Until We Felt Red

驚異のタッピング・ギター・プレイで過去2作において、その名を知らしめた女性ギタリスト、カーキ・キングのサード・アルバム。本作では過去２作品のように、アコースティツク・ギター1本で表現したサウンドではなく、エレクトリック・ギターによるアルペジオ、コード・ストロークを中心に、場合によってはディストーションやエフェクト処理したギター、そしてバンド・スタイルで構成されている。つまり、これまでのようなパフォーマーとしての立ち位置から、更なる音楽性やアーチスト性を重視した「作品」としての仕上がりが成されている。

その音楽性はニュー・ウェイヴなロックを随所に感じ取ることができ、５曲においては彼女自身のヴォーカルをフィーチュアした歌ものが収録されている。そこにはネオ・アコーステイックやフォークなどの空気感が満ち溢れ、音楽的バックボーンの深さを充分に読み取ることができる。

彼女の新しい側面、潜在能力を引き出した、プロデューサーであるトータス/シー・アンド・ケイクのジョン・マッケンタイアの力も大きい。

彼女は「このアルバムではテクニックで誰かを感動させようとは思わなかった」と語る。超絶テクニックを持ちえる天才ギタリストが、劇的な変化のもと、表現者として作り上げた、新たなる世界観を見事に描いた意欲作。

ずっしりと、時には鋭く、そして時には優しく、心に響くギターはヤバイ。やはり彼女はタダ者ではない。