-それでは、中田さんは他にも様々なプロデュースをこなしていらっしゃいますが、このタイミングでcapsule名義のアルバムをリリースすることになったきっかけというのがあったら教えてもらえますか?
中田「だいたい8ヶ月ぐらいのタームでいつも出しているんですけど。周りの人みたいに1年半とか空けて、シングル3枚切って、14 曲入りのアルバムをリリースするとかでもいいんですけど、それやるともう俺は飽きていると思うんですよ。その間にやりたかったことが経過して、2個も3個も失ってしまいそうで。次出したときにはその経緯を作品に表現できずに、聴いた人にとって見ると、急激な変化を感じさせてしまうようなものになると思うんです。同じ人が作った作品に思えないだろうと。だから、ちゃんと、点と点を繋いでいく作業をやって行きたいというか。それが重要だと思っていて。だからこそ 8 ヶ月ぐらいのタイミングで、シングルではなく、アルバムという形でコンパクトに出して行きたいということなんですよね。
もっと言うと、作品以外で、僕が出ているイベントとかに来てもらって、僕のDJを聴いてもらえれば、その変化というものをもっと早く身近にわかってもらえるかなと思います。音楽に関わらず、いつも会っている友達よりも全然会っていない友達のほうが 変化の度合いが大きく感じたりするというのと一緒で。だから、capsuleの変化というのは、capsuleを音楽として見るか、capsuleとして見るかで全然違うと思うんです。音楽としてみると、色んな変化があって楽しめると思うし、capsuleを、遊びのところも含めて見ると、そんなに飛躍して変わっていないし、その変化の過程に気づいてもらえるかと思うんですけどね。」
-ということは、リアルタイムに日々創作を続けて行くことが、中田さんにとって必要な音楽活動の要素になっていると?
中田「そうですね。作品を作るタイミング次第で、コンセプトは同じでも実際にそれをどう表現するかっていう部分は違ってくると思うので。 やろうとしている大本のところは変わらないんですけど。その時やりたくて、みんなに受けるかというのじゃなくて、“もしこういうのが気に入ってくれる人が沢山いてくれたらいいよなぁ”っていう想像で作るというか。
だから、“次、どうして行こうか?”というのは、決めて作るものじゃなくて、その時に出てくるものが大事なんで。だって、あさっての昼ごはんを何食べるかなんてわからないじゃないですか?(笑)そういうことだと思うんですよね。」
-普通に日常の生活を過ごしている中で、何か良いフレーズが浮かんだりアイデアが浮かんだらメモして…のような感じなんですか?
中田「いや、そういうことはしないんですよね。 遊んだりしているときに、“なんかこの楽しい空気感おもしろいかも”って思った風景とか目に入ってきたものを後で思い出しながらとか、頭の中で色とか空気とか光とかそういうのを想像しながら作ったりはしますね。」
-先ほどアルバムを作る際楽曲のストックをしないとおっしゃっていましたが、capsule名義ではなくても他のプロデュース作品においてもそのようなスタンスなんでしょうか?
中田「そうですね。ほんと、基本的にストックを持たないんですよね。ていうか、歌を唄う側になって考えると“誰のために作ったかわからない曲を唄うのはつまらない”って思いますよきっと。普通は大体そうなのかもしれないけど。 だから、プロデュースするときも、その人用に楽曲を最初から作るという感じですね。プロデュースすることになったアーティストを見て、“今、このアーティストにとってどんな作品がいいかな?”というところから始めようと思うと、ストックからっていう風にはならないと思うし。ただ単にキャッチャーでポップ、そんで派手、みたいな曲を提供しようとするならそれで出来るのかもしれないけれど、やっぱり、聴く人にとって今面白いと思ってもらえることをやりたいから。」
-それでは、capsuleの作品と同じように、プロデュースするアーティストさんに合わせて、その都度に楽曲を制作するということなんですね。
中田「はい。“合わせて”というのと、“この人はこう見えたほうがもっといいんじゃないのかな?”っていう角度から入って行ってという…。そのアーティストにとって、みんなが思うイメージ、“この人はこうでいいだろう”っていうんじゃなくて、本当に良くなるようにいいものを作りたいという僕の気持ちですよね。だから、現状よりもより良いものになると思えるアーティストとやれることが一番ですよね。」
-その中で、アーティストさんのイメージを生かしつつ、中田さんの中での自己表現といいますか、“本当はこういうのをやりたい!”という欲求というものはどれだけ注入出来ているんですか?
中田「capsuleありきで来る依頼がほとんどなので。やりたくない音を要求されることってあんまりないですけど、まあ、今やりたいことという意味での“本当はこういうのをやりたい”というものはcapsuleを先頭にやっていくつもりですからね。あと僕の作品でも、それを表現するアーティストの出口によって全然違ってくるんですよ。 それで僕がプロデュースしたアーティストを切り口にして僕の音楽を好きになってくれる人もいるから。そこは面白いところですよね。そういうところも考えて、“ここで何をやったら面白いか?”っていうのも考えますし。
例えば、いわゆるメジャーアーティストの音を作る場合に「じゃあ、いつもよりメジャーな感じにしよう」だとぜんぜん面白くないと思うんですよ。せっかくやるなら、逆にそこで普通やらないような要素が入ってたほうが面白いし。 かといってマニアックになるのもいけないからって考えると面白いですね。アーティストをプロデュースしていく作業というのは。」
-そう考えると、capsuleというのは、ほんと、音楽的表現の自由度が高い場所なんですね。
中田「capsuleの音楽を作るにあたって、別に誰かと相談しなくてはならないことがないんで(笑)。フットワークの軽さは大きいですね。ただ自由な場合のほうが、実は作るのがある意味大変ではありますけど、自分自身が良いと思えないと成立しないし。」