アルノルト・レズレル指揮、ポーランド人民軍陸軍軍楽隊の演奏で収録された旧社会主義国の国歌ばかりを集めた珍盤である。
社会主義国の軍楽隊による国歌集自体珍しいが、社会主義国の国歌ばかりを集めたアルバムというのは他にメロディアに1960年代に録音されたニコライ・ナザロフ指揮、ソヴィエト国防省軍楽隊によるソヴィエト15カ国の国歌集(未CD化)位であると思われます。
本CDはドイツのカッセルに本社を置く、ムジカフォンというレーベルが発売した物ですが元はポーランド国営レーベル、通称ムザで知られたポルスキ・ナグラニアに録音されたものです。
LPでも同内容で発売された事がある様です。
日本では今年発売されていますが、本国では2002年に発売されており、流通在庫が入ったのか、再プレスされたのが入ってきたのかは不明です。
指揮者のレズレルは上記ムザに幾つか録音を残し、CD化されているのは伴奏物が大半で、単独のリリースは珍しい。
録音年は不明となっていますが、ポーランド人民軍陸軍軍楽隊の芸術監督を、1964年から1978年まで務め、その間にLPを幾つか制作しておりこれもその頃に録音された物と思われます。
輸入元の情報はかなりいい加減であり、まずオーケストラ版と書いてあるものの、全曲が吹奏楽編成です。
確かに吹奏楽団の事をオケと呼んだりウィンド・オーケストラと言ったりしますが、この書き方だと管弦楽と勘違いさせる書き方です。
また行進曲風アレンジとありますが、これも各国の公式な譜面に基づいた演奏であり、キューバや中国の様にオリジナルから行進曲風の曲以外は賛歌風の壮大な曲がほとんど。
恐らく輸入元はCDを聴かずに文字だけを見て書いたのではないでしょうか。
旧共産圏の軍楽隊は英訳された時にMilitary Bandのような訳を当てられる他、Orchestraと書かれる事が幾つかあります(実際CDにはOrchester der Polnischen Volksarmeeと書いてあります)
知らなければオケ編成だと思われるのも無理はなく、またややこしい事に持ち替えで管弦楽演奏する事もあり聴いてみないとよく分からないのが現状です。
とは言え演奏自体は大変素晴らしく共産圏の軍楽隊らしい大編成のサウンドと、荘厳な響きや熱い芸術的な演奏は聴いていてなかなか面白いもの。
特にサクソルン系の充実したサウンドは日本では聴けない独自な物となっています。
その上、ドイツ民主共和国やルーマニア、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィアはこんにちでは使われなくなった曲であり、そういう面でも貴重です。
意外と音質はそこまで悪くなく、東側の古い音源という事を考えればまずまずです。
CDのライナーは紙一枚で、収録曲、演奏家の名前が書いてある簡易な物です。
強いて難点を挙げるなら収録時間でしょうか?
僅か20分程でそこそこの値段というのは高いと言えるかも知れません。
尚、本文から分かると思いますが、このCDは吹奏楽演奏のみで歌唱はありません。