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ISBN 10 : 4871542505
Content Description
ウクライナ戦争では、ウクライナはもちろん、ロシアも兵器の調達に苦労している。兵器調達の苦労は今に始まったことではない。16世紀に銃砲が本格的に実戦に使用されるようになってからは、各国とも銃砲そのものよりも、火薬なかんずく火薬の主成分である硝石の調達に苦労した。筆者クレッシーも指摘しているように、硝石は現代のウランにも匹敵する重要戦略物資である。
ウクライナへの兵器の供与、ロシアへの兵器の禁輸など、両国への国際的な武器移転の動向が、国際関係のみならず各国の国内政治も大きく変化させている。戦車や戦闘機など兵器の移転ばかりに目を奪われがちであるが、両国ともより深刻なのは砲弾の不足である。弾が無ければ、戦車も戦闘機もなんの役にも立たない。戦車も戦闘機もない19世紀以前の戦争では、砲弾、火薬そして何よりも火薬の主成分である硝石(硝酸カリウム)が戦争の帰趨を決したのである。イギリス、フランス、プロシアなどヨーロッパ諸国は血眼になって硝石を確保しようとした。その硝石の争奪が、現在のウクライナ戦争における武器移転同様に、ヨーロッパの国際関係や国内政治に大きな影響を与えた。
詳しくは、本文に譲るが、本書は決して歴史書ではない。現代にも通ずる、国際政治の教科書とでも言うべき作品である。ウクライナ戦争は、アルマダの海戦、七年戦争、ナポレオン戦争など火薬の調達が裏面史であったヨーロッパの過去の大戦争にも通ずる砲弾の調達をめぐる戦争である。
戦争の本質は、今も昔も変わらず、クラウゼヴィッツのいう「物理的暴力」である。そしてこの戦争の本質である「物理的暴力」をもたらすのが、「火薬の母」硝石なのである。
(「訳者まえがき」より)
【著者紹介】
デーヴィッド・クレッシー : 英国生まれ。現クレアモント大学院大学歴史学研究教授。ケンブリッジ大学で4つの学位を取得。本書執筆時のオハイオ州立大学では、人文科学特別栄誉教授およびジョージ3世英国史教授を務める。専門は、主に近世イングランドの社会史
加藤朗 : 桜美林大学名誉教授。1951年生。1975年早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1981年同大学院政治研究科国際政治修士修了。同年〜1996年防衛庁防衛研究所所員、同年〜2022年桜美林大学国際部助教授、リベラル・アーツ学群教授。専攻:国際政治(安全保障)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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