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CD 『世界の蒸気機関車〜録音:石田善之』(XRCD24)

『世界の蒸気機関車〜録音:石田善之』(XRCD24)

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    遊悠音詩人  |  埼玉県  |  不明  |  2013年10月02日

    自他共に認めるクラシック音楽マニアにして、大のSL好きの僕には堪らない一枚!何しろ、今やESOTERICで過去の名盤の音質を一新させ、聞き手を驚嘆させている杉本一家氏その人が、リマスタリングを担当しているのだから。大井川鐵道に所属のC56形44号機の写真をあしらった豪華な装丁は、部屋に飾るだけでも実に絵になる。何より、石田善之氏本人の手による詳細な解説が嬉しい。録音場所や機材、形式などの情報が盛り沢山である。録音された形式に関して少々蘊蓄を言うと、C56は国鉄最小のテンダー形(本体と炭水車によって構成されている形式。大井川鐵道にはジャケットにもある44号機が在籍)だし、C57は“貴婦人”の異名を持つスマートなボイラーが魅力の中型機だ(山口線に所属のC57はトップナンバーの1号機。客車は恐らく12系。最後の車両に発電機が搭載されているのでその音も入っている)。C11はもともと操車場か何かで貨車の入れ換えをするのに使われた小型のタンク形である(収録は大井川鐵道なので、恐らく227号機)。9600はキューロク、あるいはクンロクと呼ばれた機関車だ。これだけバラエティーに富むと、当然、汽笛やドラフト音も違うのである(一例を挙げればC11とC56。C56の方が汽笛の音が高い)。更に、平坦な路線を快速で走っているときと、急勾配に喘いでいるとき、更に、重い貨車を引き出す際に空転を起こしたときなど、SLは全く異なる表情を見せる。今日ではVVVFインバータ制御による静かな走行音の電車が主流だが、SLは現代の電車にはない、まるで生き物のような多彩な顔を見せるのだ。そんな魅力溢れる姿を、精緻なコメントと迫力極まる音質で味わえるのだから嬉しい。今やSLに限らず、列車の走行音を収めたものは映像も含め多数ある。しかし、それらが鉄道マニアの心理をくすぐることはあっても、オーディオ的にも興奮させられることは少ないのではないか。巷に跋扈する列車走行音CDの多くは、顧客ターゲットを鉄道マニアに限定しているはずであり、オーディオマニアまでには射程が届いていないのだ。その点、石田善之氏のこだわりと、杉本一家氏の渾身の復刻技術が融合したこのXRCDは、オーディオマニアをも唸らせる一枚になっている。単に音が鳴るに留まらず、吐き出される煤の匂いや、夏の鮮やかな緑の色や、鉄の塊の擦れるさまや、客車の重みまでもが伝わってくる。蝉時雨や、鳥の囀りや、微かな葉音、人々の喧騒に至るまで克明に収録されている。汽笛一声、山々にこだまするさまは、涙が出るほど嬉しい。これを、名作曲家にして大の鉄道マニアであったドヴォルザークに聴かせたら何と言うだろうか、などと、余計な妄想を膨らませて楽しんでいる。これぞ、SLの醍醐味、生録音の醍醐味と言えよう。

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