Fat Jonインタビュー

2007年6月7日 (木)

  インタビュー
  Fat Jon
プログレッシヴ・ヒップホップ・グループFive Deezの頭脳、MC/プロデューサー/DJ/リミキサーのFat Jon。 Five Deez以外にもソロ、J Rawlsとの3582、StyrofoamとのコラボFat Jon & Styrofoam、Ameleset SolomonとのR&BグループRebel Cliqueなど様々なユニットでの活動や、アニメ「サムライチャンプルー」の音楽を担当するなど、不世出のクリエーターとしてここ日本でもよく知られた存在。 そんなFat Jonの土台を築き上げた初期の音源を中心に厳選して集めた裏ベスト盤とも言うべき作品集『Hundred Eight Stars』が発売。 今回、ミックスとエディットをやり直し、曲のタイトルも一新、新たにリマスターを施すなど、ただならぬこだわりはやはり彼ならでは。 作品に新たな息吹を吹きこんだ『Hundred Eight Stars』のリリースを記念し、Fat Jonに初のインタビューが実現。 音楽に対する真摯な態度と深い愛、そして考え方が、奇しくも先日インタビューを行ったAdriana Evansと似通った部分が見受けられ非常に興味深いインタビューとなりました。 最後までジックリお読みください!

言葉として響きがとてもクールだった
  言葉として響きがとてもクールだった
■インストミュージックは、時にヴォーカルソングよりも深いメッセージを紡ぎ出すことが出来ると思うんだ


――今回『Hundred Eight Stars』をリリースするにいたった経緯を教えてください。


日本でのある夜、僕とリバイアスの竹内さんで渋谷のスクランブル交差点を歩いていた時に、彼に「やりたい企画があるんだけど...」といった感じで今回の『Hundred Eight Stars』のアイデアを話したことがきっかけなんだ。それから色々話し合った後、僕等はすぐに意気投合して、リリースすることを決めたんだ。


―― 『Hundred Eight Stars』のコンセプトはいくつか意味がこめられているということですが、具体的に教え ていただけませんか?日本人にとっては「108」というと煩悩の数がぱっと思い浮かびますが。


『Hundred Eight Stars』という言葉は、英語以外に日本やインドなど異なる様々なカルチャーにおいて、深い意味を内包しているよね。特に108という数字は数学的にも重要な数であることは、よく知られているし。今回、このタイトルを付けたのは、自分にとっては何よりもその言葉として響きがとてもクールだったのが一番の理由なんだけど、その意味を色々な人に聞いてさらに勉強していくうちに、その言葉は僕が思ってた以上に多くの意味を含んでいるということを知ったんだ。それによって今回の作品はより深いものになったと思うよ。


――新しくつけた各曲のタイトルの意味は?


各トラックのネーミングは古代から現代に至るまでの星の名前をそれぞれのトラックにフィットする感じで考えて付けてみたんだ。


――全曲インストにした理由は?


僕はインストミュージックは、時にヴォーカルソングよりも深いメッセージを紡ぎ出すことが出来ると思うんだ。 ヴォーカルソングはそこに直接的なメッセージがある以上、それが全ての意味を決めてしまうけれど、インストミュージックは聴く人のシチュエーションや想いなどによって、様々な意味を成 すことが出来るよね?そういった意味において、今回のアルバムのコンセプトを表現するには、インストミュージックが最適だと思ったんだ。



『Hundred Eight Stars』
  『Hundred Eight Stars』
■突然、ビートマシンが壊れてしまって、このトラックのデータが全部消えちゃったんだよ!!


――『Hundred Eight Star』に収録されている曲の中で、最も印象深い曲があったら教えてください。オリジナルバージョン録音時のエピソードもあったら一緒に。


1. adhara -僕がこの曲を作った日は、とても晴れた日だった。僕はトラックが完成した時点で、そのトラックに ヴォーカルのような何かメッセージのようなものが存在している気がしてならなかった。そのヴォーカルの持ち主の女性は僕に何度も話しかけてきているようだったよ。僕はこのトラックのメイン・ループ部分を作った後にイントロを作ったよ。


2. tara - 僕はこのトラックをFive Deezの盟友であり、友達であるKyle Davidのために作った。この曲には最終的に僕とKyleの二人でラップを乗せたんだけど、その後のFive Deezのライブではいつもこの曲をやるぐらい、とても印象深い1曲。


3. chara - このトラックは古代のある特定の時期を想定し、ベースラインとふざけ合いながら(笑)、作ったんだ。


4. naos - ある夜、このトラックを一晩かけて作り続けた。それでようやく完成した朝方に、一息ついていたら、何故か突然、ビートマシンが壊れてしまって、このトラックのデータが全部消えちゃったんだよ!!その後、すぐに作り直したから問題なかったんだけど、そういった意味ではとても記憶に残っているトラックだね(笑)!


5. kuma - この曲は、いつも間違ったことをしている僕の大切な友人に捧げたトラック。僕はこのトラックを聴いた人が、とにかくポジティヴになって楽しめるような感じにしたかったから、 いつもとはちょっと違ったアプローチで、バウン シーでダンサブルなビートということに強く意識を おいて作ったんだ。


6. atria - このトラックのキーをアレンジしていた時、どうしてもリムショットが欲しくなったんだ。だから自分で持っていた10〜15種類ぐらいのリムショットの中から、このトラックにフィットするパターンを見つけ出し、微妙なEQをかけながら、長い時間をかけて試行錯誤したことをよく覚えているよ。


7. cursa - このトラックは、とにかくファンキーで首を振れるようなシンプルなHip Hopビートということだけに重点をおいて仕上げた。


8. altais - ある日、女の子の友達が僕のスタジオに遊びに来てくれたんだけど、その彼女が僕に何枚かのレコードを買って来てくれたんだ。それをみんなで聴いてたら、その中の一枚でかなり狂った感じの歌が入ってたから、それをサンプルしてチョップして、ドラムをアレンジして作り上げたトラックだ。


9. maia - このトラックは限りなく深い感じに仕上げたかったから上ネタとドラムのバランスを調整して、幻想の世界みたいな感覚を創り出せるようにひたすら機材に向かっていたことをよく覚えているよ。


10.diaddem -このトラックはラフで土臭い感じにしたかったんだ。だから、ドラムのアタックをかなり強くしてみた。ドラムこそがこの曲の一番のポイントだったから、 ドラム以外の全ての音をドラムの周りに浮かせるよ うな感じでミックスしたよ。


11. sirrah -このトラックは僕の中でもかなりクラシックなんだ!みんなの家や車のサウンドシステムをガンガン鳴ら して欲しい!


12. nashira - とある晴れた日。僕は音楽を通じて、リスナーのみんなへ話したいと思ったんだ。僕はリスナーのみんながこのトラックを通じて、僕の声=小宇宙を感じてもらえることを心から望みがら作った結果、完成したのがこの曲さ。


13. vela - このトラックには、いつも僕が作るような感じとは違う次元のファンク的要素=ダーティーサウスの要素が含まれている。僕個人的にこのトラックは、ムーディーなボムトラックといった感じで、良い感じに仕上がったと思っているよ。


14. mira -このトラックでは僕の考えを表現したかった。"音群"と"繰り返し"。これらは言語を創り出す。それはとてもシンプルなことなんだけど、僕に とっては多くの意味を成すんだ。なぜなら、僕はそ の二つだけでみんなに色々なヴァイブを伝えること が出来るからね。


15. turais - このトラックを作った時は、とにかくダークな曲を作りたかった。 ファンキーさを保ったダークトラック。その制作にチャレンジした結果がこの曲さ。


16. rana -このトラックにロウなヴァイブを込めたかっ た。すごくシンプルな作りだけど、とてもパワフル な感じに仕上がったね。


17. pleione - このトラックを作っている時、僕は頭を振るのを止 めることが出来なかったぐらい、ループにハマったことをよく覚えているよ! Hip Hopのエレメンツがたっぷりと詰まったこのトラックを聴いてくれたみんなが、僕みたいに体を動かしたくなることを願うよ。


18. sarin - この曲は、よくあるような話をラップしたトラック。ラッパーやDJ、ミュージシャンがこのトラックを聴いた途端、セッションしたくなるようなファンキーな感じに作ってみた。




―続く―
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