La Boheme: Santini / Turin Rai O & Cho Taglivini Carteri Taddei Siepi(1952)

名盤ひしめく『ボエーム』の中でも、とりわけマニア筋から非常に高い評価を受けているのが一組。なんといってもフェルッチョ・タリアヴィーニの絶好調のロドルフォ役が最大の目玉です。
　1959年の「イタリア歌劇団」公演における名演で、日本でもなかば神格化されているといっていい名声を持つタリアヴィーニ、リリコ・レッジェーロの見本と評されるその美声から「テノーレ・ディ・グラツィア(優雅なテノール)」と称されたこの名歌手は、来日公演でも有名な『愛の妙薬』のネモリーノ役や『ルチア』のエドガルド、そしてこの『ボエーム』のロドルフォ役などでその資質が全面的に開花したといいます。これはまさに、タリアヴィーニ絶品の当たり役を聴くことができる貴重な録音といえるでしょう。
　他のキャストもきわめて豪華。ロザンナ・カルテリは、このミミ役を最高のはまり役として絶大な人気を誇ったソプラノで、その意味ではかのミレッラ・フレーニの先輩格。早くに結婚引退してしまったことを惜しむ声がいまだにあるほどとか。カラヤンとの『ファルスタッフ』があまりにも有名な名バリトン、ジュゼッペ・タッデイの極め付きといいたいマルチェッロ役、第３幕の名アリア「外套の歌」で深く流麗な美声を聴かせるチェーザレ・シエピのコルリーネ役も必聴でしょう。指揮はローマ国立歌劇場の音楽監督として長年君臨した名匠サンティーニと、素晴らしい布陣です。
　この全曲盤は、1952年にチェトラがレコーディングしたモノラル録音で、他のレーベルからもＣＤ化されていますが、過度なノイズリダクションやエコーなど電気的加工を加えない、音楽本位の復刻で定評あるPREISERからのリリースは、この名演にとってなんとも喜ばしいところです。

・プッチーニ：歌劇『ボエーム』全曲
　ロザンナ・カルテリ（ミミ）
　フェルッチョ・タリアヴィーニ（ロドルフォ）
　ジュゼッペ・タッデイ（マルチェッロ）
　チェーザレ・シエピ（コルリーネ）、他
　トリノＲＡＩ管弦楽団＆合唱団
　ガブリエーレ・サンティーニ（指揮）
　録音：1952年7月12日[モノラル]