全曲盤は世界初! 初演版を堂々たる解釈にまとめ上げる豪華演奏陣
「君よ知るや南の国」が有名なオペラ『ミニョン』(1862)の作者、フランスの歌劇作曲家アンブロワーズ・トマ。他には『アムレット(ハムレット)』が比較的よく取り上げられる中、他の作品は今やあまり上演の機会に恵まれず、1872年にパリ音楽院学長となって以降フォーレへの敵視に関する話など、巨匠ながら不名誉な逸話ばかりが残りますが、今回ロマン派フランス音楽センター(Palazetto Bru Zane)の尽力により『プシュケ(プシシェ)』の全曲録音が実現しました(台本:ジュール・バルビエ[1825-1901]&ミシェル・カレ[1821-1872]、1857年パリにて初演)。
レスボス王の娘プシュケは桁外れの美貌ゆえに美の女神の怒りを買いますが、その懲罰に手を貸すはずだった女神の子エロスはプシュケに魅せられ恋仲に。幸せの戸口に立った彼女に嫉妬した2人の姉ダフネとベレニスも敵に回り四面楚歌の中エロスも死に追いやられますが、周囲の取りなしと全能の神ユピテルのおかげで復活、プシュケも不死となりエロスと結ばれます。
今回は『ミニョン』成功前の1857年にオペラ=コミークとして初演された3幕版をベースに、1878年の4幕版にある見せ場を補った最新校訂版での演奏。ジェルジ・ヴァシェジは実績の多いバロックを越えてマスネ『ウェルテル』やラロ『イスの王』などフランス近代作品でも名演が続いていましたが、今回も隅々まで細やかな解釈でトマの技量を浮き彫りにし、声の扱いばかりか管弦楽作法にも優れていた作風の魅力を最大限に引き出しています。ギルメット、デンヌフェルド、クリストヤニスら欧州歌劇界の層の厚さを感じさせる歌手たちの巧みな歌唱も見事。「Bru Zane」レーベルの常通りブックレットの充実(仏語、英語)も嬉しいところです。(輸入元情報)
【収録情報】
● トマ:歌劇『プシュケ』全曲
エレーヌ・ギルメット(ソプラノ/プシュケ)
アントワネット・デンヌフェルド(メゾ・ソプラノ/エロス)
タシス・クリストヤニス(バリトン/メルキュール)
メルセデス・アルクリ(ソプラノ/ダフネ、第1のニンフ、第2のエコー)
アンナ・ドースリー(メゾ・ソプラノ/ベレニス、第2のニンフ、第1のエコー)
アルタヴァスト・サルキシャン(テノール/アンティノウス、少年)
フィリップ・エステーフ(バリトン/ゴルジアス)
クリスティアン・ヘルマー(バリトン/王)
ハンガリー国立合唱団
ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
ジェルジ・ヴァシェジ(指揮)
録音時期:2025年2月10-12日
録音場所:ブダペスト芸術宮殿、ベラ・バルトーク国立コンサートホール
録音方式:ステレオ(デジタル)
ブック型装丁