昨日 ハヤカワepi文庫

アゴタ クリストフ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784151200359
ISBN 10 : 4151200355
フォーマット
出版社
発行年月
2006年05月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
16cm,165p

内容詳細

村の娼婦だった母の子として生まれたトビアス。ある事件を契機に名前を変え、戦争孤児を装って国境を越えた彼は、異邦にて工場労働者となる。灰色の作業着を身につけ、来る日も来る日も単調な作業に明け暮れるトビアスのみじめな人生に残された最後の希望は、彼の夢想のなかにだけ存在する女リーヌと出会うこと…。傑作『悪童日記』三部作の著者が、みずからの亡命体験をもとに幻想と不条理を交えて綴る不可能な愛の物語。

【著者紹介】
アゴタ クリストフ : 1935年ハンガリー生まれ。1956年のハンガリー動乱の折りに西側に亡命して以来、スイスのヌーシャテル市在住。1986年にパリのスイユ社から世に送り出したフランス語の処女小説『悪童日記』によって一躍脚光を浴び、その後、続篇の『ふたりの証拠』(88)、『第三の嘘』(91)を発表して三部作を完成させ、力量ある第一級の作家としての地位を確立した

堀茂樹 : 1952年生、フランス文学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • だんぼ さん

    小さな袋に入った白い粉末 私はそれが何であるのか知らない その粉末を飲んでおくと 一日が早く過ぎる 自分をみじめに感じる度合いが小さくなる

  • ヴェネツィア さん

    『悪童日記』以下の3部作の後に書かれた小説。物語には特定の地名は出てこないが、前半と後半は、それぞれ東欧にある別の国のどこかだろうと思われる。主人公であり、物語の語り手でもあるトビアスは故国に居てさえ、その出生と、置かれた環境からロマのような存在であった。すなわち、デラシネであることを人生の最初から強いられていたのだ。リーヌこそが、彼を繋ぎとめる(何処に?)唯一の存在なのだろうが、彼女の全的な愛を得る可能性は閉ざされていた。そもそも、本当にそれを欲していたのかもわからない。おそらくはトビアス自身にも。

  • Y2K☮ さん

    リアルと妄想が輪郭を失って混ざり合う感じと乾いた文体が一時期の中村文則に重なった。主人公とリーヌは共にアゴタ・クリストフの投影。リーヌの優しさの裏に潜む鼻持ちならないプライドは「私の人生は本来こんなはずじゃなかったのに!」という著者の悲痛な叫びだろうか。亡命によるアイデンティティの分裂とそれに伴う母国語との別れが、結果的に彼女の文学に得難い個性をもたらした。「悪童日記」三部作のインパクトには及ばないが、希望とも絶望とも縁遠い中途半端に生き延びる日々の虚しさが身に沁みる。結末の捉え方も読む度に変わりそうだ。

  • 優希 さん

    どこまでも惨めな表情で埋め尽くされていました。ただ1つの希望があるのが救いと言えるでしょう。幻想と不条理の世界の物語だと思いました。

  • zirou1984 さん

    アゴタ・クリストフにとって読むこと、そして書くことというのは救いそのものであったのだろう。故郷から、母国語から、愛する人から切り離されながらも、それでも身を切るように言葉を紡ぐこと。その両手を祈るためではなく文字を連ねるために用いること。三部作の後に書かれた本作は今まで以上に自伝めいており、もはや弱さも嘘で隠そうとすることなく剥き出しに描かれている。最後の一文は図らずも著者のその後の人生と対応してしまった。それは救いだったのだろうか?自分は今も、こうやって嘘のような言葉を並べながら、ただ駄文を連ねてる。

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アゴタ クリストフ

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎

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