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2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2010/03/02
1951年盤や1962年盤だけを聞いていては分からない、クナッパーツブッシュのすごい「パルジファル」が聞ける。歌手陣も素晴らしいが、クナッパーツブッシュの管弦楽はリアリティがあり、凄まじい力で「パルジファル」を表現してしまう。クナッパーツブッシュは1953年、ヴィーラント・ワーグナーの演出を嫌ってバイロイトに出演しなかったが、1954年に復活したときには、かなりの気迫がこもっていたのだろう。第1幕から、「パルジファル」の表現は素晴らしいとしか云いようがない。 そしてクナッパーツブッシュは、ヴィントガッセンとメードルというふたりのワーグナー歌手の力を借りて、第2幕で「パルジファル」というオペラの本質を明らかにしてゆく。「パルジファル」で描かれているのは、ニーチェが云うような単なる通俗な聖人伝説ではないのだ。人間の根元的な欲望である性欲が呪われた物になる深刻さがこれほど真に迫った演奏録音は他にはない。「パルジファル」の本質、それはクンドリーの悲劇だということをクナッパーツブッシュのこの1954年盤は知らしめてくれる。 sの悲劇が第3幕の「聖金曜日の音楽」で浄化されてゆくさまは見事だ。管弦楽もじっくりと、しかも自然に内から湧き起こる感動的な音楽を聞かせてくれる。希有な感動的な体験を、この1954年盤第3幕はもたらしてくれる。グルネマンツにしては、当時まだ若々しかったヨーゼフ・グラインドルの名唱も光る。 第1幕と第3幕、ハンス・ホッターのアンフォルタスは少し違和感があるものの、その嘆きの深さと苦悶の表情は鬼気迫るような迫力がある。 クナッパーツブッシュの「パルジファル」は、13種類の録音全てに聞く価値があるが、その中でも1954年盤は歌手の見事さ、クナッパーツブッシュの気合いの入った指揮では群を抜いている。
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