サー・コリン・デイヴィスの芸術。LSO至高のエルガーがセットで登場!
パッパーノの初CD化音源も収録!
ロンドン交響楽団によるエルガー作品がボックスで登場。サー・コリン・デイヴィス指揮の交響曲ほか、パッパーノ指揮によるエルガーと同時代の作曲家ヴォーン=ウィリアムズの『タリス幻想曲』、さらにバリー・タックウェルとの名演『威風堂々』も盛り込まれた注目リリースです!
ロンドン交響楽団(LSO)が設立されたのは1904年、その最初期、エルガーもオーケストラを指揮していました。また1926〜32年、エルガーは自作自演の形でLSOと作品を録音、この録音は多くの指揮者たちの大きな指標ともなりました。その録音に大きな影響を受けたサー・コリン・デイヴィス[1927-2013]もエルガーにも並々ならぬ思い入れがありました。エルガーのことを「大きくて丸々としていて、犬を連れて川岸を散歩するのが好きだったりと、まるでファルスタッフのようだった。陽気な茶目っ気があるかと思えばメランコリックな面もあり、そうした二面性は作品にもあらわれているが、大きな魅力だ」とデイヴィスは語りました。さらに「楽譜を見ると、エルガーは自分が何をどうしてほしいか、というのが明確にある作曲家であり、『poco accelerando(少しずつ速くする)』 、そしてその後に『subito tempo primo(直ちにもとのテンポにもどす)』、と書いてあるが、これを指示通りにすると聴き手は突然落馬したような印象になる。エルガーの細かな楽譜への指示はいつも注意深く読み解かなければならない。」と、その綿密に書きこまれた楽譜の読み込みを、行間までを読むように研究していました。そうしたデイヴィスが残したライヴはエルガー作品の新たな決定版として長く語り継がれるものとなっています。
『威風堂々』は、1955年から68年までLSOの首席ホルン奏者を務めたバリー・タックウェル指揮。LSOレーベルからはCD初登場(配信ではリリース済)。こちらも管楽器が豪快に鳴っており、管楽器セクションでも世界に名を轟かせる礎をつくったともいえるタックウェルとLSOとの引き締まった演奏となっています。
パッパーノ指揮によるヴォーン=ウィリアムズは初CD化音源(配信ではリリース済)。この作品は1910年に作曲者自身の指揮、LSOの弦楽メンバーによって初演されました。弦楽のみによる演奏はオルガンの響きのようでもあり、きわめて美しいSF映画の世界に迷い込んだような、静謐で厳かな神秘的な雰囲気。パッパーノが導く美しい歌と音色を堪能できます。
チェロ協奏曲も『威風堂々』と同じくLSOレーベルからはCD初登場です(配信ではリリース済)。ロンドン交響楽団に定期的に客演していたラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス[1933-2014]指揮。チェロの独奏は、ロンドンの王立音楽院で名誉アソシエイトとなり、音楽院で忙しく教鞭をとっている英国の名手フェリックス・シュミット。冒頭の激しい慟哭から、イギリスの巨匠の風格たっぷりに聴かせます。フリューベック・デ・ブルゴスも暗くうねる旋律をこれでもかと怒涛のように展開しております。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1(71:17)
1. エルガー:交響曲第1番変イ長調 Op.55
ロンドン交響楽団
サー・コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2001年9月30日、10月1日
録音場所:ロンドン、バービカン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
2. エルガー:行進曲『威風堂々』 Op.39より第3番ハ短調、第2番イ短調、第5番ハ長調
ロンドン交響楽団
バリー・タックウェル(指揮)
録音時期:1988年4月26,27日
録音場所:ロンドン、ウォルサムストゥ・タウン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作レーベル:英IMP
Disc2(77:51)
1. エルガー:交響曲第2番変ホ長調 Op.63
ロンドン交響楽団
サー・コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2001年10月4,5日
録音場所:ロンドン、バービカン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
2. エルガー:戴冠式行進曲 Op.65
3. エルガー:帝国行進曲 Op.32
4. エルガー:行進曲『威風堂々』 Op.39より第1番ニ長調
ロンドン交響楽団
バリー・タックウェル(指揮)
録音時期:1988年4月27日(2,3)、26,27日(4)
録音場所:ロンドン、ウォルサムストゥ・タウン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作レーベル:英IMP
Disc3(77:56)
1. エルガー:交響曲第3番ハ短調 Op.88(A.ペイン[1936-2021]補筆)
ロンドン交響楽団
サー・コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2001年12月13,14日
録音場所:ロンドン、バービカン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
2. ヴォーン・ウィリアムズ:トマス・タリスの主題による幻想曲
ロンドン交響楽団
サー・アントニオ・パッパーノ(指揮)
録音時期:2020年3月15日
録音場所:ロンドン、バービカン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
3. エルガー:行進曲『威風堂々』 Op.39より第4番ト長調
ロンドン交響楽団
バリー・タックウェル(指揮)
録音時期:1988年4月26,27日
録音場所:ロンドン、ウォルサムストゥ・タウン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作レーベル:英IMP
Disc4(77:57)
1. エルガー:弦楽のための序奏とアレグロ Op.47
2. エルガー:エニグマ変奏曲 Op.36
ロンドン交響楽団
サー・コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2005年9月2,3日&12月9日(1)、2007年1月6,7日(2)
録音場所:ロンドン、バービカン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
3. エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 Op.85
フェリックス・シュミット(チェロ)
ロンドン交響楽団
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(指揮)
録音時期:1988年9月28,29日
録音場所:ロンドン、ウォルサムストゥ・タウン・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作レーベル:英IMP
【エルガー・プロフィール】
近代イギリスを代表する作曲家、サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(Sir Edward William Elgar)は、1857年6月2日、イギリス中西部ウスター近郊のブロードヒースで生まれました。経済的に恵まれなかったため正規の音楽教育を受けることができず、ほとんど独学で勉強したそうですが、ピアノ調律師で楽器商を営んでいた父親のウィリアムは、生業のかたわら聖ジョージ・ローマ・カトリック教会のオルガニストを務めていたそうですから、やはりその血の中には音楽家の資質が備わっていたということなのでしょう。
ヴァイオリン教師、ピアノ教師として収入を得るようになると、若きエルガーはロンドンへ足しげく通ってはさまざまな音楽に接し、シューマン、ワーグナーの作品にはとりわけ強く影響を受けたとされています。1889年にピアノを教えていたキャロライン・アリス・ロバーツと結婚しますが、作曲家としてはまだ地元の合唱音楽祭から作品を委嘱される程度にとどまっていました。
1899年、そんなエルガーに大きな転機が訪れます。代表作のひとつである『エニグマ(謎)』変奏曲(1898年)が7月19日にロンドンのセント・ジェームズ・ホールでハンス・リヒターの指揮によって初演され、当時既に42歳だったエルガーは一躍世の注目を集めます。翌1900年にはオラトリオ『ゲロンティアスの夢』が完成、リヒャルト・シュトラウスがこの作品を絶賛したことで、その名声はヨーロッパ中に広まります。
エルガーのもっともポピュラーな作品である行進曲『威風堂々』第1番は、1901年に作曲されました。中間部の有名な旋律は、時のイギリス国王エドワード7世のために書かれた『戴冠式頌歌』(1901年)でも再び用いられ、今日『希望と栄光の国』として愛唱され、イギリス第2の国歌とまで称されています。
これ以降、オラトリオ『使徒たち』(1903年)、オラトリオ『神の国』(1906年)、交響曲第1番(1908年)、ヴァイオリン協奏曲(1910年)、交響曲第2番(1911年)、交響的習作『フォールスタッフ』(1913年)、チェロ協奏曲(1919年)等々、近代音楽史上の傑作を矢継ぎ早に発表、1904年(47歳)にはナイトに叙されるなど、エルガーはイギリスを代表する作曲家として自他共に認める存在となります。
しかし1920年に夫人と死別してからは創作意欲を失い、指揮者、演奏家としての活躍に重心を移します。この当時マイクロフォンによる電気吹き込みの技術が新しく開発され、エルガーは自身の代表作を次々とレコーディング、有名なEMIのアビー・ロード・スタジオで初録音をおこなったのはエルガーでした。1924年(67歳)に「国王の音楽師範」(Master of the King's Musick)の称号を受け、1931年(74歳)には准男爵にも叙されるなど、その声望が衰えることはなかったようです。
晩年には再び作曲活動に挑み、交響曲第3番、歌劇『スペインの貴婦人』、ピアノ協奏曲などの大作を手掛けますが、いずれも完成させることなく、1934年2月23日に世を去りました。(HMV)