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中田ヤスタカ(capsule) Interview part1

2007年12月5日 (水)

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  capsule、最新アップグレードver10.0アルバム『FLASH BACK』完成!
  中田ヤスタカ(capsule) Interview  1/2


今、最も忙しい男、中田ヤスタカ...。
capsuleをはじめ、自身のレーべルcontemodeを主宰。今年2007年は、話題のテクノポップユニットPerfumeや、Meg、鈴木亜美といった様々なアーティストをプロデュース、またフジテレビ系ドラマ「ライヤーゲーム」や映画のサウンドトラックなども手掛けるプロデューサー/リミキサー/DJ。そんな彼の多岐に渡る活動の全ての拠点となるのがヴォーカルこしじまとしことのユニット、capsule。12月5日にリリースされた通算10枚目のアルバム『Falsh Back』には、中田ヤスタカが"今"やりたいことをダイレクトに反映させることの出来る"場"である事を証明するように、攻撃的でアッパーなトラックから80'sニューウェイヴなど、最新型にUPDATEされたエレクトロサウンドが『FLASH BACK』のごとき目まぐるしく展開される!!
今回、HMVオンラインでは、capsuleのニューアルバム『Flas Back』発売に合わせ、中田ヤスタカ氏にインタビューを敢行!!!!最新作『Flash Back』の事はもちろん、capsule
プロデュース・ワーク、彼の考えるポップミュージックとは?さらに多忙を極める中田氏のオフの過ごし方まで...、今一番気になる中田ヤスタカに迫ります!!! (テキスト&インタビュー:negishi/hosaka)


capsulecapsule/FLASH BACK
TRACKS
01.construction 試聴02.FLASH BACK 03.Eternity 04.You are the reason 05.Love Me 06.I'm Feeling You 07.MUSiXXX 08.Get down 09.Electric light Moon light


  『試聴機とかで少しだけ聴いてすぐ良いと思ってもらえるよう感じにはなりにくいかもしれないです(笑)。』

-さっそくですが今回のアルバム、『Flash Back』についてお聞きします。前作の『Sugarless Girl』と比較すると、「FLASH BACK」とか「MUSiXXX」のような攻撃的でアッパーな曲がありつつ、「Eternity」のようなcapsuleの魅力満載のナンバーも収録されていて。さらに、「I'm Feeling You」とか「Get Down」とかは、 80's っぽいニューウェイヴな感じの曲に仕上がっていて。バラエティ豊かな作品に仕上がりましたね。

中田ヤスタカ(以下、中田)「 そうですね。とりあえず、僕の場合、基本的に曲のストックをしないんですね。今回のアルバムもそうなんですが、“アルバムを作ろう!”ってなってはじめて制作に取り掛かるんですよ。そういう感じで作っていくと、自然とこのような感じのアルバムになっていくんですよね。『MUSiXXX』みたいな曲が出来たら、次は同じような感じの楽曲は作らないという感じの流れですね。」

-では、今回のアルバム『Flash Back』も含めて、収録楽曲の曲順へのこだわりはあるほうですか?

中田「ありますね。やっぱり流れっていうのは大事ですからね。同じ曲が収録されていても、並び替えるだけで全然違ったものになりますからね。特にcapsuleに関しては、押し曲というものがないですから。シングルを切らないということも含めて。だからこそアルバムの流れってとても重要で。特に今回の作品は曲順に気を使いましたね。
今までの作品は、“ひとつの楽曲をどう良く聴かせるか?”というところに力を入れていたんですが、今回に限っては、アルバム全体っていうのを凄く考えて作ったんですよ。かといって、ひとつひとつの曲の価値は落とさないように。ひとつの為に何かがあるんじゃなくて、全部の為に全部があるというような感覚で、前後関係の繋がりを重視した感じですね。なので今回は、試聴機とかで少しだけ聴いてすぐ良いと思ってもらえるよう感じにはなりにくいかもしれないです(笑)。でも、アルバム通して聴いてみると、ほんと、深海の中に入っていくような、音の奥深い世界に入っていくような感じにもなれるような曲順を考えたので、アルバムとしては満足できる内容になっていると思います。」

-曲順を考えるという作業は、普段やられているパーティーでのDJのときと同じような感覚なんでしょうか?曲順に注力するということを考えると…。

中田「今回のアルバムは特にフロアを意識しているわけではないですけど、感覚としては似ていますね。“曲をどう良く聴かせたいか?”っていう感じですからね。DJで曲を繋いだ後、次の曲が始まった瞬間に、余韻として前の音が残っているじゃないですか。それって次の曲にもの凄く影響を与えていると思うんですよ。それもアルバムに当てはまると思います。だから、僕の場合、曲と曲の繋がりがアルバム全体を聴き通して違和感を感じると、曲のアウトロとかイントロを作り直す場合がありますからね。それは、やっぱ、一人でやっているという強みというか。ストックがあって、出来合いのものを収録していないっていうのもあるからなんですよね…。
あと、曲のキーもそうなんですよ。今回は曲の繋がり的にそこまで気を使いましたね。音階、キーの流れの気持ちよさも考えながら曲順を考えました。スムーズに流れて行くようにという感じです。」

-今回のアルバムでcapsuleとしては10作目ですよね。で、今までアルバムのパッケージに凄くこだわっていたと思うんですが、今回は、以外にもシンプルでびっくりしたんですけど。

中田「なんかcapsuleとして当たり前になってくる部分は変えたくなるんですよね(笑)。
それと、ちょっと話が変わるんですが、ここ最近の音楽業界って(ミュージシャンではなく)、無難なものばかり作り続けてきた感があるんですよね。“良いものを”って言うよりも、“悪くないね”ってもの。 安全な作品を作り続けているところがあるんですよね。でも、僕が思うにリスナーは、安全ではないものが現れても、“そういうのもあるよね”って全然拒否しないと思っていて。楽曲提供しているときも、制作スタッフの人とかには、“アイドルにこんなことやっちゃって凄いよね!”とか言われるんだけど、聴いているリスナーはそこまで凄いと思っていないんですよ。普通に聴いてしまうと思います(笑)。躊躇したり、心配したり、何か考えてしまうのは、作り手の周りのスタッフとかが心配するだけだと思うんです。」

実物はホログラム仕様でタイトル通りに輝くクールなジャケット!
  『必ず斜めの視点でいたいなっていうのがあるんです。』

-作り手が、“リスナーは安全パイを求めている”と思い込んでいるということ?

中田「そうですね。それと、“これ、かっこいいよねぇ”とか、“これ、おしゃれだよねぇ”とか言われるようになった時点で、それ自体がもう普通になっちゃって。すぐに“そういうのもあるよね”という当たり前のものになってしまうんですよ。だから、ある意味、変な要素が多くあるほうが面白いと。リスナーに、“これってどうなの?”と思われるようなものの方がいいんじゃないかと。そういう方向に僕はシフトしていっているところがあるんですよ。時代と共に、モノ自体は変わらないけれど、だんだん受け止められ方が変わってくるじゃないですか?何年か前、エレクトロとかが今ほど認知されていないときにイベントでかけてたら、みんな脚がぴたっと止まっちゃう時代がしばらく続いて(笑)。“これじゃ踊れねぇ!” みたいな(笑)。踊っている人にとっては、どう盛り上がればいいかわからない状態だったみたいで。でも今は普通になってきていて。そうなってくると、自分の見え方というか視点を変えたくなってくるというか、やはり必ず斜めの視点でいたいなっていうのがあるんです。」

-それでは、中田さんは他にも様々なプロデュースをこなしていらっしゃいますが、このタイミングでcapsule名義のアルバムをリリースすることになったきっかけというのがあったら教えてもらえますか?

中田「だいたい8ヶ月ぐらいのタームでいつも出しているんですけど。周りの人みたいに1年半とか空けて、シングル3枚切って、14 曲入りのアルバムをリリースするとかでもいいんですけど、それやるともう俺は飽きていると思うんですよ。その間にやりたかったことが経過して、2個も3個も失ってしまいそうで。次出したときにはその経緯を作品に表現できずに、聴いた人にとって見ると、急激な変化を感じさせてしまうようなものになると思うんです。同じ人が作った作品に思えないだろうと。だから、ちゃんと、点と点を繋いでいく作業をやって行きたいというか。それが重要だと思っていて。だからこそ 8 ヶ月ぐらいのタイミングで、シングルではなく、アルバムという形でコンパクトに出して行きたいということなんですよね。
もっと言うと、作品以外で、僕が出ているイベントとかに来てもらって、僕のDJを聴いてもらえれば、その変化というものをもっと早く身近にわかってもらえるかなと思います。音楽に関わらず、いつも会っている友達よりも全然会っていない友達のほうが 変化の度合いが大きく感じたりするというのと一緒で。だから、capsuleの変化というのは、capsuleを音楽として見るか、capsuleとして見るかで全然違うと思うんです。音楽としてみると、色んな変化があって楽しめると思うし、capsuleを、遊びのところも含めて見ると、そんなに飛躍して変わっていないし、その変化の過程に気づいてもらえるかと思うんですけどね。」

-ということは、リアルタイムに日々創作を続けて行くことが、中田さんにとって必要な音楽活動の要素になっていると?

中田「そうですね。作品を作るタイミング次第で、コンセプトは同じでも実際にそれをどう表現するかっていう部分は違ってくると思うので。 やろうとしている大本のところは変わらないんですけど。その時やりたくて、みんなに受けるかというのじゃなくて、“もしこういうのが気に入ってくれる人が沢山いてくれたらいいよなぁ”っていう想像で作るというか。
だから、“次、どうして行こうか?”というのは、決めて作るものじゃなくて、その時に出てくるものが大事なんで。だって、あさっての昼ごはんを何食べるかなんてわからないじゃないですか?(笑)そういうことだと思うんですよね。」

-普通に日常の生活を過ごしている中で、何か良いフレーズが浮かんだりアイデアが浮かんだらメモして…のような感じなんですか?

中田「いや、そういうことはしないんですよね。 遊んだりしているときに、なんかこの楽しい空気感おもしろいかもって思った風景とか目に入ってきたものを後で思い出しながらとか、頭の中で色とか空気とか光とかそういうのを想像しながら作ったりはしますね。」

-先ほどアルバムを作る際楽曲のストックをしないとおっしゃっていましたが、capsule名義ではなくても他のプロデュース作品においてもそのようなスタンスなんでしょうか?

中田「そうですね。ほんと、基本的にストックを持たないんですよね。ていうか、歌を唄う側になって考えると誰のために作ったかわからない曲を唄うのはつまらないって思いますよきっと。普通は大体そうなのかもしれないけど。 だから、プロデュースするときも、その人用に楽曲を最初から作るという感じですね。プロデュースすることになったアーティストを見て、今、このアーティストにとってどんな作品がいいかな?というところから始めようと思うと、ストックからっていう風にはならないと思うし。ただ単にキャッチャーでポップ、そんで派手、みたいな曲を提供しようとするならそれで出来るのかもしれないけれど、やっぱり、聴く人にとって今面白いと思ってもらえることをやりたいから。」

-それでは、capsuleの作品と同じように、プロデュースするアーティストさんに合わせて、その都度に楽曲を制作するということなんですね。

中田「はい。“合わせて”というのと、“この人はこう見えたほうがもっといいんじゃないのかな?”っていう角度から入って行ってという…。そのアーティストにとって、みんなが思うイメージ、“この人はこうでいいだろう”っていうんじゃなくて、本当に良くなるようにいいものを作りたいという僕の気持ちですよね。だから、現状よりもより良いものになると思えるアーティストとやれることが一番ですよね。」

-その中で、アーティストさんのイメージを生かしつつ、中田さんの中での自己表現といいますか、“本当はこういうのをやりたい!”という欲求というものはどれだけ注入出来ているんですか?

中田「capsuleありきで来る依頼がほとんどなので。やりたくない音を要求されることってあんまりないですけど、まあ、今やりたいことという意味での“本当はこういうのをやりたい”というものはcapsuleを先頭にやっていくつもりですからね。あと僕の作品でも、それを表現するアーティストの出口によって全然違ってくるんですよ。 それで僕がプロデュースしたアーティストを切り口にして僕の音楽を好きになってくれる人もいるから。そこは面白いところですよね。そういうところも考えて、“ここで何をやったら面白いか?”っていうのも考えますし。
例えば、いわゆるメジャーアーティストの音を作る場合に「じゃあ、いつもよりメジャーな感じにしよう」だとぜんぜん面白くないと思うんですよ。せっかくやるなら、逆にそこで普通やらないような要素が入ってたほうが面白いし。 かといってマニアックになるのもいけないからって考えると面白いですね。アーティストをプロデュースしていく作業というのは。」

-そう考えると、capsuleというのは、ほんと、音楽的表現の自由度が高い場所なんですね。

中田「capsuleの音楽を作るにあたって、別に誰かと相談しなくてはならないことがないんで(笑)。フットワークの軽さは大きいですね。ただ自由な場合のほうが、実は作るのがある意味大変ではありますけど、自分自身が良いと思えないと成立しないし。」



―続く―
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