックレベルグが、コペンハーゲンの王立図書館で発見された手稿譜で演奏しています。
オーレ・アンレアスの子のひとりが、ノルウェー音楽史に大きく名を残すルードヴィーグ・マティアス・リンデマンです。彼は、オルガニスト、作曲家、音楽教師として活動しながら、ヴァルドレやテレマルクといった地域をまわって民謡を集め、『古い、また新しいノルウェーの山のメロディ』として出版しました。この曲集は、後の作曲家たちのインスピレーションの源となり、グリーグの『スロッテル』や『四つの詩編』をはじめとする芸術作品に再生されていきます。
ルードヴィーグ・マティアスの一番下の弟、ユスト・リッデルヴォル・リンデマンは、兄の下で学び、1853年にクリスチャンサンのオルガニストに就任し、1858年から亡くなるまでトロンハイムの大聖堂のオルガニストを務めました。彼はナショナル・ロマンティシズムの運動に心酔し、アスビョルンセン、ヴィンニェ、ビョルンソンといった作家たちと親交がありました。コペンハーゲン弦楽四重奏団が演奏する2曲の弦楽四重奏曲のうちニ長調の曲は、1864年、彼がコペンハーゲンでニルス・W・ゲーゼに師事した年の作品です。
ルードヴィーグ・マティアスの子、ペーテル・ブリューニ・リンデマンも音楽家です。ストックホルムの音楽院でチェロとオルガンと作曲を学び、多くのジャンルに作品を残しました。彼の功績のひとつが、1883年、父ルードヴィーグ・マティアスに協力してクリスチャニアにオルガン学校(後のオスロ音楽院)を創設したこと。ノルウェー音楽アカデミーの前身です。ステーン=ノックレベルグのピアノで演奏される『3つの小品』は、ルードヴィーグ・マティアスの兄の子、従姉妹のアンナ・セヴェリーネ・リンデマンと結婚したころの作品です。アンナ・セヴェリーネは、ピアニストとして教育を受け、叔父と夫が作った音楽院でピアノ教師を務めました。彼女は教材とするため多くのピアノの小品を作曲しています。
ディスク1とディスク2の音源は、3枚のLPでリリースされていたアナログ録音、ディスク3はCD(PSC1214)のためのデジタル録音です。いずれもデジタルリマスターして収録されています。(キングインターナショナル)
【収録情報】
Disc1 (71:21)
ルードヴィーグ・マティアス・リンデマン[1812-1887]:
1. ノルウェー英雄バラードの旋律(1884-85)(混声合唱のための)より
夢の詩(第27曲)
オラヴ・オステセンのベルト(夢の詩)(第28曲)
ヤッラル橋(第29曲)
霊の世界(夢の詩)(第30曲)
ヘルムード・イッレ(第18曲)
小さなシェスティと妖精の王(第23曲)
戦士イルヒュイェン(第26曲)
兄と弟(第21曲)
リーケバルとギュードビョルグ(第22曲)
クヴィキスプラーク・ヘルムードソン(第6曲)
ローランとマグヌス王(第3曲)
ハーラル王とヘミンゲン(第16曲)
2. 同声三部合唱のための30のノルウェー英雄バラードの旋律(女声合唱による)より
騎士ヴァリヴァン(第87曲)
少年クヌートとシルヴェリン(第56曲)
3. 男声合唱のための50のノルウェーの山の旋律(1862)より
オスムン・フレグデイーヴァル(第8曲)
ヒューガバル(第13曲)
馬丁ヒシュティ(第10曲)
ハン・オーレ(第28曲)
小さなトゥーラ(第26曲)
ナイチンゲールのバラード(第23曲)
ハン・マッスとハン・ラッセ(第1版)(第33曲a)
ハン・マッスとハン・ラッセ(第2版)(第33曲b)
4. ヨハン・ベーレンス:男声合唱のための歌集(1845-82)より
酔っぱらって
ハン・トゥースタイン
ステーヴ「それで君は僕と付き合ってくれるのか」
5. アンナ・セヴェリーネ・リンデマン[1859-1938]:
3つのピアノの小品 op.4より第1曲「上機嫌」
4つのピアノの小品 op.5より第1曲「小犬」
3つのピアノの小品 op.8より第2曲「小川」
6. ペーテル・ブリューニ・リンデマン[1858-1930]:
3つの小品 op.6(ロマンス ホ短調/夜想曲 イ短調/特徴的なエチュード ト長調)
7. ユスト・リッデルヴォル・リンデマン[1822-1894]:
ピアノのための4つのロマンス
8. ルードヴィーグ・マティアス・リンデマン:
スウェーデンの旋律『ノアじいさん』による4手のピアノのための変奏曲
マルメ室内合唱団、ダーン=オーロフ・ステーンルンド指揮(1-4)
アイナル・ステーン=ノックレベルグ(ピアノ:5-7)
アイナル・ステーン=ノックレベルグ、エヴァ・クナルダール(ピアノ:8)
録音:1983年5月27-29日、スウェーデン、マルメ音楽アカデミー(1-4)
録音:1983年3月28日、4月5日、オスロ・コンサートホール(5-8)
Disc2 (62:06)
1. オーレ・アンレアス・リンデマン[1769-1857]:16のイギリス舞曲より
アングロワーズ ニ長調
アリア ヘ長調
アングロワーズ第9番ホ長調「行進曲つき」
2. 4つのメヌエット〜第1番変ホ長調
3. 4つのメヌエット〜第2番変ホ長調/ラメントーゾ「おお、むごい死よ」ハ短調
4. ルードヴィーグ・マティアス・リンデマン:『古いまた新しいノルウェーの山のメロディ』より
ランゲベルグの調べ
教会へ向かう花嫁の行進
山の踊り
ビョルグンのランゲライクの調べ
5. ユスト・リッデルヴォル・リンデマン[1822-1894]:
弦楽四重奏曲ニ長調(1864)
弦楽四重奏曲ト短調
アイナル・ステーン=ノックレベルグ(チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード:1-4)
コペンハーゲン弦楽四重奏団(5)
トッター・ギスコウ(ヴァイオリン)、モーエンス・ドゥアホルム(ヴァイオリン)
モーエンス・ブルーン(ヴィオラ)、アスガー・ロン・クリスチャンセン(チェロ)
録音:1983年3月22日 オスロ、ヘニ=オンスタ芸術センター(1-3)
録音:1983年3月25日 ノルウェー、トロンハイム、リングヴェ博物館(4)
録音:1983年3月19-20日 コペンハーゲン、聖アネ高等学校(5)
Disc3 (71:56)
ルードヴィーグ・マティアス・リンデマン:
・コラール『わが終わりの近きをだれぞ知らん』による変奏曲
・戴冠式行進曲
・B-A-C-Hの名による3つのフーガ
・コラール『ただ愛する神の摂理にまかす者』による変奏曲
コーレ・ノールストーガ(オルガン/Ryde & Berg 1998)
録音:2002年11月4-5日、オスロ大聖堂