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Old_Movado さんのレビュー一覧 

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     2015/05/28

    このCDは、私にとって忘れ得ない時間の記録である。というのも、20代の私はこのコンサートの現場にいたからである。
    当時、テンシュテットは特にマーラーを得意とする指揮者として日本でも知られてはいたものの、ボリュームを相当に上げないとその真価が聴きとれない当時のEMIの録音の問題と、◯コ芸の交響曲担当者(の片方)が毎度ボロクソの評を書くために特選が貰えない、などが原因で、既にイギリス、アメリカでは尊敬を集めていたにも関わらず、日本では評価が高いとは決して言えなかった。私はこのコンビのマーラーのスタジオ録音盤(特に3番)を当時愛聴したので、大いに期待を持ってこのコンサートに臨んだが、私のいた2階席にはかなり空席が目立っていた。
    私はモーツァルトに興味がなかったので、ハフナーは特に印象に残らず、早くマーラーが始まらないかと思っていた。しかし、その肝心のマーラーも第1楽章ではオーケストラがイマイチ揃わず、なんだか雑然とした印象で始まった。ところが、第2楽章の1/3ぐらいまで進んだころから俄然オーケストラがのってきて、尻上がりに素晴らしい演奏となっていった。最終章では波が寄せたり引いたりするようにクライマックス向けて次第に盛り上がっていき、最後のコーダの輝かしさといったら、これまで体験したこともない体が震えるような感覚であった。演奏が終わったあとの(私を含めた)聴衆の反応も凄かった。私が帰ろうとしてロビーに出た時には、当夜コンサートに来ていた評論家たちがひとところに集まっていて「素晴らしかったな」とか興奮して言い合っていた(その割に、その後もCD/コンサート評論界ではほんの一部の方を除き、テンシュテットの評価は大して上がった様子がなかったが 苦笑)。
    同じ頃に、私はバーンスタイン・イスラエルフィルの9番、ショルティ・シカゴ響の5番、メータ・イスラエル・フィルの5番、ムーティ・フィラデルフィア管の1番などを大阪でのコンサートで聴いたが、この夜ほどの素晴らしい体験は他では得られなかった。
    その当時には、この夜の模様がFM大阪でオンエアーされたことを私は知らなかったのだが、その放送録音をもとに貴重な記録としてCD(とSACD)が世に残されたことは嬉しい限りだし、私自身がこのCDを聞くたびに当夜に受けた感動を思い起こすことができることは、この上ない幸せである。

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