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ネアンデルタール人は人類と交配していた

スヴァンテ・ペーボ

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784163902043
ISBN 10 : 416390204X
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2015
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

◆2015年7月5日放送予定のNHKスペシャル『生命大躍進』第3集「ついに“知性”が生まれた」に著者登場!!

現生人類にもっとも近いヒト族だったが、数万年前に絶滅し、その遺伝子は絶えたと思われていたネアンデルタール人。
しかし、ひとりの科学者が数十年に及ぶ苦闘の末に、化石骨からネアンデルタール人のDNAを復元した。そして、そのDNAが現生人類の中に数%残っているという驚愕の事実を明らかにしたのだ。

本書はその男、スヴァンテ・ペーボ博士が自ら記した回想記。
ペーボは学生時代にミイラのDNA復元に挑んだのを皮切りに、古代DNAを取り出し、増幅して復元するという研究ジャンルそのものを創始したといえる。
しかしその道のりは苦難の連続だった。何万年も埋まっていたDNAには現代の微生物や人間のDNAが混入し、正確に増幅するのは非常に難しい。ペーボが精密な復元方法の確立に腐心する一方で、他の研究者たちは、次々と何万年どころか何千万年も昔の化石からDNAを取りだしたと称する、『ジュラシック・パーク』まがいの無責任な研究を華々しく発表する。

不遇の時期を耐えたペーボに訪れた転機が、ネアンデルタール人を目標としたことと、DNA増幅の新技術「次世代シーケンサー」の登場だった。「ヒトゲノム計画」を完成させ、生物学全体を革新して新たな遺伝子工学を可能にしたほどの威力を持つ次世代シーケンサーを使って、ペーボは4万年前のネアンデルタール人ゲノム解読という乾坤一擲の大レースに勝利する。
誠実な方法の研究を貫いたことが、最後には大逆転をもたらしたのだ。

そして、現生人類とネアンデルタール人のDNAの比較は、驚くべき事実をも明らかにした。日本人を含む「非アフリカ人」はすべて、数%のネアンデルタール人DNAを持つのに対して、アフリカ人は持たない。これは、5万年ほど前にアフリカを出た現生人類が中東でネアンデルタール人と交配して世界中に広まった、という説の強い証拠だ。

ネアンデルタール人と現生人類に接触はあったのか、あったのならば両者はセックスしたのか? これまで化石と遺物からは永遠にわからないと思われていた疑問に、ペーボは鮮やかに具体的な証拠をもって答えたのである。

この成果によって、いまや、彼らと現生人類を分けたものが何だったのか、彼らの遺伝子が私たちの中でどんな働きをしているのか、ということさえも、具体的に研究する道が開けつつあるのだ。

最先端の技術革新で古代の遺物を研究するギャップ、スリリングなネアンデルタール解読レースに手に汗握り、淡々としながらもときにあけすけなユーモアを発揮する著者の筆致にクスリとさせられながら、科学という営みの面白さを満喫できるポピュラー・サイエンス。

【目次】

第1章 よみがえるネアンデルタール人
1996年のある晩、わたしの研究室からの電話が鳴った。長年の努力の末、絶滅し、失われたはずのネアンデルタール人のDNAを骨から復元できたのだ

第2章 ミイラのDNAからすべてがはじまった
1981年、医学生だったわたしは昔からの憧れのエジプト学と分子生物学の合体を思いつく。ミイラのDNA抽出を実験し、当代一の学者の目に留まった

第3章 古代の遺伝子に人生を賭ける
1987年、古代ゲノム研究の道を選んだわたしの人生は転換点を迎える。「PCR法」で古代動物DNAを増幅する実験を重ね、正教授のオファーが来た

第4章 「恐竜のDNA」なんてありえない!
1990年、ドイツに移ったわたしは現代のDNA混入への対処に苦闘する。一方、学界では何千万年も前のDNA復元と称するいい加減な研究がはびこる

第5章 そうだ、ネアンデルタール人を調べよう
1993年、古代人「アイスマン」を解読したが、現代人との区別は難しかった。もっと古く、かつ、ある程度DNAが残るのは……ネアンデルタール人だ

第6章 2番目の解読で先を越される
1章で述べた「ミトコンドリアDNA」復元に続く第二のネアンデルタール人解読をめざし1997年に骨を入手したが、他の研究者に先を越されてしまう

第7章 最高の新天地
1997年、思わぬ機会を得て、マックス・プランク協会の進化人類学研究所を創立できることに。すばらしい施設を立ち上げ、私生活も大きく変わった

第8章 アフリカ発祥か、多地域進化か
1997年の論文で現生人類の出アフリカ説を採用したわたしは多地域進化論者の批判を受ける。それには答えたが、真の結論には「核DNA」調査が必要だ

第9章 立ちはだかる困難「核DNA」
1999年、1万4000年前の永久凍土のマンモスから核DNAの抽出に成功する。だが冷凍保存でないネアンデルタール核DNA復元は不可能に思えた

第10章 救世主、現れる
2000年にわたしが顧問となったDNA増幅の新技術「次世代シーケンサー」は生物学全体を変えるほど強力だ。ネアンデルタール人復元も現実味を帯びる

第11章 500万ドルを手に入れろ
2006年、わたしは2年以内のネアンデルタール・ゲノム解読を宣言した。しかし次世代シーケンサーの500万ドルもの費用を始め、次々と難題が襲う

第12章 骨が足りない!
ゲノム解読にはとにかく骨が必要だ。2006年、新たなネアンデルタール人の骨試料をもらいにザグレブに向かった。だが、不可解な力が骨の入手を阻む

第13章 忍び込んでくる「現代」との戦い
シーケンスの進歩を待つだけではダメだ。2007年はDNA精製の効率化の徹底を図った。だが必ず混入する現代のDNAを検査する方法が見つからない

第14章 ゲノムの姿を組み立てなおす
増幅したバラバラのDNAの全容を知るには、それを組み立てなおさなくてはならない。新しい方法を試すたびに難題が起こったが、少しずつ前進していく

ほか

【著者紹介】
スヴァンテ・ペーボ : 生物学者。ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の進化遺伝学部門ディレクター

野中香方子 : 翻訳家。お茶の水女子大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 修一朗

    この本を読むまで,琥珀に閉じ込められた蚊の血から恐竜のDNAを取り出したという話はそれなりの真実と思っていた。全編ほぼ古代人からDNAを抽出することがいかに大変だったかを語る男の一代記,古代DNA研究の発展がまんま本人の半生に重なる幸せな研究者の物語だ。顧みると1984年PCR法が開発された頃は自分は分子生物学に憧れたりもする一学生だった。筆者とは一回り年代が違うが,ミイラのDNA抽出から始まり,ネアンデルタール人のゲノム解析を成し遂げた筆者を見て自分がこんな人生を選択していたら…,なんてことを思う。。。

  • やいっち

    著者がノーベル賞受賞! ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とは、性的交流があった。滅んだネアンデルタール人の遺伝子が現生人類に数パーセント、遺っている。遺伝子だけじゃなく、人類が生き延びる技術や文化の何がしかも遺っているのだろう。そうした研究の最前線にあったペーボらの労苦を自伝で辿ることができる。贅沢な本である。

  • Miyoshi Hirotaka

    イデオロギーで汚染されると科学は大きく後退する。ナチス時代に起きたことの結果としてドイツでは人類学が地位を失った。一方、若いスウェーデン人研究者には機会となった。古代の標本からDNAを分離する未知への挑戦は、牛のレバーで作ったミイラからDNAを抽出する小さな実験から始まり、ネアンデルタール人のゲノム解読に至った。この間、「ジュラシック・パーク」研究が流行。必要な手続きを踏まず、間違った結果で世間の称賛を浴びた研究者もいた。自分の研究を地道にきちんとして正しい結果として発表しようという真摯さが素晴らしい。

  • Isamash

    スヴァンテ・ベーボ(ドイツのマックス・プランツ研究所)ディレクター2014年著作訳本。研究成果もさることながら研究テーマをどう選び、どういう考えでどう進めたかが素直に書かれており大変に面白かった。世界の研究者との継続的コンタクトで常に刺激を受けていくことやトップレベルの他国研究者の知恵を借りて初めて大きな成果を挙げられたことを知った。天才達を擁する国際的プロジェクトのリーダーという風で学者のイメージが一新された気がした。本人はずっと同性愛者であったが、米国女性と結婚し子供も作ったことも率直に語られている。

  • 007 kazu

    ネアンデルタール人のDNA解析に挑み、現生人類との関係を明かした研究者の半生。専門記述は難儀したが、「バッタを倒しに」に通じるヒューマンドラマとして楽しく読んだ。粘り強さ、センス等の資質に加え、予算をとるための政治力や仲間を集いまとめるプロマネ力を駆使することでたどり着く境地。DNA抽出の技術の壁を超える発想力を持ち合わせ、一流のイノベーターといえるかも。本書を読むと恐竜DNAの抽出、分析がいかにファンタジーかを知らされる。時と共に他のDNAで汚染され、ありのままのDNAなど残っているはずがないのだ。

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