白鳥を焼く男ではなくハーディガーディ奏者を意味するタイトル
ヒンデミット:白鳥を回す人、弦楽オーケストラのための5つの小品
ラニエーリ(ヴィオラ)、モレスコ(指揮)ICOスオニ・デル・スド管弦楽団
ヒンデミットのヴィオラ協奏曲「Der Schwanendreher」は、直訳すると「白鳥を回す人」となりますが、意訳されて「白鳥を焼く男」として知られています。しかしヒンデミットが楽譜冒頭に置いた文章では、「陽気な一座に加わった吟遊詩人が、異国から持ち帰った歌を披露する。真面目な歌もあればふざけた歌もあり、舞曲も含まれている。真の音楽家である彼は、メロディーを拡張して装飾し、前奏もつけて即興で演奏する。こうした中世の情景が、この作品の着想の源となった」といった意味のことが書かれていて、さらにヒンデミットが引用した、フランツ・ベーメの「ドイツ古謡集」(約660曲収録して1877年に出版)の説明文では、この曲は17世紀初頭頃の舞曲、あるいは一種の冗談歌であったとされているのです。
17世紀の絵などでは、羽をむしられた白鳥にそっくりのハーディガーディもよく見かけますし、ハーディガーディは白鳥の首のような部分を回して音を出す楽器なので、「白鳥を回す人」は、旅回りの一座に居たであろうハーディガーディ(ドイツ語でDrehleier)奏者のことを指していると考えるのが妥当でしょう。ちなみに古謡のテキストは以下のような内容です。
あなたは白鳥を回す人ではないのですか。
あなたはその人ではないのですか?
では、この白鳥を私のために回してください。
私はそう信じているのです。
あなたは私のために白鳥を回さないのですか?
あなたは白鳥を回す人ではないのですか?
私のために白鳥を回してください。
このテキストからは、楽師に向かって、早くハンドルを回して楽器の音を聴かせてくれとねだっている人の様子が伝わってくるように思えます。
ブックレット (英語、イタリア語・12ページ)には、音楽史と理論の教授で、オルガン奏者、チェンバロ奏者でもあるアルベルト・マンマレッラによる解説などが掲載。
Brilliant Classics ・
Piano Classics ・
Berlin Classics ・
Neue Meister
演奏者情報
ルーカ・ラニエーリ (ヴィオラ/画像右)
マルコ・モレスコ (指揮/画像左)
ICOスオニ・デル・スド管弦楽団
トラックリスト (収録作品と演奏者)
CD 43'42
パウル・ヒンデミット (1895-1963)
「白鳥を回す人」IPH125 (古謡に基づくヴィオラと小楽団のための協奏曲) 28'46
(編成:フルート2 (ピッコロ1)、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット1、ホルン3、トランペット1、トロンボーン1、ティンパニ、ハープ1、チェロ4、コントラバス3)
1. 第1楽章 「山と深い峡谷の間で」:遅く〜ほどよく動いて 8'26
2. 第2楽章 「いざその葉を落とせ、小さな菩提樹」:とてもおだやかに〜フガート 10'33
3. 第3楽章 「あなたたちは白鳥を回す人ではありませんか?」による変奏曲:ほどよく速く 9'47
弦楽オーケストラのための5つの小品 Op. 44-4 14'52
4. 第1楽章 遅く 3'01
5. 第2楽章 遅く - 速く 2'12
6. 第3楽章 生き生きと 1'46
7. 第4楽章 とても遅く 4'17
8. 第5楽章 生き生きと 3'36
ルーカ・ラニエーリ (ヴィオラ)
ICOスオニ・デル・スド管弦楽団
マルコ・モレスコ (指揮)
録音:2023年3月20〜22日。イタリア、ブーリア州、フォッジャ、サラ・ビアンカ
Track list
PAUL HINDEMITH 1895-1963
Der Schwanendreher
Konzert nach alten Volksliedern für Bratsche und kleines Orchester
[Concerto based on old folk songs for viola and small orchestra]
1. I. “Zwischen Berg und tiefem Tal"
(Langsam - Mäßig bewegt, mit Kraft) 8'26
2. II. “Nun laube, Lindlein, laube!" (Sehr ruhig)
Fugato: “Der Gutzgauch auf dem Zaune saß" 10'33
3. III. Variationen “Seid ihr nicht der Schwanendreher"
(Mäßig schnell) 9'47
Fünf Stücke Op.44 No.4 für Streichorchester
[for string orchestra]
4. I. Langsam 3'01
5. II. Langsam - Schnell 2'12
6. III. Lebhaft 1'46
7. IV. Sehr langsam 4'17
8. V. Lebhaft 3'36
Luca Ranieri viola
Orchestra Ico Suoni del Sud
Marco Moresco conductor
Recording: 20-22 March 2023, Sala Bianca Foggia, Italy