つよしくん  |  東京都  |  不明  |  2011年10月15日

ムラヴィンスキーは、カラヤンとほぼ同時代に活躍していた大指揮者であったが、旧ソヴィエト連邦下で活動していたことやムラヴィンスキーが録音に慎重に臨んだこともあって、その実力の割には遺された録音の点数があまりにも少ないと言える。そして、その音質についても、ＤＧにスタジオ録音を行ったチャイコフスキーの後期三大交響曲集（１９６０年）やアルトゥスレーベルから発売された１９７３年の初来日時のベートーヴェンの交響曲第４番及びショスタコーヴィチの交響曲第５番等の一部のライヴ録音（既にいずれもＳＡＣＤ化）などを除いては、極めて劣悪な音質でこの大指揮者の実力を知る上ではあまりにも心もとない状況にあると言える。そのような中で、スクリベンダム・レーベルから１９６５年及び１９７２年のムラヴィンスキーによるモスクワでのライヴ録音がリマスタリングの上発売されているが、音質も既発ＣＤと比較すると格段に向上しており、この大指揮者の指揮芸術の真価をさらに深く味わうことが可能になった意義は極めて大きいと言わざるを得ない。何よりも、１９６０年代から１９７０年代にかけては、ムラヴィンスキー＆レニングラード・フィルの全盛時代であり、この黄金コンビのベストフォームの演奏を良好な音質で味わうことができるのが素晴らしいと言える。本盤には、１９７２年のライヴ録音がおさめられているが、いずれも凄い演奏だ。ムラヴィンスキーは、手兵レニングラード・フィルを徹底して厳しく鍛え抜いており、その演奏は正に旧ソヴィエト連邦軍による示威進軍を思わせるような鉄の規律を思わせるようなものであった。そのアンサンブルは完全無欠の鉄壁なものであり、前述の１９６０年のチャイコフスキーの交響曲第４番の終楽章の弦楽合奏の揃い方なども驚異的であったが、本盤におさめられた演奏でも随所においてそれを味わうことが可能だ。冒頭のチャイコフスキーの交響的幻想曲「フランチェスカ・デ・ラミニ」からして、この指揮者ならではの深遠な内容と凄まじいまでの迫力を兼ね備えた凄みのある名演だ。続くチャイコフスキーの交響曲第５番はこの指揮者の十八番と言える楽曲であり、遺された演奏・録音も数多く存在しているが、私としては、前述の１９６０年のＤＧへのスタジオ録音や、１９７７年の来日時のライヴ録音（アルトゥス）、１９８２年のライヴ録音（ロシアンディスク）がムラヴィンスキーによる同曲の名演の３強と考えているところだ。もっとも、本演奏も終楽章の終結部に向けて畳み掛けていくような気迫や力感など、３強にも比肩し得るだけの内容を有しているところであり、本演奏をムラヴィンスキーならではの超名演との評価をするのにいささかも躊躇をするものではない。ワーグナーの管弦楽曲については複数のＣＤにまたがっておさめられているが、いずれもこの指揮者ならではの彫の深い素晴らしい名演に仕上がっていると言える。ブラームスの交響曲第３番は、後述のベートーヴェンの交響曲第５番と同様のスタイルによる引き締まった名演と言えるが、第２楽章や第３楽章のやや早めのテンポによる各旋律の端々から滲み出してくる枯淡の境地さえ感じさせるような渋味のある情感は抗し難い魅力に満ち溢れており、人生の諦観さえ感じさせるほどの高みに達していると言えるところだ。ショスタコーヴィチの交響曲第６番は、１９６５年盤もありそれも名演であったが、本演奏の方がより円熟味が増した印象を受けるところであり、私としては本演奏の方をより上位に置きたい。いずれにしても、厳格なスコアリーディングに基づき、同曲に込められた深遠な内容の核心に鋭く切り込んでいくが、それでいて豊かな情感と格調の高さを失わないのがムラヴィンスキーによる演奏の凄みと言えるだろう。ベートーヴェンの交響曲第４番は、前述の来日時の名演の１年前のものであるが、本演奏も同格の名演と評価したい。早めのテンポで疾風のように駆け抜けていくような演奏で、一聴すると素っ気なささえ感じさせるが、各旋律に込められた独特の繊細なニュアンスや豊かな情感には抗し難い魅力があると言えるところであり、同曲演奏史上でもトップの座を争う至高の名演に仕上がっていると言える。ベートーヴェンの交響曲第５番も凄い演奏だ。やや早めのテンポによる徹底して凝縮化された演奏と言えるが、それでいて第２楽章などの緩徐箇所における各旋律を情感豊かに歌い上げており、いい意味での剛柔バランスのとれた至高の名演であると言えるだろう。いずれにしても、本盤は大指揮者ムラヴィンスキーの偉大な芸術を良好な音質で味わうことができるという意味においては、１９６５年盤と並んで安心してお薦めできる素晴らしい名盤であると高く評価したい。

 

伊豆の西風  |  静岡県  |  不明  |  2010年10月04日

ムラヴィンスキー の凄腕、再確認。　音質については問題有りとの意見があるようですが当時の東側の録音、致し方無いのではないでしょうか？　勿論、僕的には鑑賞に全くストレスは感じませんが、、、。あー、この指揮者の演奏を聴く度に一度でいいから、ムラヴィンスキー＆BPOの演奏を聴きたかった。きっと、国宝級の　”日本刀”　のような黒光りした、切れ味鋭い演奏を残したに違いない、、、と、思うのは僕だけだろうか、、、。

 

あるまじろ  |  神奈川県  |  不明  |  2010年08月04日

再発に際し、嘗ての本盤レビュー欄に於ける「ゲルマン魂」氏やその他の方々による口論の模様は削除されたのですね。当時私はこの盤を支持する立場でしたが、音質向上に異議を唱え頑なに当時の「だめ！」評価を主張していた方がいらしたことは、平等な一つの意見として再記憶しておきたいところです。

 

ito  |  横浜  |  不明  |  2008年09月22日

チャイ５が欲しくて購入しました。この７２年のチャイ５はムラヴィンスキーのチャイ５中でも最も凄絶な演奏で、 メロディア盤のＬＰで何度も聴いていました。まるで全盛期のフルトヴェングラーのような素晴らしさ。今はスクリベンダム盤でしか手に入らないので買ったのですが、某大手ショップのスタッフが言うには、メロディア盤より音が良いとのことでした。音質についてはレビューでも諸氏の意見が分かれているようですが、これから聴いてからまたコメントします。

 

イリュミナシオン  |  古都  |  不明  |  2007年02月14日

ﾑﾗｳﾞｨﾝｽｷｰの実演は録音の枠をはみでるとは、多くの人が知るところだ。そのうえで敢えて言えば、ｽｸﾘﾍﾞﾝﾀﾞﾑ盤は世界の構築性に対する見通しが豊かである点において、優秀なリマスタリングだ。一方ﾒﾛﾃﾞｨｱ盤の優れている点は音塊の迫力にあるが、遺憾なことに解像度が悪く、演奏世界の構築性への見通しが悪い。むろん後者の美質を否定するものではない。しかし、日本で実演に接した経験に照らして、ﾑﾗｳﾞｨﾝｽｷｰおける世界構築の天才性は、ｽｸﾘﾍﾞﾝﾀﾞﾑ盤において、よく感受できる。とりわけ独墺系音楽の見通しの良さは、強烈な感銘と感動を与えてくれるだろう

 

タコ８  |  金沢市  |  不明  |  2007年01月27日

このﾍﾞｰﾄｰｳﾞｪﾝの演奏以降他の指揮者が同曲演奏する資格と意義さえも疑わしく感じてしまう程の何人も超えることができない絶対的な解釈があります。ﾍﾞｰﾄｳﾞｪﾝ自身が振ったかの様。ﾀｺ６の鮮明さと凄絶さも秀逸。「葬送行進曲」ではｸﾅも白旗を挙げ、ﾌﾞﾗ３はﾍﾞﾄ５と勘違いしているのではないかの如きﾛｷｼｰﾐｭｰｼﾞｯｸ。曲目によりﾘﾏｽﾀﾘﾝｸﾞのﾚﾍﾞﾙにﾑﾗがあると感じてしまうのは私だけでしょうか？ﾁｬｲ５の演奏には文句はないのですが、音が一番変？。ﾀｺ６の音はＯＫ。同時期のﾗｲｳﾞなので音質位統一して欲しい。

 

ガリ  |  神奈川県  |  不明  |  2006年11月25日

「フランチェスカ〜」は８３年盤より最後の追い込みが恐ろしく手に汗握りました。特に衝撃的だったのがベートーヴェン第５でＢＢＣライブ並みに燃え滾るムラヴィンが聞けます。ところで本ＣＤ，開けてビックリ３枚ともＣＤ裏面に傷や霜のような跡がけっこうありました。面倒なので交換はしませんが、そもそも音質に傷はどれほど影響するのでしょうか。　

 

じゅん  |  ソウル  |  不明  |  2006年07月05日

わたしもベートーヴェンの第５番に感動しました。音の渦に巻き込まれ、異次元の世界に連れて行かれたよう。すべての楽器が躍動しています。それでいて、完璧にコントロールされていて、冷厳な世界でもあります。ショスタコーヴィチの６番ももちろん名演奏。ワーグナーも、どれも爆演。なんだか、ほめてばっかりですけど、ほんとにすごいんです。これを聴かないと、20世紀の演奏史について語れない、なんて思ってしまいます。

 

イリュミナシオン  |  京都  |  不明  |  2006年05月05日

ベートーヴェンの演奏には、びっくりしますね。絶賛に値します。ブラームスも立派。ドイツ的なものへのムラヴィンスキーのアプローチがいかに非凡であったか、耳と心で思い知りました。リマスタリングも成功しています。これは未来に手渡すべきすばらしいセットです。自分には良くなかったという人が、良かったと思った人に対して「あなた方は解っていない」と言わんばかりの傲慢な批評に惑わされないで。これは未来に受け継ぐべき演奏の記録です。

 

黒マント  |  大阪  |  不明  |  2006年04月22日

　音質は、理想的とは言えないけれども、以前のものよりもはるかに改善されています。私の聴くところでは決して「軟弱」な音ではない。ムラヴィンスキー特有の切れ味の鋭さは、いっそう凄みを増していると思います。特にベートーヴェンとワーグナーに対するムラヴィンスキーの見識の高さには、ただただ敬服します。「ジークフリートの葬送行進曲」の恐ろしいほどの音の深みにまいりました。

 

yamaneko_bucchi  |  壁の割れた産室  |  不明  |  2005年07月09日

チャイコフスキーよりも、ショスタコーヴィッチよりも、ワーグナーがいい、ベートーヴェンがいい。ロシア系とは親交があったというが、ドイツ系には憧憬があったかのようだ。ＨＭＶの内容紹介ではディスク１と３が逆になっているが、各盤に必ずワーグナーを取り込んでいるところにその心意気がうかがわれる。また、ディスク３のベートーヴェンはまるで固め打ちをしたかのよう。なかでも「運命」は最強のベートーヴェンだ。ディスク１から順番に聴いていくとセットとしてのストーリー性が浮かび上がってくるのも感動的だ。

 

安曇野のカラヤン  |  長野県穂高町  |  不明  |  2005年06月12日

チャイコフスキーだけではなくベートーヴェンも奇を狙ったところがなく非常にスタンダードの高い演奏だ。音質も良好。我が家のお宝が増えました。

 

あやピョン  |  東京都  |  不明  |  2005年05月21日

完璧な演奏にただただ感動してしまいました。いつも気軽に鑑賞するというよりも、感動をもとめて耳を傾けています。このCDを聞いていても何度もゾクゾクしました。

 

ぼん  |  神奈川  |  不明  |  2004年07月20日

演奏は素晴らしいが、チャイコフスキーの５番で多少音量レベルノ変動があるのが残念だけど、全体的にかつてのビクター盤は違った意味でとても音質は良好。演奏は見事。

 

風雷暴  |  横浜  |  不明  |  2004年07月18日

まだ本盤はﾉｰｺﾒﾝﾄでしたが、当然満点！ﾌﾞﾗ3､ﾀｺ6以外全て我家の王座(BVCXｼﾘｰｽﾞ所有)。音質は旧邦盤を総合的に凌駕する筈。ﾑﾗｳﾞｨﾝﾌｧﾝのみならず、未聴の方は勿論、買いそびれた方、絶対逃してはなりませぬぞ。